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惑星ムンド管理官、転生者を監視する。  作者: 山田村
第五章 歴史

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第53話 アイルランド国 1486年 正体




 ラシーヤが「話があるから」と言うので、私は要塞へ向かった。


 「ダブリンにいる怪物、大変危険よ。準備を整えて、部隊を編成して臨まないと全滅するかも」


 いきなりそんな恐ろしいことを聞かされ、思わず怖気づいてしまった。


 「あのね、対象が人間でない可能性があることと、魔力量が半端じゃないことが今わかっている事実よ。もう少し分析するから、しばらく待って。その間に準備しておいて」


 何を準備すればいいのか分からなかったが、魔力量が桁違いらしいので、まずは増幅装置を考えることにした。特にチートを使って、マシューやバレリアの武器強化、そしてエラと私の魔力増幅装置を作るつもりだ。


 次の日、ダブリン郊外に潜伏している教会の諜報員に「潜入準備のため数日離れる」と伝え、私はウエールズの鍛冶場に戻った。さっそくマシューの剣の製作に取りかかる。


 ラシーヤが「危険」と言うのなら、相当ヤバい相手なのだろう。私は真剣に鍛造し、ついに聖剣にも見劣りしない長剣が完成した。剣の訓練をしているマシューのもとへ持っていく。


 「マシュー、剣ができたよ。オリハルコン製の長剣で、気合を入れると火が出るかもしれない。不思議な剣だよ。試してみて」


 「火?……あ、ありがとう」


 マシューは剣を舐めるように眺め、「素晴らしい剣だね……何か吸い込まれそうな雰囲気がある。聖剣? なんでこんな剣を作れるの?」と呟きながら素振りを始めた。


 私は剣技のことはさっぱり分からないので、その場を離れた。


 一方、バレリアは最新の剣を期待していたが、ラシーヤから近代兵器を入手できるらしく、心配はいらないとのことだった。


 次は私とエラの武器だ。マシューの剣を作っている間、ポピーは一ミリも動かず真剣に見学していた。


 「こんな高みの技術があるなんて初めて知りました。一生ついて行きます、先生!」


 ……なんだか変な方向に向かっている気がして少し心配になる。


 エラの杖の材料を集めていると、マシューが走ってきた。


 「イザベル、火! 火炎が出たよ。おかしくないか、あの剣……」


 私もポピーも大声に驚き、詳しく聞いてみると、剣技の決めの一振りで火炎が出たらしい。おそらく最後の一振りで魔力が乗ったのだろう。


 まったりしているエラに相談すると、


 「我らが魔法を発動するのと同じ原理じゃな。イザベルが火をイメージして剣を作り、その火のイメージがマシューに伝わり、潜在意識で最後の一振りが火炎魔法として具現化したのじゃろう。イメージがファイアボールなら、火炎を飛ばして爆発させることも可能かもしれん」


 と言われ、私は驚いた。


 マシューは「剣技の変更はバランスが崩れるから、あくまで延長線上で切断力が増す程度でいい」とのことだった。火炎で剣が損傷していないか確認したが、渡した時と同じく無傷だった。


 エラの杖は、最大級の破壊魔法を二割増しで百発以上撃てる仕様を考えている。「弱い魔力を最大限に増幅し、短時間で連続発動を目指す」という方針だ。


 エラに伝えると、


 「任せる。期待しておるぞ、ケケケ……」


 と、変人じみた下品な笑いを浮かべたので、少し引いてしまった。




 翌日、ラシーヤから連絡があり、再び要塞へ向かった。


 「分かったわ。上級の悪魔よ。今は北アイルランドの聖女を憑代にして活動している。対悪魔マニュアルを参考にして対策して」


 「悪魔?」

 全員が固まった。


 結論としては――

 精神攻撃で人を支配し、人類を操る。霊体が憑代を通して活動する。今回は一体だけだが上級悪魔なので油断は禁物。


 私たちは精神攻撃への防御システムを強化することにした。さらに教会からの支援を受けるため、翌日メイソンと接触することにした。



 私はメイソンに判明したことを報告し、悪しきモノへの対抗手段――魔法や魔道具があるか尋ねた。


 「上の者に確認します。あちらの店でお待ちください」


 案内されたレストランの個室でお茶を飲みながら待っていると、中年の聖職者がメイソンと共に現れた。


 挨拶を交わし、本題に入る。


 「過去に悪魔を召喚した事例があります。召喚者に憑りつき、悪行を働き、大量殺人を犯し、討伐された記録があります。その後、研究のために悪魔を召喚し、対策をまとめました。こちらが聖属魔法の書です。そして、こちらが魔道具になります」


 本はエラが受け取り、魔道具は私が受け取った。エラは夢中で本を読み始める。


 魔道具は、聖属魔法「太陽のエクスプロージョン」を発射できるらしい。聖属は太陽と関係があるのかとエラを見ると、彼女は本を差し出してきた。


 「持ち帰って研究して構わないか?」


 そう尋ねると、聖職者は深く頷いた。



▼△▼△▼△▼△



管理官の視点


 「姐さん、ちょっと質問があるんだけど、アレ何ですか」


 「直道、アレ初めてかい? ……悪魔だよ。肉体を持つ生物を支配して惑星を管理している霊体だ。低級から支配者(王)までいる。低級は一般人を殺人鬼にしたり、上級は戦争を起こしたりする。今回は上級だね。強敵だよ。平時なら即介入するけど、今回は外部のサポートがいるから……」


 そう言って、姐さんは手をひらひらと振り、管理室に戻るよう促した。


 ついにアイルランドの悪魔と対決か。アイルランドの女王も害獣対策として強い勇者を召喚しようとしたが、強いことは強いが邪悪なモノを呼び出してしまった。


 幸いと言うべきか、同時期にイザベルが現れたことは大きい。それに、精神体である悪魔を受け入れられる強い憑代がなかったため、召喚された魔導士は即死してリッチ状態になった。しかし北アイルランドから調査に来た老聖女が憑代となり、二十代の姿でアイルランドを支配している。


 助けることはできないが、何とか乗り切ってもらいたい。


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