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(旧) 逃亡奴隷少女、拾いました……  作者: しゅんかしゅうとう
第1章:ウルスドの森
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第19話:白の魔宝陣

少し時系列を整理してみる。


ボクとコスモスが合流して4日目の朝、つまりはボク達が針葉樹の森の奥で初めて結ばれた晩の翌朝の事。


行商人ギースは、カールスの町とクーニエル村のどちらへも馬車1日の地点にある休憩所で1泊した翌朝、本来の目的地カールスの町へ向かわずにロイド男爵のいるクーニエル村に引き返した。

ボク等と言えば、おはようのキスをして保存食の朝食を取った。そして生活を豊かにする桶や食器類を作り、その後カーキリの幼虫を採取、少々早い昼食を取っていた。


太陽が天中に昇った時、ギースは前日にボク等を見かけた場所、街道の焚き火跡を通過し、確かに昨日誰かがそこに居た事を確認する。

同じころ、ボク等はカーキリ虫の幼虫採集と、ソレを加熱しての保存食作りに精を出していた。


その日の夕方、行商人ギースはクーニエル村に到着し、路中の発見ごとをロイド男爵に御注進する。

ボク等はコスモスの習得した風属性の飛翔魔宝で、徒歩1日半~2日の距離をわずか数時間で一気に踏破。コスモスはまだまだ跳べそうで、彼女が持つ魔宝量に期待してしまう。

休憩所に有った家畜用岩塩を1欠片だけもらい、水場からは充分な量の水、湿地に自生していた野生のクレソンとセリを大量に入手し、その夜の寝屋にと針葉樹の森の奥へと向かった。


 ===


寝屋に針葉樹林を選ぶのにもわけがあった。

街道からアルス川の間に広がる広葉樹林は地面が湿っており、低木や下生えも多く歩きにくい。

又、針葉樹に比べ餌が豊富な広葉樹林は虫や動物が多く、寝ずの番を置く余裕の無いボク達には夜を過ごし辛い場所なのだ。


その為、食料調達は主に広葉樹林側、休憩や食事、睡眠で身を隠すのは針葉樹側と言うのがセオリーになりつつあった。

後は人を襲うというオルフやベアに出会わないよう祈るだけだ。


その日の夕食は豪華だった。

カップに刻んだネークの干し肉と採取したフレッシュなセリとクレソンを入れ、水と塩少々を入れてコスモスの魔宝で加熱。

たっぷり干し肉と香草スープの出来上がりだ。

皿の上には、火は通してあるので暖めただけの代用エビ(カーキリの幼虫の姿焼き)とユリネにそれぞれ塩を振ったもの。

小さなカップにはタンポポの葉を焙じて作った薄塩味のタンポポ茶。


食器と塩のおかげで、満足のいくきちんとした料理になった。

温かい料理を堪能し、お茶を楽しんだ後、食事に使ったコップや皿を洗い、コスモスの魔宝で乾燥させる。

そして食器類、食料類を全てネーク皮のショルダーパックにしまい終わると、ボクはイソイソとローブを脱ぎ、焚き火側の地面が平らで柔らかい場所を選んでローブを敷いた。

ローブの左内ポケット『心臓のドア』から魔宝の皮袋『強欲の胃袋ストマック』を出して、桶に水を注ぐ。『強欲の胃袋』はこの後も明日の朝も使うので、出したままにする。

コスモスは、最近はタオル代わりに使うことの多くなったシルクのネッカチーフを首から外し、ボクに背中をこすってもらうと気持ちいいと言う大き目の麻のハギレも用意した。


完全に日が落ちる前、少しは明るさが残って気温も冷え切る前に、コスモスが魔宝で桶の水を湯に変え、その湯でボクの頭を洗ってくれる。

汚れた湯を換え、今度はボクがコスモスの頭を洗ってあげる。大きな幸せを感じる。

コスモスの魔宝の温風で2人の髪の毛を乾かすと、ボクとコスモスは全ての服を脱ぐ。


新しくした湯にシルクのネッカチーフを浸け、コスモスはボクの体の全部を清めてくれる。

湯を改め、今度はボクがコスモスの体を清める。魔宝布効果のおかげで、コスモスの体にムチで付けられた傷は4日目で完治している。体を洗った時に痛がられる事も無い。

コスモスが喜ぶので、背中だけは繊維の硬い麻布でしっかり擦ってあげる。その他の場所は、柔らかなシルクで全身くまなく丁寧に磨く。

今夜のコスモスの体は『新月の4日目』なので、清浄なお湯で中の方まで丁寧に洗って血の穢れを清める。指で中に触れると熱くなっているのが分かる。昨日の裂傷で少し腫れているのかも知れない。

午後に使った当て布も、このタイミングで一緒に洗う。

コスモスの魔宝の温風で2人の体を乾かし、当て布と2枚の洗い布を乾かしてきちんとしまう。


すっかり日が落ちると、星明りと揺らめく焚き火の炎だけがボク等2人を包む光の全てとなった。

食事も終わった、身も清めた。

2人裸でローブに包まり、これからは恋人の時間が始まる。

心の1部が解け合い混ざり合った2人だから、互いにとり何が良くて何が苦しいか、触れた肌から伝わってくる。


「コスモス、昨夜はコスモスのおかげで初めての夜を過ごせました」


「はい、カノン様」


「今夜はボクの国の魔宝師に伝わる、婚礼の夜の作法をお願いします」


「婚礼の夜・・・で、御座いますか。もったいないお言葉です」


「夫と成る者、妻と成る者が共に魔宝石を身にまとい、結ばれます。すると、お互いの石が共鳴し合い、愛し合う2人の魔宝力を高めると言われています」


「カノン様、コスモスは幸せです。お借りしたルビーを右の中指に、サファイヤを左の中指に、精一杯御奉仕させて頂きます」


「ボクも今は魔宝が使えないけど、コスモスを迎えるに相応しい石、ボクの国の魔宝師にとっての最高装備を使わせてもらいます。聖のネックレス、右と左の手にそれぞれ指環3石、両耳に耳飾です」


「あぁ、私ごときのためにそれ程の魔宝石を。全身全霊を込めお尽くし致します、カノン様」


訓練されてきたので様々なテクニックを持っては居るが、コスモスは決して慣れている訳ではない。

初めてボクを受け入れたのが昨夜の事だから、破られ血を流したそこはまだ腫れて傷みも残っている。


だが知識が無いコスモスにとって、子に恵まれるという『満月の7日間』の裏にあたる『新月の5日間』は、一番安全だと思えるのだと言う。種付け無しでならボクを受け入れられる好機と考えてしまうのだと。

ボクも、何が安全日で何が危険日かはっきり言えないし、そもそも基礎体温を測ってないのだから高体温期も何も分からない。情報が無い今は、コスモスの考えに同調してしまう。

そしてコスモスの体は今もう新月の4日目、そう考えると受け入れられる時間はあまり残されていないようにも思える。

そのため体に痛みが残っていても、ボクを受け入れるようコスモスは積極的になってしまうのだった。


コスモスは自分の体の色々な所を色々に使って、ボクを喜ばせようとしてくれた。

ボクの体は喜んだが、でも、ボクの心が本当に望んでいたのは少し違っていた。


「コスモス」


「はい」


「もう、ムリに奉仕しようとしなくていいです」


「はい」


「奉仕は今後、コスモスと結ばれる事が出来ない日の為に残しておいてください」


「はい」


「今は静かに、2人で1つに繋がって抱き合っていたい・・・」


「あぁ・・カノン様」


下になったコスモスが腰を浮かせ、繋がった場所を圧迫してきた。


「コスモス、動かないで。なるべく長い間、貴方と繋がっていたいのです」


繋がったまま、コスモスを抱きしめる。

ボクの背中に回したコスモスの腕が、ボクを強く抱きしめる。

繋がったままキスをする。ゆっくりと、唇と舌の接触を楽しむキスをする。


ボクの中にコスモスが入り込んでくる。

コスモスの中に、ボクが入り込んでいく。


その先に、見える。コスモスを通して精霊様への道が1つ見える。

その道は聖の属性の道だ。

首から提げるダイヤのネックレスが光を帯びてくる。

もう、ボクはこの先の全てを確信していた。


「聖の精霊よ、我に力を貸し与えよ」

ボクの体とコスモスの体に挟まれた空間に、白の魔宝陣が展開する。


「かの者の火の戒めを払いたまえ」

その瞬間、魔宝陣は一気に大きく広がり夜の闇に消えていった。


ボクはコスモスの裸の右肩を指で確かめる。

うん、ボクの言霊は、コスモスと繋がっていればコスモスを通してこの世界の精霊様に届くんだ。


体中の全てを密着させたまま、コスモスがボクに話した。

「カノン様、私を通して精霊様に御言葉を届けられたのですね」


「はい、コスモス」


「カノン様の魔宝は不思議な感触でした。白い光が体を通り過ぎていきました」


コスモスが話す度に触れ合った唇や舌に新しい刺激が加わる。

繋がりあって、触れ合って、体を動かさず、ただそれだけなのに高まってくる。


「カノン様・・・」


「コスモス、そろそろ約束を守って下さい」


「約束、で御座いますか?」


「・・・はい、次に肌を重ねる時、と、約束したはずです。忘れましたか?」


「忘れるはずなど有りません。畏れ多くて言えなかったのです」


「では、ボクからもう一度お願いします。言ってくれますね」


「・・・はい・・・ディア・カノン(親愛なるカノン)」


ボクは唇を離し、コスモスの耳元に顔をうずめてそれに答えた。

「ありがとう、マイ・ディア(愛しい人)」


直後、コスモスの体が痙攣けいれんした。様に感じた。

ボクの背中に回された手が信じられないほどの力でボクを抱きしめ、ボクの腰周りにまわされたコスモスの足がボクを絞り上げ、コスモスと繋がったその場所が信じられないくらい強い力で締め付け収縮した。


身長も体重も筋力もコスモスに劣るボクは何も抗えず、コスモスの体の中に終わってしまった。

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