第七話-【第三幕:時代遅れの羽根ペンと、鉄屑を愛する工匠(エンジニア)の出会い】(挿絵あり)
この言葉には、いかなる感情の色もなかった。
それは冷たく、正確で、鋭利なメスのように。
主流魔法文明全体を支えている「流体理論」の根基を、事もなげに完全に切り開いてみせた。
「魔力粒子」が単なる暗号に過ぎないとしたら、この補足は、その暗号に対する最も深く、最も核心的な解読だった!
「寸法と形状……それはつまり……魔力粒子の大きさと属性のこと……?」
少女の、先ほどまで疑念に満ちていた瞳が、見開かれた!
すべての防備、すべての警戒、すべての偽装が、魂を直撃するこの問いの前に、木端微塵に粉砕されたのだ!
涙が、彼女の薄茶色の瞳から制御不能なままこぼれ落ちた。
決して悲しみの涙などではない。
とうの昔に世界から忘れ去られた宝物庫を何百年も孤独に守り続けてきた墓守が、ついに宝の地図を読めるもう一人の仲間を待ちわびた時の、安堵と狂喜と悔しさが入り交じった涙なのだ。
彼女が待ち焦がれていたのは、冷たい答え(アンサー)でも、上辺だけの慰めでもない。
数百年の時を越えて現れた「同類」からの、深い『理解』だったのだ。
「……これは私の先祖の手稿なの」
彼女は自分の身の上をゆっくりと語り始めた。
声は興奮のあまり少し咽び泣いており、ようやく理解してもらえる秘密を打ち明けているようだった。
「先祖はただの製図師じゃなかったわ。……『一角獣学派』のために専門に、高精度の魔法陣を描く工芸の大家だったのよ」
彼女の指先は、ページ上のとうに色褪せた、しかし今なお心臓が粟立つほど正確な線をそっと撫でた。
その動作は肉親の顔に触れるように優しかった。
「この手稿は、かつての栄光に関する、私たちの家族に残された唯一の遺物なの。ここには先祖の生涯の心血が、つまり『魔法粒子』理論に基づいた魔法陣体系の完全なセットが記されているわ」
彼女の声には、どうにもならない苦渋の念が混じっていた。
「でも、あなたも見た通りよ。本の中の理論は精妙だったけれど、主流の『魔力流体』理論と完全に相反していたために、当時の学界からは『失敗した異端』と見なされた。私の家族もそのせいで嘲笑され、弾圧され、最終的に完全に没落してしまったの」
彼女は顔を上げ、アーガスを見た。
その薄茶色の瞳には、同じように世界から孤立させられた二つの魂の間にしか生まれない、無言の共鳴があった。
「今の私たちはね、」
彼女は自嘲気味に笑った。その笑顔は壊れやすい磁器のように脆かった。
「貴族のために星図を描くことで体裁を保っている、ちっぽけな製図師の家系に過ぎないわ」
アーガスはここで初めて気づいた。
彼女の一糸乱れぬ制服の胸元に、白銀で作られた小さな家紋のブローチがつけられていることに。
貴族たちが好む雄獅子や星辰などではない。
複雑な魔法陣を描き出す、古い羽根ペンの意匠だった。
主流の世界から同じように「異端」と見なされている二人の孤独な者が、こうして、この忘れ去られた知識の墓場の最深部で、互いを見出したのだ。
ミリーは長い間沈黙していた。
まるで困難な内なる葛藤を抱えているようだった。
最終的に、彼女は何か決心を固めたかのように、躊躇いと探りに満ちた極めてゆっくりとした動作で。
家族の歴史と希望のすべてが詰まったその巨大な手稿を、アーガスの方向へ向けて、ほんの少しだけ、そっと押しやった。
それは無言の招待だった。
そしてすべてを賭けた完全なる信頼であり、家族の最後の尊厳を、一人の見知らぬ者に委ねる重い託付でもあった。
アーガスは何も言わなかった。
彼はただ黙って、前に進み出て、身を屈めた。
時間はまるで、この永遠の静寂の中で停止したかのようだった。
アーガスとミリー。
共に学院から「異物」と見なされている二人の新入生は、巨大でボロボロの古代の手稿の上に並んで身を屈め、神聖で無言の同盟を結んだ。
窓の外から、幾重もの書棚を通り抜けてきた唯一の逞しい陽光が、ちょうど彼らの間に落ちた。
それはまるでスポットライトのように、間もなく開演する知られざる演劇の舞台の中心を照らし出していた。
その光は、ページ上のとうに色褪せた、しかし今なお不屈の知恵の光を閃かせている、古い文字と図形を照らし出した。
そして、灰の中から間もなく再び燃え上がろうとしている、全く新しい始まり(スタートポイント)をも照らし出したのだった。
【あとがき】
応援や★★★★★評価、ブックマークが、この物語の火力になります。
次の章も、全力で鍛えます。
執筆や読書のお供に、よかったらこちらもぜひ。
私が制作している和風ファンタジーBGMチャンネルです。
幻想音坊|和風ファンタジーBGM
https://www.youtube.com/@EPIC-3.1415




