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プロローグ: ユリユリ劇場・開幕宣言

私の夫、ユリウス・ヴァルシュタインの趣味は、一言でいうと、派遣の斡旋をすることである。ただし、本人の希望は聞かない。彼が最適と判断した場所に、誰であろうと送り込む。彼は「王国のため」と言うけれど――楽しんでいるのよ、私にはわかるの。


昨年までは、セラン第二王子の側近だったから、表にはほとんど出てなかった。でも今年から王太子レオの側近に。議会では進行役兼却下係として、出てくる議案をバッサバッサと切っているらしいわ。


ポスト宰相と噂される男で、頭脳はキレッキレ。機を読み、数手先まで布石を打ち、最善へ導く手腕は王国一。


本当に、国王も認めているのよ…

あの方、笑いながら「お前に任せる」が口癖ですもの…


誰をどこに送り込むか――それを考えているときの彼の顔がね、邪悪な笑み……いえ、輝いているの。

そして、派遣された人は、彼の思い通りに動いていくのよ。


夫は未来を采配する、魔術師のような男。

それが、私の婿殿。


よく結婚できたと思うでしょう?

ええ、私もそう思うわ。


こう見えて私、公爵家の娘なのよ。第一王子のレオや第二王子のセランとはいとこ。権力なら、王国でも五本の指に入るほど――正直、持て余していたくらい。だから、望めば何でも手が届いた。そういう立場だったの。


……なんて言ってみたけれど、実際は彼につかまったんだけどね。気づいたら、逃げ道なんて残っていなかったわ。あの冷静な顔で、未来まで計算されていたんだもの。


でも、結婚して、身近で彼を見ているうちに――

どんどん、いろんなことがわかってきたの。

そして、気づいたの。この人のすごさに。

調べれば調べるほど、どんどん出てくる。


あまりにも情報が多すぎて、私、いいことを思いついたの。

彼のこと、その時々に起きたことを、できる限り集めて――1冊の本にまとめようと。


記録しないともったいないわ。

王国の貴重な変人なんですもの。

きっと、解明できるのは私だけ。


さあ、みなさん、覚悟はよろしくて?

ユリユリ劇場の始まりよ。


あ、ごめんなさい。

私、彼のことをユリユリって呼んでいるの。

それは、許してね。


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