↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
掲示板の皆さま助けてください  作者: いそがばまわる
9.新たな日常の、祈祷師
152/191

現在BFO最強の男

「吾輩、勝った気がしないのだが」

「えっと、お疲れさまです」

「お勤めご苦労様です」

「アリス君、それは何か違くないかな?」


 ポポさんの出番がアレな形で終わり、疲れた表情で僕たちの隣に座った。今日は特にトークとかもなく、ガーディアンとしての出番が終われば暇だそうで……ただ、これ以上なにかイベントに参加する気力は残っていないようだ。

 力士、オカマ、自爆と濃い面子がジェットでストリームな突撃をかましてきたんだから仕方がないが。


「次はイチゴ大福さんの出番ですけど……まだ出てこないですね」

「リアルで何かあったようでね。それで遅れているのだ。まあ、連絡もあったし今はログインして準備中だから待っていればそのうち始まるよ」

「それなら良かったです。それで、イチゴ大福さんの装備ってなんです?」

「そういやあの人に貸し出された魔導兵器はまだ聞いていなかったような……」

「あー……」


 ポポさんが言い淀んでいる。ぶっ壊れ性能なのだろうかとも思ったが、目が少し泳いでいる。いったいどんな装備を貸し出されたのだ?


「まあすぐにわかることだが……杖だよ。魔法使い系職業などが使う、アレだ」

「それはわかりますけど。でもイチゴ大福さんって【怪盗】だし……いや、ステッキ使っていたか」


 正確にはステッキとトランプ。ステッキのほうは【怪盗】に合わせた性能であるが、魔法使い系職業が使うものと同様に魔法発動にボーナスが入ったはずだ。トランプは投擲武器……まあ、ゲーム内では手裏剣みたいなものである。

 らったんさんの装備を見せてもらったときに、イチゴ大福さんとは方向性が異なったから調べてみたことがあるというだけなのだが……装備自体は割とおかしな性能を持つわけでもなかったことを覚えている。魔法発動用の杖を使うこと自体はおかしくはない。


「で、どんな特殊性能なんです?」

「魔法のチャージが可能だ」

「……えっと、どういうことで?」

「発動状態の魔法を更にチャージして威力を底上げできる」

「…………地味では?」

「一番地味だ。そして、それ以上の効果はない。発動待機状態でのキープにも使えるが、それにしたって別の方法もあるのだよ」

「存在意義は!?」

「低威力の魔法もチャージすることで威力の底上げが出来る。アレだけは他の魔導兵器とは違い、燃費が向上する」

「一発当たりのMPが減って、威力が上がるならDPSは上がるのか……でも発動速度が遅いし」

「そんなの隙だらけになるだけで、殴ってくださいって言っているようなものですよ?」

「アリスちゃん。発想が怖い」

「そんな曇りなき眼で」

「ただ、イチゴ大福さんなら使いこなすんですよね。身のこなしの軽さで、動き回りながら強力な魔法をチャージして一気に攻撃するとか平気でしてきそうです」

「アリスちゃん、妙に実感のこもった発言してない?」

「……いつかリベンジしてやるって決めたです。今日は、動きをしっかりと把握しないといけないですから」


 いつの間にライバル視していたんだろうか? この子、だんだんとバトルジャンキー的な思考に行っているからなぁ……最初の頃は戦闘面の才能に関して悩んでいた気がするけど、ここ最近は吹っ切れたのか普通に出し惜しみなく戦うし。


「老婆心ながら言わせてもらうが、そのあたり吹っ切れたの村長君が原因だからね」

「マジか。あと声に出していました?」

「いや、顔に書いてあった」


 マジか。


 @@@


 アリスちゃんが早々に真剣な観戦モードに入ったのでポポさんの解説でイチゴ大福さんの戦いを観戦する。ポポさんとは対照的に、いたって普通のプレイヤーばかりが彼の対戦相手になった。


「羨ましいのである」

「いや、僕に言われても」

「冗談……にはなっていないが、冗談はさておいて。彼の戦い方がどういったものかわかるかね?」

「なんというか……動きは凄いレベルで洗練されているし、未来予知かよってレベルの対応をみせるんですけど、なんていうか…………基本に忠実?」


 彼もアリスちゃんと同様にVR適性が凄まじく高いタイプのプレイヤーだ。他のプレイヤーと比べても頭ひとつふたつとびぬけているのだが……それでも、挑戦者側もイチゴ大福さんのスピードについていけている。いつもならもっとすさまじい速度で動くので攻撃を当てることもできないと思うのだが……どういうことなのだろうか?

 それに、攻撃方法も普通に挑戦者がスキル発動したあとの硬直を狙ったり、回避からのカウンターを決めたりなど見ていて非常に分かりやすい。


「まずひとつ。PVPモード用にステータスが調整されているので、いつもみたいな高速移動ができない。アレはすさまじく高いステータスを使った移動方法だからね」

「ああ、筋力値を参照した短距離ブーストだったなそういえば」

「ふたつめには、あれが彼の本来の戦闘スタイルだ。村長君たちみたいな一芸に秀でたやり方ではなく、高いスペックをひたすら基本に忠実に戦う……まあ、【怪盗】という職業の特性で高い技量を持つNPCとの対人戦イベントが多数発生するから、そこで鍛えられまくったというのが正解なのだがね」

「な、なるほど……」

「ヒルズ村にいるもう一人の怪盗、らったん君については……どういうフラグを立てたのかわからないが、なぜかNPCの好感度が上がるルートに入っているためイベントが発生していないようだが、本来ならイチゴ大福君のように対人戦コンテンツに慣れるだけの土壌が生まれる職業なのだよ」


 なるほど。ある意味BFOで一番対人戦に慣れたプレイヤーなわけか。ただし、相手がNPCだったから動きのベースが基本を重視したものだと。

 ただ、前にクラーケン戦の後で戦ったときはアレな感じだったけど。


「その話だが……深夜テンションって怖いな、と」

「あ、そういうアレなのか」

「別の要因がない限りはああして基本を突き詰めた戦い方をするプレイヤーだよ。だからこそ、付け入る隙が少ないのだが……それに、奇抜な戦い方が出来ないわけでもない。それは深夜テンションの時の彼が証明済みだからね」


 はっちゃけた戦闘も可能だと。

 なるほど、かなり戦いづらそうな相手ってわけか。アリスちゃんも隣でブツブツと実際に戦ったと仮定してシミュレート戦を呟いている。


「村長君ならどう戦う?」

「うーん……【海賊】か【サモナー】か。いや【村長】を使うか? ダメだ、決定打が浮かばない」


 フィールドでは的確に挑戦者の攻撃を弾き、自分のチャージした魔法をぶつけるイチゴ大福さんの姿が見える。使っているのは初級魔法だけだが、威力が高いので挑戦者側は結構痛いダメージを喰らうこととなった。


「でも、ああやってみるとチャージするだけってのもバカに出来ないなぁ」

「確かに。初級魔法だと出だしが速いから避けづらい。しかも威力が上がっているからダメージもバカにならない。あの武器を一番持たせてはいけない相手ではないのかね?」

「かもなぁ……ポポさんの使ってた弓、ランナーBさんが使ったらどうなるんですかね」

「やめたまえ。恐ろしい想像をするのは。それを言ったら、君と最後に戦った女性が使っても恐ろしい結果になりそうだが?」

「怖いことを言わないでくださいよ。また戦ったら負けるかもしれないって怖いんですよこっちは」


 なんというか苦手な雰囲気を纏っているのだ。できる限り戦いたくはない。というか、なぜか脳があの人のことを思い出すのを拒否している。

 というわけで話題を目の前の戦いに戻すが……【怪盗】のスキル構成は【盗賊】と【武闘家】に【魔法使い】などをミックスしたようなものだ。あれも特殊系職業の筆頭だな。


「アレはアレでかなり扱いづらい職業のはずなのだがね……」

「話に聞くと【探偵】も結構なものって聞きますけど?」

「なに。【武闘家】の亜種みたいなものだよ。【怪盗】ほど明後日の方向には突き抜けていない。アレはかなりの上級者向けに用意したものであるし、それこそ体を自由自在に動かせるプレイヤーでもなければ使いこなせない代物だぞ」

「一番ヤバい人に一番渡しちゃいけないものを渡しちゃったわけだし……ポポさん、戦ったら勝機はある?」

「正直、厳しい。ニー子君ならあるいはといったところか……アリス君なら可能性はあるが…………ステータスの差が大きくならないPVPモードで戦うことを前提に考えると、前提条件が動けることだからね」


 フルダイブ型ゲームだとどれだけ体を動かせて、なおかつ思考がついていけるかが重要になる。普通に遊ぶ分には問題ないように調整されているけど、どうしても対人戦コンテンツではプレイヤー同士の差が顕著になってしまう。いや、対人戦なんだから当たり前なのだが。


「吾輩の知る限り、彼の動きについていけるのは総プレイ時間がログイン制限ギリギリのプレイヤーか、アリス君みたいな適性の高い人物ぐらいだ……ああ、もう一人いたか」

「どなたで?」

「酔った銀ギー君」

「最終兵器は持ち出さないでくださいよ」


 そもそもこのイベントの発端だって酔っぱらった彼女では? あの後すぐにイベント告知、しかも開催までの期間が短かったしなにか関係あるのかなと思ったのだけど。


「きっかけのひとつではあるが、発端ではないよ。元々、ユーザーと運営が近い距離で何かをするイベントは企画されていたからね。今回はそのテストでもある」

「いろいろと考えて動いているわけね……あ、イチゴ大福さんが勝った」

「順当ではあるな」


 運営の実況もあたりさわりのないこと……というより、魔導兵器についての紹介とイチゴ大福さんの立ち回り方について解説していた。ただ、今日一イキイキとした解説だけど。


『ああいう風に、ガード硬直後に電気系の魔法を使うことで効率よく麻痺を付与し、隙を更に大きくすることが出来るわけですよ』

『モンスターにも有効な手なんですか?』

『その通り。多くのプレイヤーは攻撃のタイミングを計るのに苦労していると思うんですが、まず相手の動きを止める。特にボス戦では牽制技ってのが重要になるわけですね』

『音楽担当なのに詳しいですねマキシマーさん』

『初期のころはテストプレイも兼任していましたからね。最近は最後のチェックに関わるぐらいですけど』

「トークが真面目だ……」

「イチゴ大福君は圧倒的に強いが、今の動きは分かりやすく、それでいて解説もしやすかったからね。案外、パフォーマンスも含めて彼があえてわかりやすい動きだけで戦った可能性すらある」

「そこまで出来るのかよ」

「運営としては歓迎すべきことなのだろう。多くのプレイヤーの参考にもなるし、この映像を見た新規プレイヤーが増えるかもしれない。一風変わった戦い方はそれはそれで目を引くが」

「まあ、確かに――僕のほうをじっと見なくても分かっていますよ。一風変わった戦い方筆頭なのは」

「それはそうなのだが……君、受け入れるときと否定する時があるがその差は何かね?」

「ただの気分。口で否定していても内心は受け入れているよ。ツッコミみたいなものだから」


 というかアレな戦法をとるのは分かってやっている部分もあるし。基本、楽しく遊べればそれでいいのだから。その場でこのほうが楽しいかなと思った行動をとっているだけである。


「……君、思ったよりノリが適当だったのだな」

「真面目にしすぎると疲れるし、そうやって釣り合いをとっているだけですよ。さすがに真面目にしないといけないところは真面目に対応するし」


 と、そんな個人的な話を絡めながらイチゴ大福さんの戦闘を見ていたわけであるが……結局、少し戦法は変えていたものの、基本的な立ち回りだけで順当に連勝するのであった。

 うーん……僕が戦うとなると、アイテムなしはやっぱりキツイよなぁ…………爆発物が使えればまだ勝機はあるんだけど、PVPで使える爆発アイテムって爆発矢ぐらいだしなぁ。弓を使うと武器スロットがなぁ……戦法の自由度が下がったら本末転倒だ。

 まあ、仮定の話をしても仕方がないか。とりあえず、僕とアリスちゃんのガーディアンとしてのおつとめのことを考えたほうが良さそうだ。

活動報告に発売日情報などを投稿しました。良ければご覧になってください。


ディントンさんのイラスト付きです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この前の魔王城のように、 分裂爆発矢、範囲魔法での爆風反発とか、 実現したらイロイロヤバそうな気が。 (できるかどうか詳しい発生条件は覚えてないが)
[一言] 最終兵器とやりあえるのかイチゴ大福さん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。