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第一フィールドの守神

時は朝。

場所は目に。肌に馴染んだ虫系モンスターの住みかの草原。別名、第一フィールド。

そこの最深部に僕達はいた。ここまで来るのさえ、数々のモンスターを退治して来ている。皆の疲れは多大なものであった。


「遂に来たな。アレだ。準備はいいか?」


リーダーである流は、枝と枝とで隠れ見える大きな岩巨人に目を映し皆に緊張の声を掛ける。

皆は顔に汗を流しゆっくりと首を動かした。


「うっし。動きは今朝の通りだ。じゃぁ、行くぞ!」


先頭になったのは流。腰に刺した鞘の中から銀色に光る刀身を抜き駆ける。


ゴゴッ…


ゴーレムの首が動いた。敵の動きに気付いたのだ。


「ウォォォォォォォォォォォ!」


そんな大きな叫びで草木を揺らし、体を動かす。

足が地面にめり込むと大地は揺れ、僕達の体も揺れた。

だが、そのゴーレムの始めの動きは僕達は知っていた。

だから僕達の動きは止まることはなかった。


「ベロシター アウメンタル。」


美麗はそう言い杖を流へと向けた。

すると杖は青く光り、流を青く光らせた。

光に包まれた流のスピードは上がりみるみるとゴーレムとの距離を縮める。美麗がかけた技は回復系の魔法であり、スピードを上げる技であった。

その倍率は二倍。


ダッ。


二倍に上がったスピードで地面を跳躍。木へ木へと足を乗せ、上がった身体能力でゴーレムの首元へ体をもっていく。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」


掛け声を高らかに手に持つ剣を振りかぶる。

ゴーレムの弱点は人間にあたる首元の頸動脈。

当たれば大ダメージは確実。だが、弱点は弱点。

当てるには難易度は上級なみだ。


ゴゴッ。


ゴーレムは微かに首を動かし流の斬撃をずらす。

ガキンッ。という音が鳴り、剣は頭に当り弾かれた。


「クッ。」


流の表情は崩れ、体勢も崩れる。空中ゆえにこの状況では回避も困難。

ゴーレムはそれを見越したのかゆっくりと拳を握り締めた。

回避困難な流へ攻撃を仕掛ける気なのだ。

それを喰らえば今の流へ与えられるダメージは満タンのゲージが三分の一まで削られることになる。


何故なら。 美麗が流によって掛けたステータス上昇魔法は少しのリスクがあったからだ。

流に掛けたスピード上昇魔法。

それはスピードを二倍上げるが防御力を二倍下げもする。


「まずいっ。健生。美麗。」


距離を置いて見ていた僕達。そこで黒谷は舌打ち混じりの声を吐き、僕の名前と美麗の名前を呼ぶ。


「分かってる。」


「うん。ディフェンダー アウメンタル。」


言って僕は予め掛けておいた矢を飛ばす。

美麗は頷き、杖を光らせ流へとそれを向けた。


グサッ。


僕が放った矢は丁度よくゴーレムの岩と岩との間に挟まる。


「ウォォ…」


ゴーレムは小さな奇声を口から漏らす。とは言ったが口がどこにあるかは分からない。とにかくそんな声が僕の耳に届く。

僕が射った矢は攻撃の矢ではなかった。


僕が射った矢。

それは状態異常を起こさせる矢である。つまり矢に当たったゴーレムは今、麻痺状態になり体の動きが鈍っていた。


「よっしゃ!!行くぞ。ランサーのボウズ!」


「あぁ。」


ゴーレムの動きが鈍った事を確認した攻撃専門の二人。黒谷と明さんが動く。

が、流への攻撃を無効にする事は出来ない。

ゴーレムのゆっくりとした拳が流へと迫る。しかし、それで良かった。


ガッ。


岩の巨手が流へ触れる。が、 流の体は今度は茶色く光っていた。

それは防御力を上げている事を意味する。リスクは攻撃力の低下。さらに流は自身の剣を縦に、体を護っていた。ダメージは微力なもの。


ドシャッ!!


流の体がゴーレムの拳によって吹っ飛ばされた。

だが、それを気にかける者はいない。何故ならそれは想定内であったからだ。


「イムプレー」


「プレンダー」


前者を明さんが。後者を黒谷が叫び地面を蹴った。すると明さんの拳は赤く染まり、黒谷の槍は黄色に染まった。


ドカッ!


と言う二つの音がゴーレムの両足から聞こえる。

かと、思うとゴーレムはその支えを失った。

ヨロッ。と体を傾けさっき流が飛ばされた森林へと。


ドッシャーン。バキバキ。と言う音と共にゴーレムの巨体は沈む。

そこで更なる追い討ちがゴーレムを襲う。


「ダブ。光の矢です。」


空に飛ぶライトニングバードは主人の命令に従う。小さな翼をバサバサとあおぎ円を描くように飛行。翼からは無数の小さな金色に光る羽根が雨のごとく降り注ぐ。


体の正面を地面につけているゴーレムにはそれを避けることは出来ない。思い通り、ゴーレムは空から降る光る矢の雨に撃ち当たった。


「ウォォォォォォォォォォォー。」


地面に咆哮。回りに植わっていた木々が抜け、吹き飛ぶ。ダメージは上々。

だが、まだ僕達の攻撃は終わっていない。


「エピセシー アウメンタル。」


美麗はゴーレムがバタバタと暴れる方向へ杖を光らせた。


「スパシエニシー!!」


流がどこからともなく現れた。手に持つ愛剣を赤色に染め。


ザンッ!


綺麗な斬撃をゴーレムに決める。体にはその後が残っていた。


「ウォォォォォォォォォォォー。」


更なる悲鳴にも似た奇声を上げるゴーレム。受けたダメージは多大なものなのは確実だった。


「うっしゃぁ!まずは一段階。」


地面に足を付け、流は笑みを刻みながらピースを決める。他の皆(明さん以外)も流につられたのかぎこちない笑みを刻んだ。

が、油断はしていない。


ドッ。


ゴーレムの巨手が地面に付き軽い地震を起こす。

この時のゴーレムは正に格好の餌食。なら何故、攻撃を仕掛けないか?

それは今のゴーレムは防御体勢に入っているからだ。一言で言うならば体が固くなっている。刀も弓も通らない。

勿論、槍も拳もライトニングバードの攻撃、魔法攻撃も通らない。

云わば今のゴーレムは無敵。攻撃するだけ無駄であった。

武器の耐久性が失われるだけ。MPを無駄に使うだけ。弓が無くなるだけ。

それはゲーム版をやっていたプレーヤーなら当然理解していた。だから僕等はその隙に失ったMPやらを回復する。


「ウォォォォォォォォォォォーーーー。」


始めのよりも更なるばかでかい奇声。

女性陣と僕は耳を塞いでしまう。

え?てか何で男性陣三人は平気なの?鼓膜あるの?


ともあれここからが本番。 第一フィールドのボス。ゴーレムはHPを三分の一失うと魔法を使ってくる。だが、焦ることは無い。ゴーレムの攻撃は知ってい

る。それに対しての策も考えてある。


ドシンッ。


ゆっくりとした動作ではあったが遂にゴーレムは立ち上がった。


「ウォォォォォォォォォォォ。」


再起の合図かゴーレムは叫ぶ。するとゴーレムの眼には青い小さな丸い光が点った。


ゴーレム第二状態。

ゲーム版の画面越しで観ていたものとは迫力が全然違う。


「くるぞっ。」


ゴーレムの叫びで髪を揺らしている流が剣を構え直す。


「あぁ。」


黒谷が小さく頷くのに便乗して僕等も意識を固める。ここからがこの第一フィールドのボス。ゴーレムの本領なのだ。


「ウォォォォォォォォォォォ。」


先手を仕掛けたのはゴーレム。巨手を眼と同じく青色に染め、手を素早く(ゴーレムにしては)振る。


「皆避けろ!」


流が叫ぶ。だが、皆はそんな声よりも早くに動いていた。

ゴーレムの手から産まれた幾数の岩石。皆がそれぞれの武器。業を駆使して避けるのに対して僕は己の反射神経を駆使して避ける。


だって何でか此方に集中投下なんですもん。矢射つの間に合わないんですもん。

何てのはどうでもいい。とにかく六人全員がゴーレムの攻撃を避けた。なら次はこちらの番。


「ステル アモートー。」


始めにそう叫びゴーレムに飛び駆けたのは明さんだ。手はさっきよりも濃い赤色に染まっている。



「ウォォォォォォォォォォォ。」


しかし、ゴーレムも一応は次いくフィールドを拒む守護神。向かう明さんにゴーレムは迎撃。

再度、巨手を青色に染め岩石を飛ばす。

横一列に飛ばされたそれを驚異的な跳躍で空を飛んでいる明さんには避けるのは困難であった。

だが、それも想定内。


「フルーエンス ミーテ」


そう叫び自身の槍を突きだしたのは黒谷であった。その突きだした槍から産まれた黄色の光線に、飛ばされた岩石は飲み込まれる。


「ナイスじゃ。ボウズ。」


明さんは空から目線は敵に向けながら嬉々とした声を叫んだ。その掛けられた本人はあまりいい表情はしていなかったが。


「ウォォォォォォォォォォォ。」


攻撃が当たらなかったことに怒っているのかゴーレムは目前にいる明さんを大声で威嚇する。

だが、明さんはそれには堪えていない。


「ハハ。」


笑い声すら口から漏らした余裕の明さん。濃い赤色の光に包まれた拳を後ろに退く。


「うりゃぁーーーーー。」


掛け声と共に突きだされた拳はゴーレムの片目を破壊した。


「ウォォォォォォォォォォォ。」


果たしてこのゴーレムに痛みはあるのか?

だが、目前の敵は破壊された右目を抑えて喚いているように見える。


「よしっ。次だ。」


喚く敵に慈悲など無い。僕達は更なる攻撃を決行する。


バシュッ。


僕の射た矢が合図だったのか飛那さんが自身の相棒に声を掛ける。


「ダブ。大きくなって下さい。」


空の飛行中の黄色の色をしたツバメにも似た鳥は主人の声を聞き取り体を大きくした。それこそ人一人が乗れるくらい。


ガッ。


ライトニングバードが体を大きくしたとほぼ同じに射た矢がゴーレムの体に突き刺さる。


「ウォォォォォォォォ…ォ」


始めは勢いよく岩石なんかもバンバン飛ばし叫び、喚いていたゴーレム。そのゴーレムは矢が刺さると数秒、その勢いを弱めた。

お察しの通り眠気を誘う矢である。


「しゃぁ、頼んだ。鳥。」


飛那の命によって流の元で羽を下ろしたライトニングバードの上に乗るのは流。

ゴーレムの勢いが弱まったのを確認すると流はライトニングバードに飛行するように頼んだ。


バッ。


羽を広げて飛行するライトニングバードの速度はかなりのもの。そこで二人は叫んだ。


「ベロチィア ドォピオ。」


杖を青く光らせ飛行中のライトニングバードに向ける。ライトニングバードの体は青く染まりスピードは二倍と増した。

と、更に。


「ポテンザ ドォピオ。」


瞬時に青から赤に杖を光らせた美麗は次は流の体を赤色に染める。


「スパシメテオ 」


ザンッ。


赤色に光っていた剣に更なる赤色が加算された剣がゴーレムの次なる眼を襲った。


「ウォォォォォォォォォォォー。」


眼だけではない。最早、顔が崩れ落ち崩壊している。

それもその筈。ライトニングバードの二倍に上がった飛行速度と四倍にも上がった攻撃力の剣を受けたのだから。

ゴーレムのHPはもう早々、虫の息。そんなんだから皆はハイタッチなんかをしながら勝利を確信していた。

僕も大した事やってないな。地味すぎだよな。と若干の涙を目に浮かべ完全に勝利を確信していた。


だが、忘れてはならない勝負はまだ終わってはいないのだ。




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