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第三節 2023/3/4 ホーム 対ガンバ大阪 4対0

「今日って、特別な試合なんですか?」

 試合前に、屋台で買ったスライダーバーガーを食べながら、小林さんが尋ねる。

「今日はダービーなんだよ」

「ダービー?」

「サッカーでは近隣のチームとの戦いはダービーと言って盛り上がるんだ。今日は差し詰め大阪(おおさか)と神戸の関西(かんさい)対決、阪神(はんしん)ダービーだね」

「なるほど」

「とは言ってもダービーと言って盛り上がるのはヴィッセル側だけみたいだけどね」

「そうなんですか?」

「ガンバにはセレッソという同じ大阪で強豪のライバルがいるからね。ヴィッセルはあまり相手にされてない感じかな」

姫路(ひめじ)あたりにJリーグのチームができたらヴィッセルもダービーできるんだけどね」

「そっかぁ、一方的な思いのダービーなんですね」

「うん。それに、普通は阪神ダービーって言うと思うんだけど、あえて、神阪(しんぱん)ダービーって呼んでるあたり、ちょっと自己主張が強すぎて痛々しい感じがするね」

「今日は辛口ですね」

「小林さんともある程度の付き合いになってきたからね。少しずつ本性が出てきているんだ」

「本性は辛口なんだ」

「そうだね。本性は(ひね)くれてねじ曲がった性格だね」

「自分でそう言っちゃう人は、まっすぐだと思いますよ」

「そうかな」

「そうですよ」

 そんなことを喋りながら、自席に座る。

「今日から全席解禁だから、人がぎゅうぎゅうですね」

「そうだね」

 後ろの席から「今日はダービーやから負けられへん」などの声が聞こえる。

「ヴィッセル側の人たちは、やっぱり、ダービーを意識してるんですね」

「今のところガンバとはダービーと呼べるようなランクにいないけどね。今日快勝して振り向かせられるといいね」

「何だか恋愛みたいですね」

「似てるかもね。ヴィッセルが強くなればガンバもヴィッセルを意識するようになるからね」

「なんか男性的な恋愛方法ですね」

「どういうこと」

「自分を高めれば、相手が振り向いてくれると思っているところが」

「なるほど」

 そんな問答の内に、チャントが始まる。

 チャントも3回目になると慣れたものだ。力加減の入れ方もわかってくる。


 試合は3分に大迫(おおさこ)、47分に酒井(さかい)、66分に武藤(むとう)、73分に酒井のゴールで4対0の快勝だった。


「今日は、お祭りみたいでしたね」

「なかなか、こんなに気持ちのいい試合はないね。ガンバ相手に」

 くすりと笑いながら小林さんがいう。

「なんだかんだ言って、村田さんもダービーを意識してるじゃないですか」

 私は少し赤くなり答える。

「僕だって神戸人だからね。大阪には少し思うところがあるよ」

「でも、ヴィッセルって強いんですね」

「いや、ここまでが出来すぎなだけだよ」

「じゃあ、ここから下がるんですか?」

「多分ね。神戸人はヴィッセルには期待しすぎないものだよ」

「そういうもんなんですか?」

「そういうもんなんですよ」

 小林さんと御崎公園駅で別れ、自宅まで歩く。

 もしかしたら、今シーズンはいいとこに行けるかもという思いが浮かぶ。

 自分の生きがいを、ヴィッセルに求めたのは案外正解かもな、などと思うと久々によく眠れた。

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