第47話「マリアお姉さま、お久しぶりです」
そうこうしている内に、俺たちは開幕6連勝、7連勝と怒涛の連勝を重ね。
ついに前半戦最後となる第8節。
アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクを擁するバーニング・ライガーとの対戦が決まった。
(この第8節が終わるとゴッド・オブ・ブレイビアは一時中断し、代わりに全姫騎士が参加する負けたら終わりの勝ち上がり戦──ドラゴンキング・トーナメントが開催される)
いつものように食堂でリュカとマリーベルと朝食を食べ終えた俺が、だけど頭の中でアレコレ対策を考えながら――考えずにはいられない――食後のお茶を飲んでいると、
「た、大変大変!」
アスナが息せき切って駆け込んできた。
「朝からそんなに慌ててどうしたんだよ? ほら、お茶でも飲んでまずは落ち着けって」
俺は軽く一口つけただけのお茶のカップをアスナに手渡す。
「これが落ち着いていられますか!」
とか言いつつ、アスナは俺が差し出した飲みかけのティーカップをひったくるように受け取ると、ごくごくと全部飲み干してしまった。
「……全部飲むかよ普通?」
「えへへ、のど乾いてたから、つい。お代わりある?」
「お前は遠慮って言葉を知らんのか。まぁいいけどさ。で? なにがそんなに大変なんだよ。ほい、お代わりだ」
俺は急須から二番煎じをカップに注ぎながらアスナに尋ねた。
「アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクが来たの!」
「来たって、どこに? 急に何の話をしてるんだよ?」
まったく意味が分からずに俺は小首をかしげた。
「だからここに来たの!」
「ここって? え、まさかここに来てるのか?」
「だからさっきからそう言ってるじゃん! 新聞を取りに行ったらいきなり声をかけられたの! あ、そうだ。サイン色紙取ってこないと!」
2番煎じを飲み干したアスナが、ぴゅーっと自室へと走り去った。
そんなアスナと入れ替わるようにして、
「お邪魔いたします」
なんとアリッサ・カガヤ・ローゼンベルクが――長いからアリッサでいいか――食堂に顔を出したのだ!
「あ、えっと、おはようございます。 あ、お茶を入れますね!」
突然の来客に焦ったように挨拶をして頭を下げたリュカが、ハッと気づいたように顔を上げると、お茶を入れに走る。
2番煎じではなく1番茶を入れ直すようだ。
「いいえ、お気遣いなく」
というアリッサの言葉は多分、聞こえていないな。
「どうもお久しぶりです。今季も相変わらずのご活躍のようで」
「あなたはたしかフレースヴェルグのデュエル・アナリストの――」
「今季はライトニング・ブリッツに移籍したんです」
「そうでしたか」
俺は裏方なのでほとんど話したことはないが、一応、顔見知りだ。
表彰式後のパーティなんかで、何度か挨拶をしたことがあるからな。
でもまぁしょせんはその程度の関係なので、会話も当たり障りのないもんである。
と、俺はアリッサの視線が俺ではなく、既に別のところに向いていることに気が付いた。
マリーベルを見ている?
俺の見立てた通り、アリッサはマリーベルの前に向かうと、小さく頭を下げてから言った――とんでもない一言を。
「マリアお姉さま、お久しぶりです」
と。
「お姉さま? えっと、マリーベルが? アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクの? それにマリアって」
「え、マリーベルさんはローゼンベルクの人間だったんですか?」
「言われてみれば、たしかにマリーベルちゃんは炎属性だもんね。でもアリッサ・カガヤ・ローゼンベルクのお姉さんだったのなら、教えてくれたらよかったのに」
思いもよらなかったアリッサの言葉に、俺、お茶セットを持ってきたリュカ、サイン色紙とペンを取ってきたアスナの視線がマリーベルへと集まった。




