とりあえずアイテム類は増えていくもの
まだサービス開始から1年経っていないのだが、これだけの新要素をよくもまあ次々に繰り出せるものである。
少しインターバルを挟み、続いてポポさんの出番なのだが……話には聞いているが、結構エグイ装備貸し出されるんだよなぁ。
「構想自体はサービス開始前からあるらしくて、裏で試作みたいな感じで用意はしてあるそうですよ」
「あ、そうなの」
「ある意味バージョン2から正式版みたいなところもあるですし、叔父さんの話だと次の大型アップデートこそ一番やりたかったコンテンツの実装の時、とかお酒の席で言っていたです」
「あっさり言うね、その新情報」
「そのうち正式発表もあると思うですよ」
「まあ、期待はほどほどにしておくかな。で、問題はポポさんなわけだが……」
いつもの探偵ルックではなく、緑色の衣装に身を包んでいる。そして手には弓を持っており、いつものように腰には懐中時計をぶら下げていた。
どうやら今回は【探偵】ではなく【狩人】で挑むようだ。借りた武器が弓だし、そのほうがスキルも充実しているのだろう。もしくは運営にそれ用のキャラを用意してもらったか。
「そういえば、パラメーターはガーディアン用のものに設定してあるんですよね?」
「うん。でも元のキャラと大差ない使用感にしてあるみたいだけど。ただ、ポポさんは武器用にかなりいじってありそうだな」
「ですね。本人は器用ですけど」
「うん、そうじゃない」
「わざとですよ」
「分かっているけども」
適当にコント的な会話を挟みつつ、ポポさんへの挑戦者が現れるのを待っていると……ようやく現れた。それは圧倒的巨漢だった。それは圧倒的肌色だった。それは圧倒的マワシだった。そして、力士だった。
キャラクリ調整したのか、以前見た時よりも更に力士な見た目になっている彼が現れたのだ。
『ごっつぁんです!』
「って力士じゃねーか!?」
「また知り合いです」
「運営、明らかにこの人はインパクト重視で選考しただろ! え、マジでランダム?」
『マキシマーさんマキシマーさん。あれ、いいの?』
『……ランダムのはずなんだけどなぁ…………というわけで、今回のガーディアンに挑む1人目の挑戦者はほむっと仮面さんですね。職業は見た通り【力士】で、当然のごとくパワーファイターです』
「ランダム選出で合っているみたいですね」
「いや、だとしても見た目のインパクトが強すぎるだろ」
『なお、この後に控えているのはランナーBさんと茶プリンさんです』
「どっちも知り合いかよオイ」
「オカマの人ですね……えっと、茶プリンさんは?」
「僕のリアルフレンド」
(……あー、前に公園で会ったアノ人ですか)
しかし【力士】ってどんなスキル群だったかな……武闘家系列のスキルだったとは思うのだが。
「たしか【重戦士】と【武闘家】みたいな感じだったと思うです。俊敏値と魔力が低い代わりに筋力と防御力が高かったような……」
「あー、思い出してきた。動きは鈍いけど、その場で強力な攻撃を繰り出したり優秀な防御スキルを持っているんだったかな……被クリティカル率低下スキルなんかもあったはずだ」
「…………ところで気になっていることがあるです」
「なに?」
「あのひょっとこのお面なんですかね」
「あの人、結構な頻度でつけているよ」
「お兄ちゃんの裸マフラーみたいなものですか」
「…………」
あれと同列なのか。ちょっと自分の格好について考えたほうがいいかもしれない。だが、インベントリと倉庫の中にあるのも水着とマフラーばかりなり。効果違いで様々な種類を取りそろえたために、他の装備を作っても使うか微妙な感じに……あれ? ドツボ? 結局見た目はあまり変わらない感じ?
「2年目からは新しい装備を考えるべきか――そうだ、UMAフォームを常用にすれば」
「もっとダメな方向に行こうとしているですよ」
「……迷走しているね」
「いつものことです」
そうこうしているうちにフィールドではポポさんと力士の戦闘が始まった。ポポさんに貸し出された魔導兵器だが、アーチェリーに使うような弓みたいな外見をしている。MPをチャージすることで矢に追加効果を与えるのだが……チャージ段階に応じて結構エグイ効果を発揮するのだ。
「ポポさんに貸し出されたのって、どんな効果でしたっけ?」
「3段階に分かれていて、1段階目がホーミング。2段階目が爆発付与。3段階目が拡散だったかな」
「ホーミングと爆発付与はわかるですけど、拡散は?」
「射ると、矢がたくさん分裂する。しかも元の威力が分散するわけじゃない。矢自体の特殊効果もそのままで」
「……例えば、爆発矢を使った場合は?」
「もちろん拡散する。爆発矢で爆発付与を使用した場合は爆破威力が増加するって聞いたけど」
「結構詳しく聞いているですね」
「実装されたら欲しいアイテムだからね。今日のお披露目まで言わないって約束で教えてもらった」
まあ、実装時に弱体化されているかもしれないが。
ちょうど実況ではポポさんの使っている武器について説明していた。なお、ポポさんだが拡散させて爆発矢を叩き込むことで力士のHPを削っている……力士もリジェネ効果のある装備をガン積みしているようだけど、あまり回復していないなぁ。
「PVPはリジェネ効果下げられるのかも」
「収拾つかなくなりそうですしね」
「それもそうか」
しかし爆破耐性もあるみたいだな……PVPでは爆破攻撃の可能性低いだろうに、しっかり対策しているあたりポポさんのやりそうなことを予測したのか?
『たまたま装備変えるの忘れていて助かった……うっかり爆破耐性装備を着てきて焦ったけど、結果オーライ!』
『さては火山ダンジョンに挑んでいたな』
『そのとおりだ! おかげでリジェネと耐性が上手くかみ合ったぞ』
あー……あそこ、爆破ギミックやら火炎放射ポイント、毒ガス噴射なんかもあるから爆破耐性とリジェネ効果がないとキツイんだよね。
なるほど、それであんな装備なのか。ひょっとこのお面は趣味だろうが。
『なら切り替えていこう――そら、貫通矢を拡散させた。ちなみに、先ほどから見えていた通り、拡散した矢は最初の軌道の外側へと飛ぶが、緩くカーブして元の軌道へと戻る。納豆の藁のような形状で』
『もっと他に言い様は無かったのか』
『吾輩だって迷走する時ぐらいある。正直、対戦相手もうちょっと楽に勝てる相手かなと思っていたが、予想外に曲者ぞろいで出鼻をくじかれた』
あら、珍しいこともあるもんで。
ポポさんが動揺しているとは……明日は雪が降るんじゃないだろうか?
「結構もっていますね……力士さん、押しきれますかね?」
「うーん……ポポさん、奥の手は使っていないからなぁ。いや、ある意味ハンデだけど」
腰に付けている【古代のウォッチ】を使えば超高速で移動できるが、動きの鈍い力士相手にはあまり意味がない。使うとしたら、連続攻撃の時ぐらいか?
と、そこでらちが明かないと感じたのかポポさんは一気に突っ込んだ。
『うぉ!?』
『秘儀、乱れ桜』
ウォッチを発動させたポポさんが力士の周りを超高速で走り、幾人にも分身しているように見えた。そして、その状態で矢を放ったようだが……なんか、矢同士がバウンドして連続ヒットしているんだけど。あれって、鏃がゴムみたいになっている跳弾矢だったっけ?
拡散を使ったんだろうけど……うわぁ…………見る見るうちにHPが削れていく。
『さ、さすがにこれは修正案件では!?』
『ポポさーん、デバッグの依頼はしていないですよー』
『すまない。吾輩も好奇心を抑えられなかったのだ』
『本実装前なんで別にいいですけどねー』
『こっちの心配はないんか!?』
『ほむっと仮面さんには後で参加賞のシールが与えられます』
『そんなイベント配布のステッカーじゃないんだから』
いや、HP多いな。あと余裕そうだな。というより、回避行動でもすれば案外楽に脱出できると思うんだけど……体の動きを阻害されているわけでもないし。
周りのみんなもそこに気が付いているようだが……相変わらず力士だけは動かない。
『……みんなにひとつ言っておく。これは決して、全方位から攻撃を喰らうのが楽しくなってきたわけでは――』
「あ、消えたです」
「結局あの人もゆろんさんやあるたんさんの同類だったか」
「あるたんさん、その枠なんですね」
「最近はディントンさんも怪しい気がする」
いわゆるドM枠。
ポポさんもげんなりした顔をしているあたり、いろいろな意味できつかったんだろうなぁ……次の対戦相手は、更にキツイオカマ様であるが。
「がんばえー」
「あ、ポポさん顔に手を当てたですよ」
「次の相手が相手だしなぁ」
インターバルを挟んでから彼――彼女? が登場する。
服装はなんというか……露出度の高いピンクのレオタード。そして背中に天使の羽を背負っている。頭上にはご丁寧に天使の輪っかも装備していた。
そしてムキムキの肉体。実にミスマッチである。なんで大胸筋がぴくぴくしているんだよ……そんな機能なかっただろうに、どうやっているんだ? たぶん、何かのスキルをエフェクトっぽくみせているんだろうが……無駄なことに無駄な技術を投入していやがる。
『殲滅天使ランナーB。アチキが来たからにはガーディアンの快進撃もここまでよん』
『快進撃って……ニー子君を入れてもまだ5戦目だから。そして、真剣な話吾輩……棄権したいんだが。え、ダメ? そんなー』
「あんな投げやりなポポさん初めて見るです」
「あの人、今年は厄年かもね」