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からくり野球〜土壇場のジョーカー〜  作者: 水前寺鯉太郎
3年目

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45/46

第45話:覚醒の右腕、パパの「真・ストレート」

ウイルス『イカロス』に汚染された義手を、自らの手で引き剥がしたあの日。

 しみまるの右肩には、深い傷跡とともに、ある「奇跡」が残されていました。

 黒金博士の研究所で精密検査を受けるしみまる。モニターを見つめる博士の眼鏡が、驚愕で白く光ります。

「信じられん……。ハッキング・ウイルスによる異常な電気刺激が、しみまるの休眠していた右腕の神経細胞を強引に叩き起こし、再構築している。……これは、生物学的な『進化』だ!」

 義手に頼らずとも、しみまるの生身の右腕は、かつてのサイボーグ時代をも凌駕する**「超伝導の神経網」**へと変貌を遂げていたのです。


 退院した砂織と、胸に抱かれた愛息・球児きゅうじ

 和歌山の自宅で、しみまるは恐る恐る、生身の右腕で赤ん坊を抱き上げました。

「……温かい。砂織さん、僕の腕、ちゃんと動いてる」

「ええ。もう機械の熱じゃないわ。……あんたの本当の体温よ、しみまる君」

 砂織はまだ本調子ではないものの、母親としての強さを纏い、しみまるの背中を叩きました。

「さあ、パパ。いつまでもデレデレしてないで! 日本中のファンが、そしてこの子が、あんたの復活を待ってるわ。……今度は、本物の『剛速球』を見せてあげなさい!」


 復帰戦は、因縁の相手・帝都タイタンズとの頂上決戦。

 マウンドに上がったしみまるの右腕には、もはやアタッチメントも、銀色の装甲もありません。ただの、日焼けした逞しい「人間の腕」があるだけです。

 スタジアムがどよめきます。

「義手を捨てたのか!?」「生身で1軍の強打者を抑えられるわけがない!」

 バッターボックスには、かつての恩師であり、今はタイタンズの監督兼打者のエドワード・キング(義足で復活)。

「……しみまる。からくりを捨てた貴様に、何が残っているというのだ」


 しみまるは、バックネット裏で球児を抱いて見守る砂織と目を合わせました。

 サインはいらない。鼓動が、愛が、右腕に集約されていく。

(……見ててくれ、球児。これが、パパの野球だ!!)

 振りかぶった瞬間、しみまるの右腕の血管が浮き上がり、神経が黄金色に輝くような錯覚を観客に与えました。

 放たれた白球。

 それは、機械的な駆動音ではなく、空気を切り裂く「叫び」のような音を立ててミットへ突き刺さりました。

 ドォォォォォォォンッ!!

 スピードガンの表示は、170km/h。

 しかし、それは1年目の無機質な数字とは違う。重く、速く、そして打者の魂を震わせる「生命の塊」でした。

「な……馬鹿な……生身でこの速度だと……!?」

 キングのバットは、スイングすらさせてもらえませんでした。

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