第六節 2023/4/1 アウェイ 対京都サンガ 3対0
「京都って言う割には、市内から離れてるんですね」
「そうだね」
「ちなみに、今日もダービーなんですか?」
「関西ダービーと言ったりもするけどあまり意識はしないかな」
ふと、小林さんの出身を聞いていなかったことを思い出す。
「小林さんは出身どこだっけ?」
「私は岐阜です。飛騨の山奥で育ちました」
「岐阜かぁ。ちなみに、FC岐阜を応援してたわけじゃないんだね」
「岐阜にJリーグのチームがあることを、初めて知りました。これから先、対戦するんですか?」
「FC岐阜はJ2だから対戦しないね。ちなみに、もし対戦するとしたらどちらを応援するの?」
「ヴィッセル神戸ですね。岐阜には思い入れがないので」
「そっかぁ」
「私、幼い頃から地元を応援するという意識が、ないんですよ。サッカーだと、ワールドカップで日本代表を応援する人も、よく理解できないくらい」
「なるほど」
「だから、村田さんが面白いんですよ。神戸に生まれたと言うだけで、神戸のチームを応援することを、当たり前のように思っていることが」
言われてみると、その通りではある。
私は、幼い頃から帰属意識の塊であった。神戸、関西、日本、学校、会社。全てが自分にとっての誇りだったし、自慢だった。
自分の属しているモノを、応援するのが当たり前だった。
だが、帰属意識のないものからすれば、それは非常に奇異なものに映るのだろう。
だが、私は今会社をやめ、ゆらめいている。
属するものがないと言うことが、こんなにも不安定なものだとは分からなかった。
だから、ヴィッセルを応援することで、何かに属しようとしているのか?
そんなことを考えていると、小林さんから声がかかる。
「バカにしたように聞こえたなら、すいません」
「そんなことはないよ。ただ自分にない視点が追加されたものだから考え込んでしまって」
小林さんが笑いながら言う。
「自分の世界に入り込んじゃったんですね」
「そうだね」
試合は3対0で快勝だった。
汰木が2ゴールを決め、小林さんは「なにしろ、私の推しですから!」と誇らしげだった。
ヴィッセル神戸は首位をキープし、次戦へ向かう。




