第49話 決闘
「私はアリッサに勝つ。アリッサに勝って、私を見捨てたローゼンベルクをぎゃふんと言わせてやる。次のデュエルを楽しみにしていなさい」
「お言葉ですがバーニング・ライガーは最強です。そしてわたしも。長いブランクがあったお姉さまでは勝てません」
マリーベルが『アリッサに勝つ』と言った途端に、アリッサの様子ががらりと変わった。
さっきまでの健気な妹はどこへやら、アリッサは強い口調でマリーベルに言い返す。
「ずいぶんな自信ね」
「自信ではなく事実です」
「事実、ね。傲慢で身勝手なローゼンベルクが、すっかり板に付いてきたじゃないの。昔はあんなに可愛かったていうのに」
「お言葉ですが、ローゼンベルクは傲慢でも身勝手でもありません」
「ローゼンベルクの全てを手に入れたあなたにとっては、そうなんでしょうね。でも私にとっては違う。ローゼンベルクは私を捨てた。あんなところに帰るつもりなんてさらさらないわ」
「お姉さま……いいでしょう、そこまで言うのなら分かりました。わたしはお姉さまに決闘を申し込みます!」
「け、決闘?」
そのあまり時代錯誤な物言いに、俺は思わず口を挟んでしまった。
もちろん2人はそんな俺には取り合わない。
互いに互いだけを見つめ合い、対峙し、言葉を交わす。
「今から決闘でお姉さまを完膚なきまでに叩きのめして、力づくで分からせてさしあげます。ローゼンベルクの炎が清く正しく美しく、なにより最強であることを、お姉さまの身体に刻み込んでさしあげます」
「言ってくれるわね。できるものならやってみなさいな! 私が勝ったら2度と余計な口出しはしないでよ」
「ではわたしが勝てば、お姉さまはローゼンベルクに戻ってください。そしてマリア・ローゼンベルクとして、わたしと一緒にバーニング・ライガーで戦うんです」
「悪いけど、そんな未来はまっぴらごめんね」
2人の鋭い眼差しが激しく交錯した。
「いやいや、この会話の流れでなんでそうなるんだよ!?」
思わずツッコミ入れちゃっただろ!
戦うことそのものに意味を感じる戦闘民族かよ!?
アリッサだって、途中までは家出した姉を心配する健気な妹だったじゃん!
「ローゼンベルクは古来より決闘を重んじる家柄なのです。話して分からなければ、決闘です」
「ええぇぇぇ……」
思わずマリーベルに視線を向けると、
「ローゼンベルクのやり方は気に喰わないけど、売られたケンカは買うわ。アリッサ、運動場に出なさい。そこが演習場になっているの」
こっちはこっちでもうやる気満々だった。
「分かりました」
外に出ろというマリーベルの言葉にアリッサがこくりと頷く。
「ちょ、マリーベルも勝手な約束はダメだって。負けたらバーニング・ライガーに引っこ抜かれるとか、シャレになってないだろ。ミューレさんになんて言うんだよ」
「負けなきゃいいんでしょ。ここまで舐められて、引き下がれるわけないでしょ」
ああもう、その言動こそが間違いなくローゼンベルクの人間であることを証明しているっつーの!
マリーベルはカッカして気付いてないみたいだけど、ノリノリで決闘を受けていること自体が、まさにローゼンベルクしているからな!
言ったらアリッサの味方をするみたいだから言わないけど!
「なにがどうして、こうなった? いやマジで……」
「止めても無駄っぽいし、とりあえず今は見守ろうよ?」
「みんなでマリーベルさんの応援をしましょう!」
ずんずんと進んでいくアリッサとマリーベルに続いて、俺とアスナとリュカも運動場に向かった。
こうして、突然の決闘が始まってしまった。
始まってしまったのだ――!




