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終戦

フィールドに散らばっている木々の破片はまばらに。

抜け落ちた草花はそこらじゅうに散らばり、落ちていた。

その数から分かる事。


ゴーレムが攻撃に困ることはないということだ。


ゴーレムは何も植物を地面から生やす訳ではなく、散らばっている植物等を地面に植えて急成長。化け植物にしているのだ。

とは言え厄介なのは変わらない。

ここは森のフィールド。植物など馬鹿みたいにある。ゴーレムにとっては宝の山であろう。


「頼みたいこと?」


場所は移り、ゴーレムから数キロ離れた遠方。

詳細を言えば僕と美麗が隠れるように身を潜めている草の後ろ。


「あぁ。頼みたいことがある。美麗にしか出来ない事だ。」


僕は言う。真剣に。


「私にしか出来ない事…」


美麗が始めて此方に顔を向ける。目と目が合わさってしまった。のは、一瞬。


「あっ、ちょと待って。」


前線で闘う一人。黒谷のHPが黄色のゲージ(半分)にまで減っていたのだ。


「キャリー アウメンタル。」


美麗が杖を緑に光らせる。黒谷のHPがみるみると元に戻り緑に達した。


「で、頼みたいことって?」


口に薬草を入れて再度、僕との話に戻す。

さっき消費したMPを回復しているのだ。


「あぁ。美麗、まだあの大魔法撃てるか?」

「大魔法?あのってことはビローウォッシュの事?」

首と杖を可愛く傾け美麗は察した考えを僕に言う。


「そうだよ。それ。撃てるだけのMPはまだ大丈夫か?」


前線で戦う三人がヤバいことくらい分かっていた。だからついつい早口になってしまう。


「えっ、うん。一発だけなら…多分。」

歯切れの悪い返答ではあったが今はその答えだけで十分だった。


「でも、そんなんじゃあの化け物には勝てないよ。そりゃぁ、最後の足掻きとしては最適だけど…。」


撃てるは撃てるが今、この状況でそれは得策とは言えない。それが美麗は分かっている。だから、あまり乗り気ではないのだ。


「分かってる。だが、このままやられては回復するの繰り返しをしても結果は見えている。それは美麗も分かるだろ?」


「それは…。」


美麗は杖を両手で持ち、視線を逸らす。その時間が勿体なくも感じるが本人の受託が何より必要。美麗がやる気になってくれるまで待つしかない。

チラリとその時間をまぎらわす為、前線で戦う三人の戦士達に視線を向ける。


「チッ。」


思わず舌打ちをしてしまう。流。明さん。黒谷。のHP・MPが共に半分を切っていた。本来なら今、段階で回復しなければならない。

俺達より少し離れた所で自分のバディー。

ライトニングバードに指示している飛那さんは自分で回復薬を持ってるからいいとして三人はそれを一つも持っていない。それは魔法使い。美麗を信用しているからだ。だから三人はHP・MPを気にしない。HP・MPを見ない。そりゃぁ、赤ゲージにまでなれば気付くだろうが。それになったらほぼアウトだ。


飛那さんも持っていると言ったがそれも恐らくはもう無いか、一・二個だろう。

状況は一刻と悪化していくばかり。


えーい。仕方がない!


僕は頭を手でぐじゃぐじゃと掻き、強攻手段に出ることにした。


強攻手段。


つまりは説得だ。


ガシッ。


美麗の杖を持つ両手に僕の両手を重ねる。


「美麗。お前の気持ちは分かる。だが、僕を少しでいい。信じてくれ。」


どっかの漫画かアニメで主人公がこんなような事をやっていた。ような気がする。モブで彼女を言いくるめないなら主人公の行動に出るしかない。

まだ僕、モブだけど…。


「そんな‥。そんな事、言われたら。断る理由がないじゃない‥。」


美麗は又も視線を逸らすがそれはさっきまでの躊躇いではない。その証拠に頬が少し赤く染まっている。

「ありがとう。なら、時間がない。悪いが、皆が必要だ。一度、呼ぶから指示はそれから伝える。」


礼を一言。だが、時間がない。口早に美麗に声を通す。


「分かったわ。でも、皆を呼ぶってどうやって?」


美麗が疑問に思うのも無理はない。例えどんなに大きな声で叫んでも恐らくは皆には届かない。目前に強敵がいるのに他に気を配ってられる訳がない。


「それは任せな。」


僕はニヤリと口を緩めて不敵に笑うと手に持った弓を構えた。

そして。一言。


「ルーセンテェザ。」


引っかけた矢に光が点ると僕はそれを静かに射た。


バシュッ。と言う音を鳴らし風を切らんとばかりに飛来する矢は巨体の化け物へ容赦なく向かった。

勿論それはゴーレムにダメージを与える為に射たわけではない。第一、そのつもりならわざわざ矢を光らせ目立たせるようなことはしない。どうせ岩か植物等で防ぐのだろう。

なら、何故に僕はそんなMPを消費してまで矢を光らせたのか?

それは無論、気付かせる為だ。それはゴーレムだけではなく皆に。


☆☆☆☆☆☆☆☆


僕、美麗、飛那さん、流、黒谷、明さん。と全員が一旦、草陰に隠れるように集まった。だが、その時間はそんなに取ってはならないことは皆分かっている筈だ。


「何だ。俺達を呼んで。大した用じゃなかったらぶっ殺すぞ。」


おぉ。こわっ。黒谷のそんな台詞に身を震わせるも今はそれに答えてやる時間は無い。


「おい。黒谷。苛立つのも分かるけど少しは仲間を信用しろよ。だろ健生?」


流が俺に顔を向けてそう言う。正直、そうやって皆をまとめれるこのスキルは羨望してしまう。例えそれが流自身の本来の性格じゃなくてもだ。


「あぁ。ありがとう流。」


一つ頷きこの場を温和に戻してくれた流に礼を言う。そして、皆に向き直る。


「ごめん。皆には説明してる暇はないんだけど僕が言う事をやってくれるか?」


手と手を合わせて頼む。時間がないんだ。ゴーレムが僕達に気付き襲ってくるのは時間の問題。この頼みが叶わなければ僕の全てのプライドを捨ててでも頼みこむしかない。



数秒待った。皆の微妙な反応と表情は変わらない。


仕方無い。


そう思い、片膝を地面に付けようとしたところ。


「仕方無い。確かにこのままの戦いではじり貧一方じゃ。ボウズの案が何かは知らんがそれに賭けるしかないな。」


まずそう言ってくれたのは明さん。難しい顔から気前のいい笑みすら僕に向けてくれた。


「まぁ。おっさんの言い分は一理ある。仕方無いからお前の指示に従ってやる。」


次にそう言ったのは黒谷。相変わらずいい感じはしないが了承してくれた。


「わっ、私でいいなら力になります。」


飛那さんも頑張って声を絞り上げてくれた。肩に乗るライトニングバードはグッタリとしているが頑張って貰おう。


「うっし。決まったな。じゃぁ、健生。早速指示を頼む。」


流のその言葉に頷き僕はこの作戦が上手くいくようにと願い口を開いた。


「じゃぁ、早速だが美麗。頼む。」

「分かった。」


頷き美麗は杖を高々と上げて天に叫んだ。


「ビローウォッシュ。」


すると杖は先刻同様、紫色に染まる。天は紫色に染まる。


ゴゴゴ。


ゴーレムはやっと異変に気付き次いでか僕達にも気付いた。


「今だ。明さん。黒谷はゴーレムの気を引いて。」


「任せろ。」

「フン。」


それぞれに言葉を残すと二人は草陰から飛び出しゴーレムの元へと掛けて行った。

それを待っていたのかゴーレムの攻撃。植物らの猛威が二人を襲う。

だが、それも束の間。


「明さんは上。黒谷は下方からゴーレムに攻撃して下さい。飛那さん。今の内にライトニングバードを大きくして。」


「「なっ!?」」


二人は一瞬、そう言葉を漏らす。

が、それも一瞬。二人は健生の言うがままに行動した。


バッ。

ダッ。


二人の足音。それがきっかけだったか空から紫色の炎の雨が植物等を襲った。

当のゴーレムにはその炎は生成した岩の壁で防がれるが地に生える植物等は全焼している。


「オンダ シャイング。」


明さんが上から叫び拳から赤色をした波動みたいのを飛ばす。


「フルソーリネア。」


下 からは黒谷が槍を突きだし青色をしたビームみたいなものを出す。

そんな二人の攻撃をゴーレムは瞬時に岩の壁を下から上に生成して防ぐ。


ドカンッ。


だが、その岩の壁は二人の今出せる全力の技により破壊された。


「準備はいいか。主役(メイン)はやっぱ主人公が担わないとな。」


僕は弓を構えそう言う。


「あぁ。俺はお前を信じるよ。」


でかくなったライトニングバードの背中の上、流は僕にそう返答した。


「あぁ。ありがとう流。」


言うが早いか射つが早いか僕は一本の矢を外す事なく射た。


「行ってタブッ。」


そして飛那さんはそれを追うような形でライトニングバードに指示を送る。


バサッ。


羽音をやかましくライトニングバードは飛行した。

ステージは完璧だ。後は僕の考えが正しいと信じるだけ。仲間を信じるだけ。


岩の壁が無くなりゴーレムは次の反応をする。

ヒューッ。と空を駆ける二つの『矢』。

『モブ』と『主人公』の想いをのせた二本の矢。それを撃ち落とさんとゴーレムは自身の手から岩を飛ばす。かつてライトニングバードを落とした流星のような落石。

だが今、それはライトニングバードには当たっていない。その理由はライトニングバードの前を飛ぶ本物の矢にある。


「このままいってくれよ。」


僕はその空に飛行する二つの物に目を向けながら祈るように手を合わせた。


僕の考えが正しいならこのゴーレムにもパターンがある。そして岩の落ちる場所も。


「うぉぉぉぉぉぉ。」


矢に誘導されたライトニングバード。その上で流は声を上げる。

矢はゴーレムの頭に。だが。


ヒュッ。


ゴーレムは今までのスピードでは考えられない動きで迫る矢をしゃがんで避けてみせた。


「 「なっ!?」」



下方。

岩の壁を破った戦士二人はその事態に声を溢した。

だが、それは知らない者。知ってる者はついついと口元を緩めてしまっていた。


「いけーりゅうーーーー!」


僕は勝利を確信してそう叫ぶ。


「ビトリアスパダーーー!」


そう叫んだのは先刻、ライトニングバードから降りた流。

流は僕の言葉に反応したわけではないだろうが剣を濃い赤色に染めて上下に剣を振り下ろした。




「ウォォォォォォォォォォォォォォーーー。」




縦一線に切断されたゴーレムは最後に大地をも震わす叫び声を上げると、半分にされた体をそれぞれの向きに倒したのだった。


ドシンッ。


今度こそ本当に地面が揺れるとゴーレムがさきっきまで居た場所の先にワープゲートが現れた。

それを皆、確認すると相談したわけでもないがその場へと大の字に倒れた。


何はともあれ第一回目の闘いは幕を閉じたのだ。

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