episode 10
ようやく部屋から出てきたルイードは、すっかりやつれてしまっていた。
食事をむさぼるように食べ、そこでようやくダイニングのソファーで大人しく座った。
フェミュールは彼の横に腰を下ろした。
「ルイード、よかったわ、病気とかではないようで・・・。」
「あぁ・・・。」
「私、また新しい歌を覚えたのよ!」
「あぁ・・・。」
「お母様が育てていたバラがようやく花を咲かせたの!」
「あぁ・・・。」
何を言っても上の空の彼に、フェミュールは少し不安になった。
彼の頬に静かに触れる。
それでようやく我に返ったのか、ルイードは飛びのいて、その反動でソファーから転げ落ちた。
「ルイード、大丈夫?」
駆け寄った彼女からも逃げてしまう。
フェミュールはだんだん悲しくなってきた。
それでも笑顔でそこから話しかけた。
「何かあったら呼んでちょうだい。
私、部屋で歌の練習をしてくるわ。」
ルイードは彼女の背を見て、自分が傷つけてしまったことに気付いた。
しかし彼には何も言えなかった。
彼女を手に入れるために伯爵がしたことは、決して許されることではない。
出来ることなら彼女を連れてこの家を出てしまいたいと思った。
だが彼はまだ若く、今は魔導士になる為に試験勉強をしている最中だ。
収入などあるはずもなく、彼女と二人で暮らせるだけの金を手に入れることなど安易ではない。
魔力の記録が国にある限り、S級である自分などあっという間に見つかって連れ戻されることだろう。
ルイードは頭を抱え、その場にうずくまった。




