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さて、ようやく異世界での冒険がスタートします。
今回は短いです
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夢幻回路シンクロ率、100%を確認。初期ステータス、出現座標、異常なし。
《Fimbulvetr》、エヴォルヴァースにログインします。
フィンブルは目を開けた。まず最初にあたりがとても明るいことに気が付く。空を見上げると、真昼の太陽が燦々と輝き、フィンブルの両眼を射抜いた。眠気が一気に吹き飛ぶ。
「…………やっぱり、本当だったのか」
フィンブルは石畳の敷かれた円形の広場の中央付近に立っていた。ゲームショウの会場から連れて来たような様々な武装に身を固めた人影がちらほら見える。広場はにぎやかな大通りへとつながり、見慣れない木造の建物が立ち並ぶ。さらにその向こうにはすさまじいまでの大きさ、雲に届くかという大樹が空を覆い、その木が広げた枝の上には一つの街が広がっている。このどこかに父親もいるのだろうか?
そして、フィンブルの隣には、穂坂日乃の姿があった。
「どんぐらい待った?」
「それが全然。わたしが目を開けたときにはユキナリもいた」
眠ったタイミングが同じだったとは思えないが、どうやら同時にログインには成功したらしい。エヴォルヴァースへ運ばれる時間と眠りのタイミングには関係が無いということだろうか。
さっきから耳に聞こえるのは、まさに街のBGMといった音楽だ。誰が鳴らしているんだろう――と、首をめぐらしてみると、広場の片隅に一人づつ楽器を抱えた楽団がいる。いよいよゲーム気分を高めながら、フィンブルは日乃に向けて言った。
「……さて、エヴォルヴァースに無事来ることが出来たわけだし、することと言えば――」
「狩りよね」
「情報収集だ」
日乃が血迷ったことを言い出した。ゲームに関して日乃は意外と戦闘民族だ。
「……装備も知識も無いのにそんなことできるかよ。取り敢えずはチュートリアルっていうか、この世界での動き方を調べないとどうしようもない。この世界がちゃんとゲームになってるなら、せめてメニューの出し方くらいは知りたいよな……」
父親の情報も探さねばならないのだ。とにかく闇雲に歩き出そうとしたフィンブルを、日乃の声が止めた。
「ね、あそこの看板みたいなやつ、なんか書いてあるよ」
見ると確かに掲示板というには小さすぎる木で出来た看板が、視界の左奥、広場が大通りとつながる出口のうちの一つに立っている。遠い上に人もちらほらいて見にくいので、看板の前まで歩いていって読んでみると、こんな言葉が書いてあった。
メニュー画面のヴォイスコマンド:《ブラウズ》
「「ブラウズ」」
異口同音に叫ぶ。すると、二枚の薄いホログラムのようなウィンドウが音も無くそれぞれの目の前に展開した。フィンブルは自分のウィンドウを覗き込んだ。キャラネームの《フィンブルヴェトル》が左上に書かれ、アイテムやスキルやパラメータなど数々のメニューが並んでいる。画面右下には【Location:ホッドミミル広場】とあり、それがこの広場の名前だと思われる。
「へー、他のひとのウィンドウは見られないんだ」
「うわっ!!」
気付かぬうちに背後に来ていた日乃がそんなことを言ったので、フィンブルは驚いて飛び上がる。
「突然なんなんだお前は……」
「ユキナリのキャラネームなんだった?」
「全くこっちの話を聴く気がねえなお前。そっちはなんだったんだよ」
「わたしのは《Flare》よ。ユキナリは?」
「俺は《Fimbulvetr》」
「長いわね…………」
「呼ぶときはフィンブルで頼む、こっちもフレアって呼ぶから」
ネットゲームでリアルネームを呼ぶのはとんでもないノーマナー行為だ。個人情報の保護というだけでなく、キャラネームはロールプレイの一環でもあるからだ。エヴォルヴァースでの名前の扱いの常識などは知らないが、わざわざリアルネームを使う必要も無いだろう。
それからしばらくフィンブルたちはヘルプを読みながらウィンドウを操作し続け、自身に関する知識を一通り頭に収めた。職業は二人とも設定されていて、フィンブルは片手剣使い、フレアは魔道士だった。装備可能な武器はある程度制約があるものの、スキル選択は自由なようで、そういう意味ではエヴォルヴァースにおけるクラスは《種族》に近い意味合いを持っているらしい。また、一定レベルに達するごとにクラスチェンジがあるようで、そのときには各種スキル熟練度が関係してくるという。
「さて、それじゃ今度こそ探索だね! ユキ……フィンブル」
張り切って声を出したフレアに、ユキナリは少し嫌そうな顔を見せる。
「……慣れるまで時間かかりそうだな」




