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 俺はエステリオさんに『魔導エアコン』(魔法のエアコンより改名)を納品すると、家に戻って『魔法大全』のページをめくっていた。


 あまり『闇の魔法』は知られていないのか、乗っている魔法の数は他の魔法と比べて少ないものだった。


 『闇の触手』

 闇の力を触手として発現させる魔法。

 自在に動く触手は対象に麻痺・毒の効果を与えることができる。

 触手の強さ、本数、長さは術者の消費する魔力によって変動する。 


 挿し絵には触手に絡まれて悶え苦しむ男の姿が書かれていた。


(マッサージに使われているとは作者も思いも寄らなかっただろうな)


 『呪いの魔法』

 対象に呪いを与える。

 呪いの内容は生物とそうでないものによって異なるが、苦痛・麻痺・毒・睡眠・即死・破壊と多岐に渡り、効果の強さ・期間は術者の消費する魔力によって変動する。

 『闇の触手』を介しての発動も可能。

 解除には高位の闇術者の干渉か、もしくは『光の魔法』が適切である。


 『目隠しの魔法』

 対象の視界を一時的に奪う魔法。

 効果時間は術者の消費する魔力によって変動する。


 『闇の衣』

 自身及び対象を闇で覆い、姿を隠す魔法。

 気配も隠すことが出来る。

 効果時間は術者の消費する魔力によって変動する。


 『火の魔法』についても色々と書いてあるが、基本は炎を出す魔法と温度を上げる魔法、そして爆破の魔法で、威力によって種類分けされているだけで、すでに俺が使える物だった。


 そして本を読んだ瞬間、闇の魔法については使う事が出来ると確信が持てた。


 まるで忘れていたことを思い出したような感覚。


 他の魔法はそんな事はなかったので、これは黒い左腕の効果なのかもしれない......。


 俺は試しにとコップに呪いを掛ける。

 内容は俺以外が触れるとコップが崩れる事をイメージした。


 コップは俺が触ってもなんともない。


 セリアを呼んでコップを持たせると、砂で作った物のように崩れていった。

 

「え?! なに?!」

 

 驚くセリアを余所に魔法の成功を密かに喜んだが、同時に何か恐ろしい力を手にしてしまったような気分になった。


 これは『魔力蓄積器』の転用防止以外の目的で使わないように心に誓った。


 その夜はセリアと目隠しプレイで大いに盛り上がった......。

 

**** 


 西地区の衛兵詰め所で、いつものようにマッサージをしていると、珍しく遅い時間にライナさんが訪れてきた。


(仕事が立て込んでるのかな?)


「全身を頼む」

「はい」


 褐色の艶やかな肌に触手を絡ませていく。

 他に隊員も居なかったので、ライナさんに集中して念入りに揉んでいった。


 漏れる吐息が色っぽい......。


「そ、それはそうと......、南の隊長は元気そうだったか?」

「え? ああ、見た目は元気そうですけど、マッサージした感じだと大分疲れが溜まってるみたいですね」


「そ、そうか......。また南にも行ってやってくれないか?」

「え? ああ、はい。週1ぐらいで行こうと思ってます」

「......頼む」


 ライナさんは、それ以上はあまり話さずマッサージが終わると料金を置くと静かに部屋を出ていった。



「何か......、あるな」


 音もなく背後に立ったアオイさんが、そう呟く。


(この人、闇の衣の魔法、使ってるんじゃないよな?)


「修行の賜物」


「心を読まないでください」


「カツは顔に出やすい」


「で? 全身ですか?」


「いや。3日間クルガを貸して」


「え? なんかあったんですか?」


「ふふ」


(言わないのかよ!)


「内緒」


「クルガどうする?」


「俺は構わない」


「だ、そうです」


「うん、明日迎えにいく」


 アオイさんは口元に笑みを浮かべ部屋を立ち去って行った。


 少しクルガが何をされるのか心配だが、動じないクルガを羨ましくも思った。


「平常心だぞ、主殿」


(心を読むなっての)


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