闇の触手(便利家事魔法)
仕事に向かうセリアを見送ると、俺は家事を済まそうと左手に意識を集中する。
指先の一つ一つが延びるように黒い闇が現れる。
『闇の触手』
闇の魔法の一つで、黒い影のような触手を出現させて自在に操る魔法だ。
意識すれば、その触手に触れるだけで呪いや毒を与えるように出来、込める魔力によっては獲物を絞め殺すことも出来るほどの力を持つ、闇の魔法でも高度な魔法......なのだが、今の俺はそこまでの知識はなかった。
便利な魔法......。
その程度の認識だった。
触手の1本でホウキを握り、残りで机の上を片づけて食器を洗う。
触手の長さは集中力が影響するらしく、それほどは伸ばせない。
それでも家の中で家事をするには十分な長さまで伸ばすことが出来る。
セリアも見たこともない魔法らしく見せたときにはかなり驚き、夜の営みで使ってみたらお互いに新たな興奮と快感を感じる事が出来た。
家事で使ううちに触手の精度も上がってきている。
自前の触手が負けそうな勢いだ......。
1階の掃除と洗い物を終えると、俺は2階に上がり乱れたベッドからシーツを触手ではぎ取り、同時に床もホウキで掃いていく。
セリアには、魔力が切れると昏睡状態になるから気をつけろと言われたが、今のところ魔力が切れるということを体験したことがない。
触手を操りベッドメイキングを済ませ、洗濯に入る。
一番、力加減に気を使う作業だ。
セリアの可愛らしい下着を口元を緩めながら丁寧に洗っていく。
最初こそセリアも俺に下着を洗われることに抵抗を持ち、恥ずかしがってもいたのだが、一度やられてしまうと羞恥心も薄れたのか気にせず洗濯カゴに下着を放り込んでいた。
一応『闇の触手』は、その見た目もあって家の中だけで使うようにしている。
セリア曰く、闇の魔法はイメージが悪いそうだ。
ベランダでは自らの手で洗濯物を干していく。
「お、おはようございます」
不意に隣の家のベランダから声が掛けられる。
隣の家に住む夫婦の奥さんだった。
まだ子供は居ないらしく、新婚なのか若くて可愛らしい奥さんだった。
「あ、どうも」
俺も隣の奥さんに挨拶をするが、奥さんは俺の顔を見ると恥ずかしそうに顔を赤くして家へと入っていってしまった。
昨晩の触手プレイの時のセリアの絶叫が聞こえていたのかもしれない......。
(なんか、すみません)
俺は心の中で頭を下げた。
まだ日が昇り切らないうちに家事を済ませると、俺はセリアから渡されたお金をサイフにしまい買い物に出かけた......。
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「いらっしゃい」
威勢のいい声が店内に響く。
俺はセリアから言われた食材を次々に買っていく。
北に海、南に山を置くグレイポートでは食材はかなり豊富だ。
領主が農業改革に力を入れているそうで穀物も安く手に入るようになってきているらしい。
なんにせよ米に似た穀物があったのには、素直に喜んだ。
少し細長いタイ米のようで少し黒いが、食感と味は満足出来る物だった。
セリアには元の世界の事はなんとなく伝えてある。
神妙な面もちで「帰りたい?」と聞かれた。
その時、俺は「セリアと一緒に居たい」と伝え、口づけをした。
なんにせよセリアの中では、この米が俺の好物だと認識したようで、米中心のメニューを多く作ってくれる。
今夜も食材から予想するにパエリアに似た料理が出てくるのだろう。
俺は少しウキウキしながら家路に着いた。




