第16話:御奉仕
繋いだ手から伝わるコスモスの突飛な反応に、ボクは驚いてしまった。
・・コスモスが男性のはず有りません。貴方の体は治療の為、全部見て知っています。逆にコスモスは私を何だと思っているのですか?・・
(カノン様は精髪姫です!、女性です!!)
やはり、ココに恐れていた誤解が有ったのか!
女顔のコンプレックスをこの世界でも抱える事になりそうだ。
・・何度も言いますが、私は精髪姫ではありません、男性です・・
(ええぇっ!?、精髪姫は男性なのですか!?)
・・だから私は姫ではありません、男性なのです・・
(でも白いお肌に似合う、美しい紅を唇にさしていらっしゃいますよね?)
・・この瞳と同じです、唇の赤も体質なのです。紅はさしてません!、コスモスに何度キスしても、あなたの体に紅は移らなかったでしょう?・・
真っ赤になったボクの反論に、コスモスもほほを赤らめた。
(でも私の手当て、昼用とか夜用とか詳しく教えて下さりましたよね?)
・・経験は無いと言ったじゃないですか。その手の教育を受けていただけです・・
(カノン様はお体も小さいので、”まだ経験は無い”のだと思ってました)
(それに、その体のラインの出る銀のドレス。男性なら着ません)
・・これはドレスではなくロングTシャツです。私の国では男性も女性も着ます。肌に近い程魔宝布の効果を得やすいので、体のラインが出るデザインなのです。コスモスに貸したベストやレギンスも、体に密着するデザインですよ・・
(では・・)
(では・・・)
(カノン様は本当に男性なのでいらっしゃいますか?)
・・はい、男性です・・
「あぁ・・」の様な声を発して、コスモスはボクの手を離し、両手で顔を覆ってうずくまった。どうやら泣かせてしまったようだ。
治療行為とは言え、ボクはコスモスの体の全てを見てしまっているし、体の全てを触ってしまっているし、昨夜はキスした挙句に裸の胸に直接手で触れている。
コスモスはボクの事を女だと思ったから受け入れてくれてたけど、男に体を見られたり触れられたりしたと気が付いたのだ。恥ずかしくて悔しくて我慢ならないのかもしれない。
でもボクはコスモスを失うわけにはいかない。
この世界で生きていくのにコスモスが必要だからではない。
もう認めよう、ボクがコスモスに惹かれているから彼女を失いたくないんだ。
これ以上嫌われないよう、体力は使うが接触無しの通常テレパスでコスモスに話しかける。
・・結果的にだます様な形になってしまいました、コスモス。許して頂けませんか?・・
コスモスはピクッと反応し、そして当たり前のように通常テレパスを返してきた。無意識なのかもしれないがESPエネルギーの半分をコスモスが負担してくれている。
(カノン様、お体にさわります。どうか私に触れてお話下さい)
恐る恐る、ボクは彼女の肩に手を置く。
・・許していただけるのですか?・・
(初めから怒ってなどおりません。嬉しくて、そして悲しいのです)
・・嬉しくて、悲しい?・・
(はい。『刻印の上書き』から、私はカノン様の物で御座います。私の体は女なので、カノン様が男性であればお慰めできます。それが嬉しいのです)
(でも奴隷法上、私はロイド男爵の所有物です。私の産む子も同様です。カノン様の御子様を奴隷になど出来ません、だから・・・私がカノン様に御奉仕はできても、御種は頂けません。それが悲しいのです)
・・コスモス・・
愛おしくなって、コスモスを後ろから抱きしめた。
コスモスはじっと考えている。
(カノン様)
・・何でしょう?・・
(今日、これから2回跳ぶ事はできますか?)
・・はい、きっと大丈夫です・・
(まだ陽が落ちきる前に、針葉樹の森の奥に、今夜の寝屋を探しに行きましょう)
・・はい・・
(一夜を過ごすに安全な場所を見つけたら、焚き火を起こし、この場所へ跳んで戻ります)
・・はい・・
(戻ったら湯を沸かし、カノン様のお体を清めさせて頂きます)
・・はい・・
(私の体は穢れた新月の3日ですので・・・)
・・新月?・・
(女の性を月に例えるのです。血に穢れた新月の5日間、子に恵まれる満月の7日間と)
あぁ、危険日とか安全日とか生理日とか、そういうやつか。教育を受けた記憶はある。
確か妊娠し易い期間と、そうでない期間って考えるんだよな。厳密な意味では絶対妊娠しない日は無いって教わった。
それと生理中は清潔さが必要だから避けたほうが良いって、何を避けるんだろう?
(血に穢れた体で申し訳ありませんが、私の体も清めてください。そうすれば・・)
・・すれば?・・
(お慰め出来ます。新月は「子に恵まれる満月」の裏です。カノン様を受け入れられます。でも、種付けはダメです。満足頂けないその分は、精一杯別の形で御奉仕致します)
ボクの顔は真っ赤だった。
多分コスモスの顔も真っ赤だったと思う。
照れくさくて顔を見れなかった。
ボク達は手を繋ぎ、人目に付く可能性の有る街道脇の水場を離れ、針葉樹の森の奥へ今夜の寝屋を探しに行った。
その姿は、初心者カップルがシティホテルを求めさまよう様子に似ていたかもしれない。




