表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/11

第1話 セランの側近になる

彼の名前はユリウス・グレイブ。

6歳のとき、両親をはやり病で亡くし、5つ上の姉とともにグレイブ北辺境伯の養子になったそうよ。詳しいいきさつは不明。生家も隠されているみたいで、謎だらけ。……おそらく王家が絡んでいるのでしょうね。


姉弟は7年ほど商隊に入って、各地を点々としていたらしいの。

今の陛下が即位したとき、王都に呼び戻されたとのこと。


その時、お姉さまは18歳。成人と認められる年齢だったから、自分の意志で隣国に渡ったそうよ。

とにかくすごいキャラらしいわ。ユリユリが全く太刀打ちできないほど…想像したくないわね。

今は隣国の王妃様なので、めったにお会いできないけれれど。

でも、彼が敵わないってどんだけよ。


ユリユリは13歳。未成年だったから、王家預かりに。

そこで陛下に、「同じ歳の第一王子レオと3歳下の第二王子セラン、どちらの側近がいいか」と問われたんですって。有無を言わさず側近だなんて、さすが王家よね。ほんと強引。


そして、ユリユリはセランを選んだ。

理由?レオからはマッチョの気配がしたんですって。なんでも、商隊長がゴリマッチョで、ことあるごとにぶ厚い胸にがばっと抱きしめられていたらしく、ちょっとしたマッチョアレルギーがあるんですって。


でもね、本当の理由は別にあるのよ。(お姉さま談)

当時のセランは病弱で小柄で、男の子に見えなかったの。最初は女の子だと思ったらしいわ。わたくしも初対面のとき、「なんてきれいな女の子なの!」って勘違いしたもの。同じ年なのに、わたくしよりも小さくてかわいかったのよ。


だからね、実は……一目ぼれだったんじゃないかって思うの。根拠はあるのよ。わたくしとセランはいとこなんだけど、髪の色、瞳の色、顔のつくりも似てるもの。

……言いたいことわかるかしら?あら、脱線しちゃったわね。


とにかく、ユリユリの側近生活が始まったわ。


主であるセランは、長らく原因不明の体調不良に悩まされていたの。王家の医師たちも首をかしげるばかりで、誰もはっきりした答えを出せなかった。


そんな中、ユリユリは「同じ王妃様の子なのに、なぜレオは健康(マッチョ気味)で、セランだけが病弱なのか」と疑問を抱いたの。最初は毒を疑ったらしいわ。

それで、セランとまったく同じ生活をしてみたのよ。同じ食事(ユリユリは倍以上食べたらしいけど)、同じ部屋、同じ過ごし方――怖くなかったのかしら。


そしたら、ユリユリは体調を崩すどころか、むしろ健康になったそうよ。料理長が栄養バランスに気を配っていたから、食事自体は問題なかったのね。それでもセランは不調のまま。これは体質に何かあると確信したの。


そこからがすごいの。王城の図書室にこもって、食べ物・薬草・毒・体質に関する本を100冊以上、5日ほどで読破したのよ。1日20冊よ?しかも分厚い辞書みたいな本……もう人間じゃないわね。


そして、とうとう原因を突き止めたの。

セランの体は「白穀粉」と「ミルク草液」に拒絶反応を起こしていたの。普通の人には無害でも、セランには毒のように作用していたのね。


そこから体質改善プログラムが始まった。

代替食材に切り替えて、少しずつ体を慣らすところから。最初はセランが嫌がって食べようとしなかったけど、ユリユリは「甘えるな、逃げるな、根性見せろ」と叱咤激励。

セランはそんなふうに言われたことがなかったから、逆に新鮮だったみたいで、素直に受け入れたそうよ。


ユリユリは運動にも付き合い、少しずつ体力もつけていった。「白穀粉」と「ミルク草液」も微量から戻していって、慎重に反応を見ながら進めたの。

みんなが心配して手を出す中、セラン自身が「僕はもう病人じゃない」と言い返したことを、王妃は今でも忘れられないって涙ぐみながらおっしゃってたわね。


日の光を浴びて王庭の道を歩くことから始めて、距離を少しずつ伸ばしていく。時には無理をして寝込むこともあったけれど、ユリユリは「倒れるなら前向きに倒れろ」と励まし(?)、食事も運動も慣れていったの。


そして2年が経つ頃、セランは標準体重に達し、走ることもできるようになったの。


感動したわ。セランが頑張る姿を見て、わたくしも頑張ろうってスイッチが入ったし。可愛いかったセランが逞しくなるのを見ていて、わたくし、いつのまにか好きになっていたのよね。だから、私情が多少入ってるかもしれないけれど……それも、許してくださいね。


ユリユリとレオは15歳になり、学園に入学。レオはすっかりユリユリに心を許していて、一緒に通えることを素直に喜んでいたみたい。でも、ユリユリの関心はセランに向きっぱなしで、学校には週2回しか通わなかった。それでも毎回テストは満点。ほんと、化け物じみてるわ。


レオはユリユリがいない寂しさを、筋トレで紛らわせていたらしいの。

マッチョ気味 → ちょいマッチョ → ほぼマッチョ → マッチョだろ → マッチョすぎ

と、みるみる変化していって……ユリユリは「正直、怖かった」とつぶやいていたわ。まあ、ゴリマッチョ商隊長のトラウマがあるものね。


ユリユリは1年で全単位を取り、さっさと卒業。「これからもセラン殿下とともにあるためです」って、堂々と言い切ったのよ。彼にとってセランは主である以上に、かけがえのない存在なのね。

……わたくしの恋心?この時点で完敗よ。潔く認めるしかないわね。


「白穀粉」と「ミルク草液」は、それぞれ小麦粉と牛乳のようなものを指しています。この異世界では、食物アレルギーという概念がまだないという設定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ