第8話 昼休みに記事の作成
(赤岩陽太視点)
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン。
チャイムが校内に響き渡る。
チャイムが鳴り響いている間に教員が4時間目の授業を切り上げる。
俺は学生カバンから弁当袋を取り出すと、青井やあまねに笑いものにされないために、教員よりも早く教室を退出する。
廊下に移動し、一目散に新聞部の部室に向かう。いち早く幼馴染の美月と会いたかった。
合流して顔を見て不思議と得られる安心感を得たかった。
「はぁ…はぁ…」
俺は息を乱しながら廊下を走り、踊り場に到着し、数段ほど飛ばして階段を降りる。
長い階段を進んで、いつの間にか1階に到着する。
後は記憶を辿って1階の新聞部の部室前に辿り着く。
コンッコンッコンッ。
俺は先に中に美月が居ると予測し、新聞部の部室の戸をノックする。
シーーン。
反応はない。
「もしかして居ないのか」
俺は戸を引いて開こうとする。
しかし、カギが掛かっており、開くことが出来ない。
「え…。どうしよ…」
俺は不安に陥る。すぐに幼馴染の美月に会えないことに焦りも覚える。
落ち着かずにジッとしてられず、新聞部の部室前の周辺をウロチョロする。
「あれ? もう来てたの? 早いね」
良く知る声が後方から俺の鼓膜を刺激する。
「その声は!? 」
俺はバッと高速で後ろを振り返る。
白髪のロングヘア、水色の瞳、純白な肌の幼馴染の姿があった。
「…美月」
俺は美月の顔を認識し、言葉では言い表せない程の安堵感を覚える。この瞬間、俺にとって幼馴染の美月の存在はとんでもなく大きな存在だと感じる。
「どうしたの? そんなに安心した顔して? 」
美月は不思議そうに首を傾げる。
「い、いや。何でもない」
俺は本音を隠し、瞬時に平静を装う。幼馴染が居なくて不安だったなど、恥ずかしくて本人の目の前で言えない。
「そっか。ならいいけど」
美月は深追いせずに話を途中で切り上げる。そのまま制服のブレザーのポケットから1つのカギを取り出し、新聞部の部室の戸を開く。
「さ、中に入って」
美月が俺に先に入るように促す。
「うん。ありがとう」
俺は感謝を伝え、美月に誘導に従い入室する。
今朝と変わらない雰囲気と内装だった。
美月も俺の後に部室に入る。
「先に記事を作るための簡単なヒヤリングをしていい? それから一緒にお昼食べない? 」
美月は部室内の大きな四角い机に学生カバンを置く。
「うん。それは構わないけど。具体的にどんなこと聞くの? 」
俺は疑問を尋ねる。
「陽太君が経験した出来事についてだよ。どんなことをされたとか。あと、証拠などがあれば、記事として使いたいから提供して欲しい」
美月は机に置かれたノートパソコンを開いて起動する。
「分かった。…これなんだけど証拠として使えるかな? 」
俺は学生カバンからスマートフォンを取り出す。
慣れた手付きでロックを解除し、ホーム画面に移動する。
モーインのアプリを選択する。起動するまでモーインのアイコンがスマートフォンの画面を埋め尽くす。
しばらくすると、モーインのホーム画面が表示される。
モーインのトークの機能を選択し、最新のトーク歴から2番目のものを選択する。青井からの寝取られに関するメッセージが内容のものだ。
「これなんだけど」
俺は美月に見えるようにスマートフォンを顔の前に掲げる。
「うん? どれどれ」
美月は俺の近くまで移動し、スマートフォンに映るトーク欄を確認する。
しばらく無言でトークの内容を確かめる。
「こ、これ! 凄い貴重な証拠だよ!! なんでこんなの持ってるの? 」
美月は興奮した口調で尋ねる。
「それは…向こうから送って来たからだけど。あ、あと、これも貴重な証拠かな? 」
俺は青井とのトーク欄を閉じ、最新の歴のトーク欄を選択する。寝取られの真実の告白と別れを切り出してきた元カノのあまねとのトークの内容がスマートフォンの画面に反映される。これを顔の前に掲げて美月に見せる。
「…」
美月は大きな目をさらに見開いて、俺のスマートフォンに映る情報を凝視する。
「これもやばいよ! 貴重すぎるほどの証拠だよ!! 今から私のモーインに送ること出来る? 」
「それは出来るけど」
「なら送って貰っていい? もしかしたら、この証拠のおかげでヒヤリングもすぐに終わるかもしれない」
美月は俺の近くを離れ、元の場所に戻り、イスに腰を下ろす。
起動したであろうノートパソコンに向かう。
「わ、分かった。すぐに送る」
俺は青井とあまねとの2人と俺の昨日のトークのやり取りをスクリーンショットで撮る。
モーインのホームに戻り、友達検索で美月のアカウントを検索する。すぐにヒットする。
美月のトーク欄を開き、オプションで先程スクリーンショットした2つの画像を選択し、送信する。
しばらく送信の時間を要して2枚の画像を送ることが完了する。
「よし! いま届いたから。このままPCで作業しながら色々と聞きたいことをヒヤリングしていくから。よろしくね」
美月はノートパソコンのキーボードを叩きながら、俺に今後の予定を伝える。
「うん。分かった。何でも聞いて。答えられることは全て答える」
「助かる! 」
美月はノートパソコンに向き合いながら、一生懸命に作業に取り組む。
ここから俺達の記事作成のための、お昼前の作業が始まった。
俺は今、何もすることが無く、近くの空いているイスに腰を下ろして、黙って待機を続けた。
「今から、ちょっと聞きたいことあるんだけど。陽太君、大丈夫? 」




