破壊王(部位破壊1000回突破称号)
最近は話題に出すことも少なかったが、BFOにおける称号とは特定の行動、アイテムの収集率やクエストの達成状況に応じて手に入り、装備することで様々な効果が発生する装備アイテムのようなものだ。
取得難易度が高いものほど良い効果を発揮する傾向があり、魔王城の突破で手に入る称号の【魔王を討ちし者】は全能力値が結構上がるという、実に強力な効果を持つ。というか破格である。
この称号があるだけで今後の攻略に大いに役立つであろう。まあ、消費MPを減らしてくれる【ランナー】など能力値の増加以外で有用な称号も数多いので、別の物を使う機会もあるだろうが……というか、今回僕が使う【破壊王】もその類だろう。
【破壊王】、取得条件はモンスターの部位破壊を1000回以上行う事……アレかな。リヴァイアサンを周回したときに角を破壊しまくったから……あと、エルダーなんかは破壊可能箇所が多かったから。エルダーに関しては後で気が付いて、実は部位破壊しまくっていたことに気が付いただけなのだが。
ちなみに、【破壊王】の効果であるが……部位破壊をしやすくなる。つまり内部数値の部位破壊値が加算されるらしい。それに加え、部位破壊時に確定スタンが入る。
そこで、部位破壊に特化した爆弾を使ってみようと思うんだ。あと、結構な数のゴーレムが出現するそうなので再び魔法衝突爆風飛ばしを採用して。
「フハハハハ! 見よ、これが爆風飛ばしによって部位破壊効率を最大限まで高めた爆風連鎖だ! 実はゴーレム系は部位破壊可能回数が非常に多い! ボス以外では数少ない例外的に破壊可能箇所がある敵なのだ! そして、事前調査により魔王城のゴーレムはHPが多い代わりに部位破壊可能箇所が多いことが分かっている。ならばすることは一つ! 連続部位破壊による連続スタン。無防備な敵を一方的に殲滅するのだ!」
「お兄ちゃんが悪い顔しているです」
「完全に悪役じゃな」
「え、なに? 悪役令嬢がどうしたって?」
「誰もそんニャこと言っていニャいニャ」
「みょーんさん、悪役令嬢モノ好きなのー?」
「いや、若かりし頃に読んでいただけよ」
「しかし村長はコレカメラに撮っているのわかっておるんじゃろうか?」
「たぶん忘れているニャ」
フハハハハ! 圧倒的じゃないか我が軍は! いや、軍ってなんだよ。
セルフツッコミをしつつ目の前のゴーレム軍団を蹴散らしていく。魔王手前の階層というだけあって、結構な攻撃力を持つ個体ばかりだ。
多くの射撃型に、1体だけ近距離型がいる。そいつだけはHPの桁が一つ多くて、射撃型を対処しようとするとそいつが妨害してくるため非常にウザったいらしい。なお、近接型を先に対処しようとしても膨大なHPと射撃型の飽和攻撃により逆にピンチ必死だとか。
まあ、今回の場合は特にそんなことなかったんですけどね。
「果たしてエンドコンテンツとしてこの光景はいいのかしら?」
「ダメだニャ。修正されるだろうニャ」
「でもー、2周目以降は状態異常耐性が付与されたり、出てくるモンスターも種類が混合されるらしいわよー」
「どうせ通用するのは1周目だけなんだし、温かい目で見守ってあげましょう」
「っていうか今回なんで動画を撮ろうとか言い出したのか謎じゃな」
「アリスも詳しくは知らないですけど、イメージ戦略とか言っていたですよ」
「たぶんろくでもないことなんじゃろうなぁ……あの男、割と何でもそつなくこなすし真面目な時は本当に真面目に出来るんじゃが根っこがすちゃらかというか、ちゃらんぽらんというか……」
「まあ、村長だし」
「お兄ちゃんですから」
「ヒドイいわれようじゃな」
さて、射撃型は全て殲滅したから……あとは、近接型だけだな。
「……ライオン丸さん、ちょっと攻撃のガードに付き合って」
「? さっさと倒して次のウェーブに行かんのか?」
「いや、みょーんさんたちのクールタイム分の時間を稼ごうかなって……倒さなければ次のウェーブ始まらないでしょ」
「お前は鬼か!?」
「失敬な」
「そこまでするかー」
「でも確かに、倒しきらなければ次のウェーブが始まらないものね」
「時間制限を設けニャかった運営がわるいニャ」
「スキル使用可能になったら教えるですね」
「あれ? 意外と乗り気!?」
「ライオン丸、ワタシのスキルは広範囲だから再使用まで時間かかるし、あと頼んだわよー」
「なんじゃこの不条理な気持ちは……」
「まあ、頑張ろうぜ」
「村長のせいじゃからな」
というわけで、適当に近接型ゴーレムの相手をしながらみんなのクールタイム分の時間を稼ぐ。うっかり倒さないようにするってのも意外と難しいなぁ……コイツのHPが高いからこそできる芸当だな。
「運営もまさかこんな使われ方をすると思ってはおらんのじゃろうなぁ……」
「まあいいじゃないか。5周目からは時間制限がかかるようになるって話だし、こういう無茶なやり方が通用するのは最初の内だよ」
「それでもいいのかのう……」
「楽に攻略できるって言っても、前提条件は厳しいから大丈夫だと思うよ。今回使った部位破壊特化型の爆弾【バスターバンカー】も要求素材が凄くてね……また素材集めに走らないとなぁ」
「なんじゃその名前。元ネタがヤバそうな雰囲気があるんじゃが」
「実際ヤバいんじゃない? ちなみに、安価だけどその分効果が低い【ダッムダッム】ってのもある」
「運営なのか開発なのか知らんが、その名前になんでゴーサイン出したんじゃ!?」
「さぁ? それ言い出したらスコップやモップが武器として登場するのはどうなのよ。いや、スコップはまだ実際に使われたことあるからいいんだ。モップはなぜなんだい?」
「デッキブラシを武器にしておる男が何を言っておるんじゃ……っていうかモップはどこから出てきた?」
「最近、ちょっとしたライバルが現れてね……モップを使うアイツには負けられないんだ」
「ニッチ武器のパイオニアでも争っているんかの……至極どうでもいいが」
「奴には……あの男、『Oダイバー』にだけは負けられないんだ!」
「名前も村長の同類じゃな――え、パクリ? リスペクト?」
負けられない戦いがそこにある。
第2回PVPイベントももうすぐそこまで迫っているし、奴との決着をつけなければいけないんだ。
「っていうかその話初耳なんだけど、アリスちゃん知ってる?」
「あーあの人ですかね……この前野良パーティーで組んだ時にたまたま一緒になったですけど、クラシックの音楽家みたいな感じの見た目のプレイヤーさんで、ちょっと近寄りがたい人だったというか……」
「どんな感じの人だったのー?」
「……アリスを見ての笑い声はデュフフです」
「うわぁ」
「そして、その見た目で武器はモップなのかー」
「ちなみに職業は? いやリアルのじゃなくてゲーム内の」
「そんニャことわかっているニャよ」
「うん、ワタシも分かっているのよ。でも、思わず職務質問しなきゃって思ったけど」
「たしか、【狂戦士】でした」
「ほかの特徴は?」
「何か言ったみたいですけど、ピー音が入って聞こえなかったですよ。その後、他のプレイヤーたちからハリセンで叩かれていたですから詳しいことは分からずじまいです」
「ピー音入った時点でお察しね」
「最近、ハラスメント緩くニャったニャぁ……」
「誤報も多かったからー。あまり粘着質じゃないなら少しは見逃す方針になったわよー。逆セクハラも結構な件数だったしー」
「そうニャのニャ?」
「ショタ好きが暴走してねー」
「オイコラ」
「別に私じゃないわよー。私はショタもロリもおじじもおばばもお姉さんもお兄さんもお父さんもお母さんも先生も生徒もメイドもサンタもケモっ子もドラゴン娘だろうが妖怪娘だろうがナイトなイケメンだろうが何だろうが――等しく着せ替えるわー!」
「いつの間にこんなにダメな子になったのかしらねぇ」
「初めて会ったころはもっとまともな人だったはずですのに」
「曰く、VRMMOでは抑圧された本性がさらけ出されるという都市伝説もあるニャ」
「誰よそれ言い出したの」
「さぁ? あくまでも都市伝説だからニャ。結局のところ与太話ニャのだが……あながち間違いでもニャいかもしれニャいニャ」
「確かにねぇ……村長やアリスちゃんもそうだし」
「え、アリスもそっちの枠なんですか?」
何やら話が盛り上がっているようだが、そろそろクールタイムは終わらないのだろうか? さすがに倒しきらずに食い止めるのって疲れるんだけど……こっちに集中しないといけないから、アリスちゃんたちが何を話しているのかわからないし。
「おーい、まだスキル撃てない感じー?」
「あ、ごめん。もう大丈夫よー」
「倒しきったらすぐに次のウェーブの準備をするニャ」
「やっとか――よし、召喚獣一斉攻撃」
「チャージして、最大の一撃を叩き込む!」
近接攻撃型ゴーレムを倒し、次のウェーブに進む。
その後、残りのウェーブも同じように攻略したわけだが……アレだね。楽といえば楽だが、クールタイムの時間稼ぎは面倒だったかなぁ…………思ったより疲れた。
書籍版担当イラストレーターの落合雅 先生のpixivやツイッターなどでキャラ立ち絵など公開されていますので、ぜひそちらもどうぞ。
連休中は忙しいので、作者は再び力尽きるかもしないが、今章前半の魔王城編は何としてでも書き上げるから。
あ、後半は第2回PVPイベントです。