第28話 懇親会は続く
僕がもしゃもしゃサーモンのお寿司を食べていると、大悟は知らない人と話していた。たぶん大悟のお父さんのお知り合いだろう。
「お、隼人。大悟くんも。紹介するよ。筑波大学医学群の教授をされている林洋一先生だ。お父さんと大悟くんのお父さんと林先生は同級生なんだ。」
「よろしく。専門は免疫学だよ。」
「あ、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
大層な名刺を頂いてしまった。僕はまだ大学に入学したばかりなのに。
「俺もさ」
そう言ってテーブルの上に名刺を並べる。
「うわ、よく集めたねこんなに。製薬会社とか医療機器メーカーも多いね。」
「そう。こういう教授就任式とか院長就任式には関係者として製薬会社とか医療関係の会社の営業さんが宣伝に来るんだ。こうしてパイプを繋いでおくんだ。」
「すごいね、大悟は。すぐにでも教授になれそうだよ。」
「隼人もご飯ばかり食べてないで、パイプつなぎに行くよ!」
そう言って大悟は僕の手を引き、営業さんのところに連れて行った。
「いやー、大悟くん張り切ってるねぇ。」
「ちょっと張り切りすぎじゃないかしら…」
「あれぐらいがいいのよ。それに製薬会社とか医療機器メーカーと繋がりが出来れば、うちの病院にも来るでしょうから、一石二鳥ね。」
「隼人くんのお母さんも意外と張り切ってるわね…」
「それぐらい今の仕事が好きなのね。それと隼人にもそういう機会を与えた方が、後々に役立つじゃない?」
「まぁ、そうね。」
20人の方から名刺を頂いた。うちのお父さんは精神科医だが、色んな人、特に製薬会社界隈ではやり手で有名らしい。
「うちの会社の新薬をいち早く採用していただきまして。良くしていただきました。」
「はぁ、ありがとうございます。」
「隼人、おいで。」
お父さんがこちらに向かって手招きしている。何事かと思いながらお父さんの元へ行くと、
「あのMR、うちのクリニック出禁だから気をつけてな。」
「え、そうなの?」
「無理矢理営業してくるんだよな。上司呼んで何回も話し合いしたんだけど改善が見られなくて出禁にしたんだ。」
「そうなんだ…」
「あそこは精神科中心の会社で、しかたなく処方はしてるけど訪問は禁止してるんだ。」
「分かった。まだこんなに名刺いらないから、お父さんにあげるよ。」
「おう。」
「ちょっとお手洗い行ってくる。」
「おう。」
なんか視線を感じるんだよな。ちょっと寒気がする。その視線から逃れるようにお手洗いへ向かった。
その時、事件は起きた。
後ろから手で目隠しをされ、口をガムテープで塞がれ手錠をかけられた。そして、腕に何かを注射され、僕の意識はブラックアウトした。
何やら声がする。目を開けると、出禁のMRさんがいた
。
「無理矢理しちゃってごめんね。君にお願いがあるんだ。」
「んー!」
「あぁごめん、口塞いでたら話せないよね」
僕の口に貼られたガムテープをゆっくりと剥がす。狐目の男は僕にこう言った。手にはスタンガン。
「君に、お願いがあるんだ。」




