魔王(本気で挑まねば、命が危うい)
今回、衝突エフェクトを利用した爆風延長を使用したが……消費MPと戦闘時間、爆弾のコストを考えると実際のところゆるく攻略できるだけで普通に魔法で攻撃したほうが早いなぁということに気が付く。
いや、部位破壊可能箇所の多いゴーレムたちや魔法抵抗力の高い相手には有効ではあったのだけど、それ以外だとあまり意味のない戦法なんだよねという……あ、あとザコ殲滅には使えるのか。結構活用できる場所多い? いや、そのあたりは今後の要検証か…………これでも伊達に爆破のパイオニアと呼ばれていないのである。って口には出せないが。口に出した瞬間ヒャッハーズの同類とみなされてしまう。
「村長からすでに手遅れの波動をかんじるー」
「どんニャ波動ニャ」
「いつものアホなこと考えている顔ってことでしょ」
「失敬な」
「爆殺殺法で一方的にゴーレムたち殲滅したのはアホなことじゃないんかのう……」
「お兄ちゃん、自重しようとは言わないですけど…………あんまり自由にしすぎていると、後でしっぺ返しくるですよ」
「僕はね、やらないで後悔するよりやって後悔したいんだ」
「ダメじゃな。すでに手遅れじゃ」
「いつものことねー」
「ハァ……与太話もこれぐらいにして、魔王はどうやって攻略するのよ」
「そこなんだよなぁ……道中で何か思いつくかと思ったけど、何にも出てこないや」
一応準備はしてきていたのだが、事前情報と実際に魔王城を攻略してみた感じ……抵抗力が高いんだろうなと思う。
高レベル帯の魔法はかなり強力な威力を発揮するため使用するプレイヤーが数多い。特に上位の魔法職ならソロで高難易度ダンジョンをクリアするのも可能なほどだ。
その影響なのか、魔王城は抵抗力が高いモンスターが多かった。さすがにバランスを考えたのか通常抵抗力の数値が高くなると状態異常耐性も上がるのだが、魔王城のモンスターは状態異常にはかかりやすくなっている。魔王に通用するかは疑問だが。
「実際問題、魔法はあまり効かないみたいニャよ」
「やっぱりかぁ……どうするかなぁ」
「見た目はオーソドックスなデーモン型でー、動きが俊敏ー。あとー、パワーが高いよー」
頭と下半身が山羊で、筋骨隆々の体を持つ。そして背中にはコウモリのような翼をもっている。いわゆる、悪魔と聞いてイメージする見た目をしているのが今回戦う『魔王ディザイア』だ。
いや、たしか顔は山羊というよりはライオンのような感じだったか? ツノは生えているらしいが。
「魔法も多彩で、多くの属性攻撃を仕掛けてくるそうじゃ。動きのパターンも多彩で、読みが難しいとのことじゃが……どう料理するつもりなんじゃ?」
「うーん…………アリスちゃんにバフ盛りまくって突撃してもらう?」
「別にそれでもいいですけど、倒せるですかね?」
「無理だと思うわよ。その場合、他のみんなでアリスちゃんのサポートしてタイマンしてもらう、サンタの時みたいなやり口でしょ? 魔王ディザイアはタイマンで挑むとかなりの高精度でガードしてくるって攻略情報にあったわ。ステータスが高くても駄目みたいね……それに、少人数でのサポートで上がる能力上昇もたかが知れているし」
「だよなぁ……【村長】で来るべきだったかもなぁ。パッシブでバフが入るし、防御力貫通攻撃が使えるし」
「さすがに職業はギルドに行かニャいと変えられニャいからニャ。諦めて進むしかニャい」
「お兄ちゃん、結局どうするです?」
「うーん…………よし、さすがにここまで来たら攻略優先で。真面目だったのはここまでだ。作戦名は各自適当!」
(え、ここまで真面目なつもりだったんか?)
「村長ー、今までの行動のどこが真面目だったか言ってみなー」
「泡移動は使っていなかったぞ」
「そこだけなのー?」
「あと、エンシェントとガントレットを使った拳のキャッチボール連打も使っていないけど」
「…………いや、その技初耳なんじゃが、なんじゃそれ?」
あ、そういえばこれはみんなの前で使ったことないんだっけ。アリスちゃんも頭の上に? を浮かべている。
「単純に、ガントレットの強制ノックバックで殴り飛ばした敵をエンシェントで再び殴り飛ばして、またガントレットで殴り飛ばしてエンシェントで殴り飛ばしてって繰り返すだけの楽しい遊び」
「悪魔じゃ、本物の悪魔がここにおるぞ!?」
「なんでそんなに残酷な仕打ちが出来るの!?」
「いや、そこまで言うこと無いと思う」
「ハメ技とか修正喰らいそうニャけど、大丈夫だったのかニャ?」
「まあ、古代兵器を使っている関係上使える時間が短いし。エンシェントも消費MPが多くて長時間は使えないから、多用はできないんだけどね」
「多用できていたら即修正だったわよ」
「お兄ちゃん、あまり自由にしすぎていると、あとでしっぺ返し喰らうですよ」
「僕はね、やらないで後悔するよりやって後悔したいんだ」
「それさっきも聞いたわよ」
「天丼は基本だニャ」
「いや、芸人じゃないんじゃから」
「似たようなもんでしょー」
「ヒドイいわれようだ」
「まあ、いつものことだニャ」
「はいはい、いい加減にしないといつまでも次の階層に進めないからいい加減打ち切るわよ。で、マジな話どうやって攻略するのよ――いや、フリじゃないわよ。さっきも同じ話から与太話にすり替わったけど、フリじゃないからね」
「とは言っても本当に各自適当しか言いようがないから。あと、各々何か手があったら自由にやっていいから。裏技的攻略方法解禁で」
「すでに解禁していたんだけどニャ」
「…………よし、行くぞ!」
「あ、スルーした」
「分が悪いと思ってスルーしたんじゃな」
わかっているならそこはつっこまないで欲しかった。
しかし、いつまでもここで駄弁っていても仕方がないわけで……結局のところいつものことだが、行き当たりばったりで攻略することになるわけなのです。
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ぐだぐだした感じになりながらも屋上へ到達すると――あれ? 屋上のハズだが、室内のままだった。魔王戦は屋上になると聞いていたのだが……と、そこでガラスの割れるような音が鳴り響き、周囲の景色が切り替わる。キラキラとしたエフェクトを伴ってはいるが、フィールドの中央にいるモンスターはひどくまがまがしい気配を放っていた。
先の情報の通り、屋内だったフィールドは屋上へと切り替わっている。どうやら特殊演出が挟まる仕様だったらしい。
「アレが魔王だニャ」
「事前に調べていたとはいえ、ちょっとプレッシャーがあるわね」
「攻撃方法も多彩、行動パターンは読めない。さて、村長はどうするつもりじゃ?」
「なんで僕だけに聞くのかわからないけど、まずは小手調べからだね。みょーんさん、効果は薄そうだけどとりあえず魔法攻撃するよ!」
「そうね。駄目で元々で試すしかないわよね!」
みょーんさんと2人、魔法を放つ。みょーんさんの放った魔法は8回連続で落雷を発生させるもの。僕は召喚獣のスキルだが、これも魔法攻撃に分類される。今回はマーメイド、氷の女王、ジャックランタンで合体攻撃の類ではなく各自、バラバラに連続攻撃させた。どの属性が効果があるか様子見するためだが……
「ガードしたニャ!」
「HPバー全然削れていないのう」
「あまり効果はなさそうです」
「あー、やっぱりかー」
「ああもう、なんで魔法効きづらい相手ばかりなのよ!」
「しかたがニャいニャ。ガードして動きは止まるからそれ狙いで撃つしかニャい」
「くっそー!」
「あははー。みょーんさんの言葉遣いが悪くなってるー」
「ディントンさんは今回能天気だねー」
「欲しい素材があるわけでもないしー。私的には息抜きみたいなものだからねー」
「今回、この人が一番気楽なポジションじゃからな」
「ですね。しかもなんでかノリが軽いですし」
「んー? あれかなー。ほろ酔いだからー?」
「酒飲んでたのかよ!?」
「銀ギーさんの悲劇を忘れたですか!?」
「さすがにアレだけのことになるのって、銀ギーちゃんだけだろうしー。別に大丈夫だったしー」
「その割には欲望をさらけ出しておったの」
「ああ、いつもより口が軽いのか」
「プレイに支障はなさそうだし、別にいいでしょ――って、魔王動いているわよ! 無駄話は後で! なんかチャージしているから警戒!」
おおっとそうだった。
魔法の効果は薄そうだし、物理攻撃に切り替えていくべきなんだろうけど……うーん、あまり近寄りたくない。
紫色のすごくまがまがしい光が魔王の右手に集まっているし、絶対ヤバい攻撃だよ。
「ブモオオオ!!」
「いや、鳴き声は牛みたいなんじゃな――」
「ライオン丸さん!?」
「殴り飛ばされて一瞬で消し飛んだニャ!?」
「アレはチャージ系のスキルでー、『バニッシュメントブロウ』って名前だよー。チャージ後、高速で動いて殴り飛ばすスキルなのー。でー、喰らったら即死だってー」
予想の3倍は速かったんだけど!? え、無理。さすがに僕もあのスピードは避ける自信がない。
「っていうか僕が調べたときは即死攻撃とか書いてなかったぞ!?」
「正確には追放攻撃ー? 即死耐性関係なく喰らうって書いてあったー」
「そういうことは早めに言いなさいよ! ワタシ、即死耐性アクセサリーで固めてきたのよ!? 無駄だったじゃないのよ!」
「仕方がニャいから少し下がって急いで装備を変更するニャ! 村長、ライオン丸の蘇生と魔王の足止めをするニャ!」
「ガッテン!」
「アリスは足止めするですよ!」
なんだか攻略できるか不安になってきた……ヤバい。なりふり構っていられないかもしれない。




