第47話:舌を入れる等もっての外
2人の全裸の少女に抱きしめられて、カノンの体温もだいぶ安定してきた。
これならもう、カノンの体調も心配ないだろう。
だからと言って、少女たちがベッドから離れる事は無い。
自分がベッドから離れる事は、全裸のカノンと全裸の少女を1つのベッドに残す事になってしまうからだ。
自分の全てはカノンの物だが、カノンの全ては自分の物ではない。それを痛感してしまう事になるのが分かっているので、ベッドから動けないのである。
それにカノンの肌に触れていられる事は、とても心地が良かった。
カノンの左足にはコスモスが足を絡め、カノンの右足にはアネモネが足を絡めている。
その絡めた足同士、コスモスとアネモネの足も絡みあって、それも心地が良い。
早くに母と別れ身内はパンジーしか持たないコスモスと、その目のせいで親からさえ直接的な愛情をもらえなかったアネモネは、どちらもスキンシップに飢えていた。
カノンと言う絶対的な敬愛と性愛の対象を得て、肌の触れ合いの飢えを少しでも満たしたいと切望していたのだ。
(・・・直接カノン様に触れたい)
右腕に包帯を巻かれたままのアネモネの思考が、肌を触れ合うコスモスに届く。
(奥様、包帯を解きます)
コスモスもテレパスで返して、アネモネの背中に回した左腕を、アネモネの右手の包帯に延ばす。
(奥様など、冗談でも辞めて下さい。コスモス様)
右手の包帯を解いてもらいながら、アネモネが小さく抗議する。
(コスモス様。私はカノン様に買われた奴隷です。奥様にふさわしいのはコスモス様です)
(いえ、私も奴隷身分なのです。奥様と呼ばれても困ってしまいます)
(そうなのですか?)
(はい。そうなのです)
(...)
(...)
(では、今までの様にアネモネとお呼び下さい)
(はい、私の事もコスモスと呼んで下さい)
(わかりました、コスモス。私もカノン様に刻印を頂きましたので、これからよろしくお願いします)
(アネモネ。こちらこそ、よろしくお願いしますね)
(はい)
(では、アネモネ。私達2人にとって、きっと心痛める事になるので最初にお話しておいた方がいいでしょう)
(心痛める事...カノン様に何か大変な事がお有りなのでしょうか?)
(はい)
(どの様な事ですか?)
(はい、実はカノン様は私達以外にもう1人奴隷を購入し、その奴隷とも誠実の刻印・種族の刻印を刻まれる予定なのです)
(まぁ...何故?と、お聞きしても良いですか?)
(はい。私もカノン様も、満足にカイン王国語の読み書きが出来ません)
(はい)
(その為、知識層の奴隷を購入する予定なのです)
(奴隷に読み書きをさせると言う事でしょうか?)
(はい。前にもお話していた通り、アネモネを購入することになったのは貴女の命が危なかったためで、本来であればカイン王国語の読み書きの出来る奴隷を購入するはずだったのです)
(読み書きなら、私が出来ますが...)
(え?)
(私、カイン王国語も読み書きが出来ます)
(まぁ...)
(はい、大丈夫です)
(で、では、新たに読み書きの出来る奴隷の購入の必要は無いと?)
(はい)
(そして、アネモネはカノン様が解放なさると言っても同行してくれると?)
(勿論です。私はもうカノン様の物です。先ほど刻印も頂きました)
(あぁ...)
コスモスは思った。
自分ごときがカノン様の愛情を独占できるとは最初から思ってもいない。そもそも国に帰れたら、コスモスとではなく婚約者と結婚するとはっきり言われていた位だ。だからカノン様の1番になれないのは構わない。
でも、そばに居る誰かにカノン様の愛情を独占される事は、おそらく耐えられないだろう。かと言って、今更カノン様と別々の人生など考えられない。
そもそも自分の全てははカノン様の物だから、カノン様が「消えろ」と言わない限りはお側に仕えるつもりだ。だからこそ、先ほどのアネモネの「初めての時」を、泣き出したくてもぎりぎりまで立ち会ったのだ。
そして、今ここに居る少女アネモネは、自分と同じく、自分の命よりカノンの命を大切だと考えている。テレパス同士で裸の肌を重ねているのだから誤魔化しようが無い。
アネモネとなら、うまくやっていけるのではないだろうか?
そしてアネモネが居れば、新たな奴隷を購入しなくても済むという。
奴隷購入に積極的でなかったカノン様にとっても、自分にとっても、アネモネが一緒に居てくれるのがとても良い事に思えてくる。
アネモネも思った。
経験はなかったとは言え、自分は様々な町人の懺悔を聞いてきた耳年増だ。カノン様に寄り添うコスモスの態度で、2人がどの様な関係なのかは想像が付く。
それなのに、生魔宝を発動させる為とは言え、コスモスはカノン様を自分に譲ってくれた。それだけでなく、私の「始めての時」には、部屋を出て行きカノン様と2人だけにしてくれた。
自分は端から男性に愛して貰える等とは思ってもいなかったが、1度カノン様に抱かれてしまうと、その温もりを失うのは苦しすぎる。
自分がカノン様の愛情を独占できるだ等と大それた考えは持たないが、それでも少し位はお裾分けを頂きたいと願ってしまう。
そして目の前に居るコスモスと言う少女は、必要とあらばカノン様の愛情を分け与えるという選択をしてくれるのだ。
カノン様とコスモスと言うカップルの隙間に、コスモスなら私の居場所を作ってくれるのかもしれない。
(アネモネ)
(はい、コスモス)
(私はアネモネと上手くやって行きたいと思っています)
(はい。私もです)
(よかった、嬉しいです)
(ではコスモス、是非1つ教えて下さい)
(何でしょう?)
(先ほど、私の「始めての時」を迎える前に、カノン様がとてもお喜びになった技がありました。あれを教えて欲しいのです)
(...度が過ぎるのは淑女の嗜みに欠ける行為で、舌を入れる等もっての外なのではないのですか?)
(...仕方がありません。カノン様をお喜びさせる為ですから)
(...そうですか、そうですね。カノン様の為なら仕方ありませんね)
そうして裸のカノンの身体を挟んで、二人の少女はカノンの頭越しに唇を重ねたのであった。
舌の動きを舌で伝え、技を教えるのである。
これも全てはカノンの為である、舌を入れるのも仕方のない事なのだ。




