表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/106

第39話 酔っ払いアスナちゃん

 その帰り道。


「ミューレさんごめん、忘れ物しちゃったから戻って取ってくる」


 マリーベルがハッと何かに気付いたように言った。


「さっきのお店かい?」

「うん、そうだと思う」


「帰る前に気付いて良かったね。じゃあ取りに行こうか」


「ううん、私一人で大丈夫だから。ミューレさんお酒飲んでるでしょ。早く帰って寝ちゃってよ」


「そうかい。ならそうさせてもらおうおかな。実を言うと結構、足がふらふらでね」

「ふふっ、いつになく飲んでいたもんね。じゃあまた後で。こけたりしないでね」


 そう言い残して、マリーベルは来た道を足早に戻っていった。


「夜も遅いですし、マリーベルさん1人で大丈夫でしょうか?」

 と、マリーベルを見送りながらリュカが心配そうにつぶやいた。


「マリーベルなら特に問題ないんじゃないか?」


 か弱い女の子ならいざ知らず、現役の姫騎士なら仮に暴漢に襲われたとしても簡単に返り討ちにできてしまう。


 姫騎士は、姫騎士デュエル以外での積極的な魔法の行使は認められていない。

 が、しかし。

 正当防衛ならその強大な力を――適正な範囲であれば――行使することは認められている。

 とても一般人が太刀打ちできるような相手ではない。


「それでもやっぱり女の子ですし……」

 しかし心優しいリュカは、マリーベルのことがどうにも心配のようだ。


「じゃあ俺がちょっと見てくるよ。みんなは先に帰っていてくれ」

「だったら私も行きます」


「悪いんだけど、リュカにはそこの酔っ払い2人を、無事に連れ帰って欲しいんだ。むしろそっちの方が心配だからさ」


 2人とはもちろんアスナとミューレを指している。

 2人とも気持ちよく飲んで、気持ちよく酔っぱらっていた。


 特にアスナは酷かった。


「えへへー、ぜんぜん酔っぱらってないってばぁ……ほんとほんと。ゆくぞー、あすなー、てすとはひゃくてん~」


 へべれけに酔っぱらって、自作のアスナちゃんソングまで歌っている。

 恥ずかしいから本っっっっ当にやめて欲しい。

 しかも本人は覚えていないであろうことが、最高に救いようがなかった。


 ミューレは一応、姫騎士ではあるものの、魔力齟齬(そご)という病気を抱えているし、それこそアスナはか弱い一般女性だ。


 マリーベルとどちらが心配かと問われたら、俺としてはこっちの2人の方がよっぽど心配だった。


 俺とリュカのどちらかが、2人を安全に連れて帰る必要がある。

 そして俺よりもリュカの方が強い。


 リュカが接近戦で弱いのは、あくまで姫騎士同士のデュエルでのこと。

 防御加護を展開した時点で、一般人はリュカにダメージを与えることができなくなる。


 だから役割分担としてはこれがベストなはずだ。


「分かりました」


 リュカはわずかに逡巡(しゅんじゅん)した後、俺と同じ考えにたどり着いたのだろう、こくんと頷いてくれた。


「じゃあまた後でな。2人を頼んだぞ」

「はい、頼まれました」


 俺はリュカたちと別れると、マリーベルの後を追って焼き肉屋への道を戻り始めた。


 しばらく行くとすぐにマリーベルを発見する。

 すぐに声をかけようとして、思いとどまった。


 マリーベルの前に、小さな女の子がいたからだ。


「あれは迷子……っぽいよな?」


 迷子と思しき女の子が不安そうな顔でマリーベルを見上げていて、マリーベルはどうしたらいいか分からずに困っているようだ。


 迷子の女の子を放ってはおけなくて、だけど上手く接することができないで困っている――そんな状況だろうか。


 俺はそう当たりをつけると、2人から少し離れたところから声をかけた。


「マリーベル、どうしたんだ? 迷子か?」


 その場でしゃがんで笑顔を作ると、ゆっくりと優しい声でまずは状況を確認する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ