表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

第4話 偽聖女騒動

セランが学園に入学した。

ユリユリは「今度こそ、つかの間の安息がむさぼれる…」と静かに期待していたらしいわ。

わたくしもセランと一緒に入学したの。嬉しかったわ。これで毎日会えると思って、張り切って通ったのよ。でも、セランは話しかけてもほとんど勉強の話ばかり。

わたくしのことなんて、眼中になかったみたい。

……まあ、いいんですけどね。


セランと入れ替わる形でレオが帰国したの。

え、どこに行ってたかって?昨年「ちょっくら留学してくる」と言って、帝国に留学してたのよ。セランのやる気に感化されたのかしらね。


帝国の学院は、各国の王族が集まるほどの名門で、帝王学が有名なの。レオもいろいろ考えてるのよね。わたくしもその影響を受けてる派だけど、セランの影響力って本当にすごいわ。


そうそう、セランは学園生活が始まって、しかも1年で卒業しようとしてるんだから超多忙。わたくしの相手すらできないくらいだから、レオの相手なんてしてる暇はないわよね。すると当然、レオの「構ってモード」がユリユリにロックオンされたの。


ユリユリは塩対応で躱してたけど、さすが王族、レオには通用しなかったみたい。日に日に疲弊していくユリユリの姿が……ちょっと面白かったわ。

でもしばらくすると、ユリユリの顔色がよくなったの。どうしたのかしらと思っていたら、レオが騎士団に入団したと。なんでも「帝王学的に、実地研修だよ」と。きっとユリユリが入れ知恵したのね。


何はともあれ、彼は平和を手に入れたのよ。

つかの間のね…


そのころ、王都で「聖女」が現れたという噂が流れてきたの。「聖女さまが祈ったら作物が大きく育った」だの、「病気が治った」だの、平民の間で話がどんどん大きくなっていて。


協会は「聖女さまの祈りの会」なるものを催し、お金は取らないというものの、誰かが寄付をしたら、後に人々が続いて寄付し出したらしいの。聖女を支持する貴族まで現れ、聖女はある男爵の養女になったのよ。


王政庁の調査隊が動こうとした矢先、王家主催の舞踏会で婚約破棄騒動が勃発。アイル子爵令息カシウスが婚約者に向かって「私は聖女さまをお守りしないとならないので、あなたとの婚約は破棄します」とのたまったのよ。


そしたら、同じ会場にいたグレイフォード伯爵令息レイニードも婚約者に向かって「あなたとは結婚できない。婚約破棄してくれ!」と続いたとか…


舞踏会は、もはやダンスどころではなかった。

王家主催の場だけあって、高位貴族が数多く出席しており、事態を隠すことなどできるはずもない。

しかも、男爵令嬢として招かれていた聖女までが参加していて――

止めようとした彼女の涙(演技よ)が引き金となり、場は混乱のるつぼと化した。


そんな中、レオは早々にカシウスとレイニードを別室に確保し、収拾にあたった。ユリユリとセランには、「そっちを頼む」と指示を出していて。――正直、ちょっと見直したわ。

あのレオが、あんなふうに冷静に動けるなんて。

ユリユリも少し驚いてたみたい。目元がほんのり動いたの、私、見逃さなかったから。


そして、セランとユリユリは彼らの様子を確認するため別室へ。


レイニードはだいぶ落ち着いていたけども、カシウスは興奮していて、唾を飛ばさんばかりにわけのわからないことを喚いていたらしいんだけど、そこでセランがなんか匂うといったの。


以前、体質改善プログラムを実施しているときに、セランはあらゆる薬草が自分と合うか調べたのよね。ユリユリとセランは徹底主義だから、他国の薬草も取り寄せていて。その時、精神を脅かす薬草が紛れ込んでいたことがあったのよ。「幻覚草」っていうんだけど、魅了薬の原料にもなる危険な代物で、我国では使用も所持も禁止されているの。

でも、他国では規制されていないこともあって、うっかり混ざってしまったらしいのね。


セランがその匂いと似てるっていうのよ。

彼らに今日口にしたものを確認したら、二人とも聖女からグラスを受け取っていた。そのグラスはなぜか見つからなかったんだけど、レイニードの袖からも匂っていて…どうやら、グラスの中身をうっかり袖にこぼしたらしいのよ。


舞踏会で出された飲み物や食べ物からは何も検出されなかったけれど、レイニードの袖口から採取した液体を調べたところーー、「幻覚草」だったの。


ユリユリはほくそ笑んだの何のって。日頃、うるさかった協会をこれで一網打尽にできるって。

公正な裁判をするというケハク伯爵を裁判長に任命(陛下にさせた)し、物証・証言、あらゆる証拠を揃え、裁判に持ち込んだ。


奇跡はすべて仕組まれた演出だったと立証し、協会と偽聖女を断罪。なんと、最終ターゲットは王太子だったとか。国家転覆罪も適用されたそうよ。怖いわね。初期段階で解決して、本当によかったわ。


婚約破棄された令嬢たちには、子息側の瑕疵での婚約破棄という形になり、慰謝料も支払われたわ。彼らは操られていたとはいえ、責任を取らざる得なく、北辺境伯領の氷狼討伐隊に左遷という形で落ち着いたの。二人とも近衛騎士のエリートだったんだけど、コースから外れてしまったわね。


でも、ユリユリは数年出向させて、使えるようなら後で拾うって言ってたわ。この二人はきっと見込みがあるのね。失敗しても、反省して償い、頑張ればチャンスをくれるっていうの、いいわ。

そんな世の中なら捨てたもんじゃないわよね。


そして、セランは見事1年で学園を卒業。

私と一緒に学園に入学したけど、やっぱり遠い存在だったのね…


幻覚草・・・異世界にての薬物です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ