(2)光の大神殿での結婚式~今日の主役は私ですよ…ヒカリちゃん~
静寂な空気が、空間を支配している。
エントランスの天井には、巨大なシャンデリア。
目の前にあるのは、幅約5メートル高さ約6メートルの巨大な2枚扉。この扉を潜れるのは『光の神子』だけだ。
今日の主役である私は、その両脇にある3メートル四方ほどの2枚扉から大聖堂の中に入る。
ここまでは、今日1日私の従者をしてくれている神官のメルシーさんから聴いている事だ。
おはようございます。酉松真由美と言います。
今から始まる結婚式。
これが終わると、晴れて私は、『マユミ=コウサカ』となり、タカユキさんのお嫁さんになります。
しかし、ビックリしました。
ヒカリちゃんの案なのでしょうが、まさか、光の大神殿出結婚式が出来るなんて夢にも思っていませんでした。地球で言えば、バチカン市国にあるサンピエトロ寺院で結婚式をするようなモノですよ。ヒカリちゃんからのサプライズは、本当に『すごい』の一言ですね。
これからの私に予定ですが、大扉の隣にある小さな扉から大聖堂に入り、入り口付近で待機しているタカヒロさんにエスコートしてもらいながら花道を歩き、光の神子とタカユキさんの待つ雛壇の下まで歩いて行くみたいです。タカヒロさんは、今日は私に『父親役』になってくれています。そう言えば、この先何人の父親役をする事になるんでしょうか?
私とタカユキさんは、光の神子の前で、愛を誓うらしいです。流石に雛壇の上には、昇る事は出来ないみたいです。1回は昇ってみたいのですが、まあ、規則なら仕方がないです。
ヒカリちゃん曰く、結婚式の信仰自体は、キリスト教式が少し変化した感じみたいです。
いろいろ結婚式が始まります。
扉が開かれ、メルシーさんからタカヒロさんに、私に右手が手渡されます。真っ白なウエディングドレスに身を包んだ私は、タカヒロさんにエスコートしてもらいながら花道をゆっくりと進みます。大聖堂に備え付けられているパイプオルガンからは、結婚式に使うあの有名な曲が奏でられています。
雛壇前まで来たら、私の隣を、タカユキさんに譲ったタカヒロさんは、親族席?に下がります。
ヒカリちゃんだけが雛壇に上がり、まず初めに参列者全員が『神礼(両手を胸の前で掌が水平になるように組み、その場に正座をして一度深くお辞儀をする。その後、組んだ手をそのままに立ち上がり、そのまま深く一礼する。その後は、また正座をして深くお辞儀をする。これを5回繰り返えす)』をします。
ヒカリちゃんが雛壇下に戻ってきて、神父みたいな口上を述べます。
「…新郎タカユキ=コウサカ。
汝は、富める時も、貧しい時も、楽しい時も、苦しい時も、喜びを分かち合い、悲しみを慰め、新婦マユミ=トリマツを妻とし、その身が死する時まで愛することを、光龍神フレクシアの御前で宣誓するか?」
「はい、宣誓します。」
「新婦マユミ=トリマツ。
汝は、富める時も、貧しい時も、楽しい時も、苦しい時も、喜びを分かち合い、悲しみを慰め、新婦タカユキ=コウサカを夫とし、その身が死する時まで愛することを、光龍神フレクシアの御前で宣誓するか?」
「はい、宣誓します。」
「では、宣誓の証として、『光の宝玉』に、互いの魔力を流しなさい。」
私とタカユキさんは、ヒカリちゃんの前に置かれている2つの宝玉に、それぞれの魔力を流すます。魔力を受け入れた宝玉は、眩しい光を放ち、やがて銀色の指輪の形に変化しました。龍が体を丸くして、指輪の形になっています。
「この指輪は、『契約の指輪』と言います。光龍神フレクシアからの誓いの証として、神の御前で結婚の制約をした際に下賜されるものです。それぞれの左手薬指に填めてください。」
この辺は地球と同じなんですが、填める指輪は、神様からの贈り物なんですか!
私の魔力が籠った指輪は、タカユキさんの左手薬指に、タカユキさんの魔力が籠った指輪は、私の左手薬指に、それぞれ填めていきます。
「では最後に、2人の愛の証明をするため、神の御前で口づけをしてください。」
私は、茹蛸のように真っ赤になっていくのが分かりました。そりゃあ、結婚式において、最大の見せ場でしょうけど。見るのはとても楽しかったけれど、自分がやるとなるとこれは結構恥ずかしいですね。
覚悟を決めて、お互いの唇を合わせました。
結婚式最大の口づけが終わると、ヒカリちゃんが雛壇に上り、『神礼』をします。参列者もそれに倣い、『神礼』をします。
「これで、結婚式は終了しました。」
次は、光の神子の屋敷に移動して披露宴らしいです。
会場のホールには、サトミさんが腕によりをかけてくくった料理の山が鎮座していました。その中心には、何やら見覚えのあるシルエットがあります。言わずと知れた『ウエディングケーキ』です。それも、7段重ねのタワー型です。頂上には何やら精巧な砂糖細工が鎮座しておりました。料理はとてもおいしかったので、これはこれでアリだなあと思っていました。
その夜は、元ヒカリちゃんが使っていた部屋で、初めての夜を堪能しました。…とても激しい夜でした。何回もやりましたよ。
翌日、私とタカユキさんは、ヒカリちゃんとの約束通り、王都ドンドリアに向けて旅立ちしました。ヒカリちゃんの手で。
私とタカユキさんは、20日後から始動する『サギミヤ商会』ロンドリア支店の管理者として、ロンドリアで暮らすことになりました。ヒカリちゃんが用意した建物は、ロンドリアの目抜き通りに面したレンガ風な造りをした洒落た3階建ての建物です。中は、食堂兼宿屋がメインで、その他に、『サギミヤ輸送店』の荷物預り所や、商会の事務所などがある表通りに面した建物と、私とタカユキさんの新居、タカコさんなどの従業員宿舎が別棟で存在しています。結構大きく、2人では管理することができないため、タカコさんが後で来るみたいです。
この建物は、私とタカユキさんにすべて任されており、建物の管理自体は、タカコさんに任せてもいいそうです。私とタカユキさんは、旅館兼食堂『ロンドリア鷺宮亭』
の管理・運営だけを任される感じで話が纏まっています。料理の方は、テラフォーリアに来て約1年の間、ヒカリちゃんとサトミさんという、『料理バカコンビ』の2人にしごかれて、プロ顔負けの腕前になってしまっています。
また、カランの本店とは、『転移門』で結ばれており、空間属性は持っているのですが、魔力があまりない私でも、簡単にカランとロンドリア、果ては、もう1つの支店があるダーカルまで行き来することができとっても便利です。今はまだ忙しくて、休暇を取れる状態ではないのですが、新婚旅行がてら行ってみたいと思っています。
そして2月1日、新たに従業員も雇い、いよいよ『サギミヤ商会』ロンドリア支店の歴史が幕を開けました。すでに私に作る料理は、ロンドリアで有名になっており、料理屋のみ10日ほど前倒しで開店していたのですが、お昼時や夕食時などは、長蛇の列になっています。これは、私が『料理の達人』でもある光の神子と水の神子の愛弟子であるというのが、口コミで広がってしまっていたからです。口コミは、本当に恐ろしいですね。そういえば、地球においても、『一番の宣伝は口コミである』と言っていた人がいたような。
この時私をはじめ、サギミヤ商会の関係者は、サギミヤ商会がコロラド王国で一番大きな商会になるなどとは、夢にも思っていませんでした。




