episode 11
国王から緊急だと呼ばれた伯爵は耳を疑った。
「この国で内乱が起こり始めた。」
ここ何年も戦争など起こらなかった。
王家と国民との関係は極めて良好だ。
何故起こるのかただただ謎だったからだ。
「下界には王政国家はほとんどないらしい。」
下界とはこの空に浮く国の下にある国々のこと。
簡単に言えば空に浮かず、海に浮かんでいる国のことだ。
この国のヘルエムは下界に降りて生活する者も少なくない。
魔力のある者でも、下界に降りて文化を学ぶ者もいる。
更に国自体も貿易をしていた。
下界の情報は国に入ってくることは簡単で、この国の出身者なら入国は容易だ。
内乱の首謀者は下界に行ったことのある魔力のある者たちらしい。
王家と国民の関係は良好だ。
だがそれは、貴族と国民の関係が良好とは限らない。
現に伯爵のように国民を見下し、国民に酷い仕打ちをする者もいた。
貴族を引きずり下ろす、それが反逆者たちの目的らしかった。
「いずれお前たちにも影響が及んでくることだろう。
充分に注意してくれ。」
国王は疲れ果てた顔でそう告げた。
伯爵は国王からの話を家の者に話したが、兵がいるから心配はいらないと何もしなかった。
そして今まで通りフェミュールの公演もラジオも続けた。
彼女は貴族ではあるが、元は農民で国民の歌姫でもある。
彼女がいるこの家は安全だと、伯爵は思ったのだった。
フレドンナは心配し、遂に心労で倒れて亡くなった。
この家の主人と呼べる存在は、伯爵を除いてはルイードとフェミュールになった。
「フェミュールはどんなことがあっても守るから。」
フェミュールから逃げたあの日から気まずくなっていたが、ルイードはそう言った。
そして彼女が何処へ行くにもついて回った。
やがて数か月がして、フレドンナの不安は的中した。
遂に戦争が始まったのだ。




