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歓迎会

 セリアがドレスを着てウフフと笑いながら、部屋でくるくると回っている。


 歓迎会の為に、このドレスを選ぶのに半日を要した。


 セリアはくるくると回りながら、

「可愛い?」

 と聞いてくる。


 よくも目が回らないもんだと関心しながら、

「可愛いよ」

 と答える。


 ちなみにスカートをめくったら、凄く怒られた。


 裸は平気なのに......。


「カツも格好いいよ」

セリアは回るのを止めてそう言う。


 そしてニヤリと笑いながらスカートの裾を持って、ゆっくりと引き上げていく。


 スラリとした足には白いガーゼのストッキングを履き、太股のところでガーターベルトで止めている。


 さらにスカートを引き上げ下着がちらりと見えるところで止めると、それを凝視していた俺に、


「どう? 可愛い?」

と聞いてくる。


「......可愛い!」

俺はセリアに飛びついた。


****


「遅れちゃうじゃない!」

「だってセリアが......、可愛いから」

「だからって、2回もする事ないでしょ!」

「......だって」


 セリアはわたわたと準備をしている。

 刃先を確認してナイフを鞄にしまう様子が、この世界の現実に俺を引き戻す。


 俺も最近は腰にナイフを差すことが普通に感じるようになってきた。


「おかしくない?」

セリアはくるりと回って、そう聞いてくる。


「うん、大丈夫。綺麗だよ」


(本当に綺麗だ......)


 金色に輝く髪に、少し青いドレス。その顔は前の世界なら写真やテレビの向こう側でしか見ることが出来ないほどの美人だ。


 セリアは軽く口づけをすると、外に出るように促してくる。

 しっかりと鍵を閉めると、俺たちは夕暮れの町へと手を繋いで歩きだした。


****


 歓迎会の会場となる酒場には、すでに10人ほどの男女が集まっていた。


「すいません、遅くなりました」

「すいません」

俺とセリアは深々と頭を下げる。


「気にするな、私たちも来たばかりだ。私はライナだ」


 俺よりも少し背の高い赤い髪の女性。

 セリアの上司に当たる隊長が右手を差し出してくる。


 俺は少し戸惑いながらも、その手を金属の右手で握った。


「カツジです」


「ふむ、見事な物だな。魔法の品かな?」

ライナと名乗った女性は、俺の右手を掴んだまましげしげと見つめていた。


「それが、よく分からなくて」

「ふむ、失礼したな。腰掛けてくれ」


 俺たちはライナさんに促されるままに席へと着く。

 セリアが簡単な自己紹介をして歓迎会は始まった。


 思えば、この世界で飲む初めての酒だ。


「「かんぱーい」」


 ビールのような飲み物が注がれた木製のジョッキをみんなで打ち鳴らす。


 酒が入れば、自然と見知らぬ人たちとも打ち解け始めてきた。


「ぜんぜん俺のほうがイケてるじゃないか!」

「そんな事、言ってるからあんたはモテないのよ」

「男は優しいのが一番よ」

「なにおう! 男は筋肉だ! カツ! 勝負だ!」


 酔った勢いなのだろう。

 そして、これがこの世界のノリなのだろう。


 机の上は片づけられて、一気に酒場は盛り上がった。


 セリアは少し心配そうに見つめているが......。


 机を挟んだ向かい側にはボディービルダーのような、いかつい兄貴が鼻息を荒くして腕を捲っていた。


 セリアの腰ほどもありそうな腕を回して肘を机に突いた。


 セリアに目を向けると、両手をバツにクロスさせていた。


(......了解)


 勝負は白熱した末に、俺が負けた。


「なかなかやるじゃねえか。見直したぜ」


 ムキムキ兄貴は俺と肩を組んで、ジョッキを渡してくる。

 俺はそれを受け取ると一気に飲み干した。


「おお! 気に入ったぜ! 何かあったら、このドランに言ってきな」

「悪さを見逃してやるのかい?」


 ライナさんが、ぴしゃりとドランの頭を叩きながら言う。

  

「まあ、こんなんでも副隊長の一人だ。もう一人居るんだが、全員は来れないんでな」


 町の警備が任務なのだから全員参加出来ないのは仕方ないのだろう。


「仕事なんですからしょうがないですよ。ドランさんよろしく」

「......おう、軽いやつなら見逃してやるからな」

ドランは小声でそう言うが、ライナさんにまた頭を叩かれていた。


 セリアはその様子にほっとしているようだった。


「うまくドランをかわしたね。あそこで勝つと次々来るから正解かもな」

ライナさんが耳元で囁く。


「まあ、もう尻に敷かれているようだから安心したよ」

ライナさんはセリアに視線を送りそう言った。


「惹かれる理由......。分かるかもねぇ」


 ライナさんは胸元を寄せて、俺を見つめてくる。


「セリア!」

「はい!」

「命令だ! 今夜カツを私に貸せ!」

「断ります!」

セリアは横から俺の頭を胸に抱え込んでそう言った。


 酒場は笑いに包まれ、酒宴は夜更けまで続いていった......。



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