第6話 勝ったのは誰だ?
最終H(パー4)のグリーンに三つの球が揃う。いよいよこの3馬鹿ゴルファーの戦いが決着の時を迎えていた。
大尾さんは4onで次が5打目。2打目でグリーン近くに付けたものの、砲台グリーンに3打目を弾かれて4打目でやっとグリーンに乗せる事が出来た。
徳富さんは3on。と言ってもその3打目は彼じゃなくて私、キャディの孟子 蘭が代打ちしたのだが。
アプローチチャレンジャーの彼が今日の有終の美を咲かせるか、それとも勝負に勝つべきかを10分悩み抜いた結果、血の涙を流しながら私にウェッジを差し出してきた。自分で打てばいいのに……。
で、手前が池だけにちょっと強く打ち過ぎたけど、幸いにもピンに当たってグリーンに止める事が出来た、残る距離は3人の中で一番近い約1.5m。
鳩賀さんは5onだった、2打目を池に落としてしまい、4打目で珍しくチョロ。それでもきっちり次で乗せるあたり、やっぱ技術は一番だ。ただ……
「はあぁぁぁぁ……私のパターがあぁぁぁぁ」
先端の取れたパターの棒に頬ずりしながら涙目の彼。ロングパットをねじ込むことにゴルフの美学を感じている彼にとって、最終ホールまでパターが使えないのは無念の一言だろう。
もちろん残りの二人からの借用は断固拒否されている。
グリーンに上がる3者。一番遠いのは鳩賀さんだが、未だにパターを握りしめて動こうとしない。気持ちは分からないでもないんだけど、コレを決めれば優勝なんだし覚悟を決めてくれないかなぁ。
「……その瞬間、俺に電流が走ったッ!!!!」
「ひっ! な、なんですかいきなり!?」
いきなり叫ぶ鳩賀さんにビックリする。なんかさっきまで死んだ魚の目だったのに、今はまるで少年のようにキラキラと輝いている、何かひらめいた? それとも開き直った??
……コレで私に打ってくれとか言ったらマジでシバクぞ。
「ふっふっふ、やはり私にはパターしかないっ!!」
そう言ってヘッドの無いパターを立ててヒザを落としラインを読む。え、まさか、あの棒だけで打つつもり?
「いざ! ゴルフに新たな革命を」
そう叫んで右手でグリップを、左手でシャフト先を包むように持つと、なんとそのまま腹ばいに寝そべってしまった!
シャフトの先端をボールに向けて、右手をシャッシャッと前後させて狙いを付ける……
ちょ! それってビリヤードの打ち方じゃないのおぉぉぉぉ!
「パットと共に生き、パットに死す! 鳩賀通の生き様、とくと見よおぉぉっ!!」
カッツーン!!
「だあぁぁぁぁっ、逸れたあぁぁぁぁー!」
打った瞬間にデタラメな方向に転がっていく球。
当たり前である。ビリヤードのキューと違って、ヘッドの抜けたパターの先端はボールを真っすぐ打ち出すように加工されてなどいないのだ。いくら芯を食っても打ち出された球が逸れるのは当たり前……。
あ、逸れただけじゃなくて、真っ直ぐ徳富さんのボールに向かってる。
ガツッ!
「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!?」
直撃を受けた徳富さんのボールは、そのまま超深いバンカーに叩き込まれた。
ゴツン!
「こっちにも当たるんかい!」
跳ね返った鳩賀さんの白球が、今度は大尾さんの球にぶつかって、その球をグリーン下の池に転がり落とした。
トントントン……ザザッ。
そのまま砲台グリーンを駆け下りた鳩賀さんの球は、勢いよく転がった先でOBクイを超えて、止まった。
……
「てへっ、失敗失敗」
「「「あほかあぁぁぁぁぁっ!!!」」」
すっぱあぁぁぁ-ん!
徳富さんと大尾さんとそして私が、立ち上がって舌を出す鳩賀さんを全力で引っぱたいたのは言うまでも無い。
誰か、これスコアカードにどう書いたらいいか教えてクダサイ……




