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のじゃロリ魔王姫さまはNPCじゃありません!~ネタキャラ? いえ、レアキャラです!~  作者: 十一屋 翠
第二章 のじゃロリ王国ギルド設立編

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第27話 陰謀渦巻く調印式の始まり

「ドラゴンの使者様の命令を受け入れますっっっ!!」


 鱗族の船に降り船の修理を提案した俺だったが、何故か鱗族達にひれ伏されています。

 何が起きた?


「え? 何で皆ひれ伏してるんだ? あの子魔族だろ?」


「とりあえず俺らもひれ伏しとく?」


 そこのお前等プレイヤーだろ。


「ええと、なんじゃドラゴンの使者って?」


 正直この状況はよろしくない。

 だって絵面がロリにひれ伏す集団というスクショ撮られたら絶対ネットに広まる光景なんだもん。


「天より舞い降りた貴方様はドラゴンの使者にございますれば」


「いや、羽を持った種族は他にもおるじゃろ。魔法で疑似的に飛ぶことも出来るし」


「そのようなまがい物などではありません! 貴方様の背の羽はまさしくドラゴンの羽! その龍気の輝き、我等には分かります!」


 竜気? まったく心当たりが無いんだけど!?


「バットン、どういう事じゃ!?」


 俺は小声でバットンに何か知らないか尋ねる。

 もしかしたら俺の知らない親やご先祖の設定があるかもしれないからだ。


「恐らくは魔王核の影響だット。姫様はアースドラゴンの魔王核で貴血に覚醒したット。貴血への覚醒は使用した魔王核のモンスターの影響を受けるんだット」


「そう言うことか!」


 つまりあれか、貴血の覚醒は汎用クラスチェンジじゃなく特化職へのクラスチェンジだったってことか!

 普通のゲームだと上級職への進化はレベル、ステータスなんかを必用な数値にするものだが、特別なアイテムや条件を満たすと進化出来る特殊職というものもある。

 さしずめ俺の進化はドラゴン系進化ツリーで、副産物として鱗族NPCが好意的になるみたいな感じなんだろうな。


「あー、成る程のう。ではまぁ、修理させてもらうのじゃ」


「「「「ありがたき幸せっっっ!!」」」」


 あわや沈没か戦端を開くかというところだったが、何とか纏まってよかった。

 鱗族達は小舟で小島へ避難し、その間にレフリス達が船の修理を行う。


「おーい、俺達も手伝うぜー!」


「おお、感謝するのじゃ!」


 それを見ていた他種族のプレイヤー達も何かのイベントが始まったのかと修理の手伝いを申し出てくれた。

 完全に勘違いで申し訳ないんだがありがたい。

いや、それともこれも本当にイベントだったりするのか?

 俺自身が偽イベントな所為で本物と偽物のイベントの見分けがつかないんだよな。

 うごご、俺は一体何者なんだ……


「なんて馬鹿な事しとる場合ではないな」


 一旦俺も小島に戻ると避難していた鱗族達が一斉にひれ伏す。


「あー、そういうのよいから。楽にしてくれ」


「はっ!!」


 代表らしき鱗族が立ち上がると他の鱗族も立ち上がる。


「ドラゴンの使い様、オレは鱗族の代表ゴムレバと言います! 国交回復会議の為にやってまいりました!」


「うむ、よろしく頼むぞ。会議の打ち合わせもあるじゃろうから、船はわらわ達に任せて宿舎に向かうとよい」


「ははーっ! 行くぞお前達!」


「「「「はいっっっ!!」」」」


 俺の指示を受けて一斉に宿舎へと向かうゴムレバと鱗族達。

 でもこの状況、これから行う会議的に良いのかなぁ?

 そんな不安を抱きながら宿舎に帰ると、使節団の面々が満面の笑みで俺を出迎える。


「さすがは姫様です! まさかあの鱗族を従えてしまうとは!!」


「姫様が前に出てくだされば鱗族との交渉は安泰ですな!!」


 おおう、めっちゃ俺を利用する気満々だ。


「悪くない状況だット」


 と思ったらバットンまでそんな事を言い出した。


「しかし会議に参加する種族同士があからさまに仲が良いと他国が警戒するのではないか?」


「それは他の国も同じだット。寧ろ僕達は三種族よりも遅れて到着したから裏の連携で後れを取っているット」


「3種族が手を組んでいるという事か?」


「その可能性は十分にあるット。政治は裏でどんな形になっているか分からないものット」


 うわぁ、それ本番の会議で絶対何かあるって事だよな。

 いやイベントなんだから何かないとプレイヤー的には困るんだけど。


「姫様の立場的にも良い事だット。鱗族が姫様に対して好意的なら政治的に有益な駒になるット!」


 あー、そういう考えもあるのか。って言うか駒扱いかぁ俺。


「じゃが、それはそれでわらわを狙う者が増えるのではないか?」


 他の王位継承者だけでなく反対派も狙ってくることになるぞ。


「どうせ姫様の敵と反対派はセットだから気にしなくて良いット。それよりも新しい権益を求めて姫様に死なれたら困る連中が防波堤になってくれるット」


 あー、反対派は第三王子派閥って港町の領主が言ってたもんな。

 その後改めて鱗族を交えた事前交渉を行う事となり、何故か俺が水着でない事を残念がられたりしつつも本番の式典の日は近づいていた。

 誰が残念がったのかは黙秘する。


 ◆


「昨夜も暗殺者に狙われたのう」


「使節団の人達も狙われたみたいだよ」


 もはや恒例行事になった暗殺者の襲撃。

 今回は反対派も混ざってるからいつもより規模が大きかったようだ。


「他の種族の所も似たようなもんらしいぜ」


「露骨に他種族の特徴を見せる暗殺者の目撃証言がありますが、逆に言えば複数の種族に反対派が居る証明となっていますね」


「そうなると暗殺者の件はお互いに話題に出さん感じじゃろうな」


 会議を有利に進めようと暗殺者の件を議題に出せば、逆に自分達の首を絞める事態にもなりかねない。


「そうだお嬢。頼まれてた情報だがプレ、向こうの護衛の冒険者達に聞いて来たぜ」


「おお、助かるのじゃ」


「けどこんな情報居るのか?」


「高い確率でな」


「そうか、お嬢がそう言うならそうなんだろうな。分かった。護衛は俺達に任せろ」


 さて、調印式ももうすぐ始まる。

 安全の関係で今回の式典会場に参加できるメンバーは限られている。

 まず俺達親善大使と使節団。そして正規の護衛騎士。

 あとは俺の個人的な騎士という名目のヒメキ。

 モヒカンは個人的な信仰の理由で正装するのを嫌がったので、会場の外の護衛に回っている。

 そしてレフリスは……


「レフリス、このメイド服をやるからわらわの世話役として会場内に入って欲しいのじゃ」


 アイテムから王宮のメイド服をとりだすとレフリスに渡す。


「ふぉぉぉっ!? こ、このメイド服は!?」


「王宮の正式な装備じゃ。わらわには装備できんでな、お主にやろう。ただし悪さするなよ」


 うん、以前城から出る為の変装に使おうとして失敗した奴である。


「わーい! 高級メイド服だーっ! ふふふ、これは創作が捗るぞーっ!!」


 ウッキウキのレフリスがメイド服に着替える。

 うーん、メイドさんだ。良いよねロングスカートのメイドさん。


「お姫様~、かゆいところはございませんか~!」


「それ違うものが混ざっとらんか?」


 そうこうしている間に式典会場への移動をすることになる。

 既に会場内は各国の使節団が入っており、更に三国の親善大使も到着していた。

 鱗族の親善大使は来ていないので、恐らくはこの小島に到着した順番で親善大使が入っているのだろうか?

 なんかこの順番にも作為を感じるなぁ。


「魔王国親善大使、マルシエル=リム=オーヴァロド様の登場です」


 司会役を担当する守り人が俺の名を呼ぶと、スポットライトのような光が俺に集まる。

 同時に複数の魔法通信カメラが俺に向けられる。

 以前の俺だったらあからさまに動揺しただろうが、生憎とあの地獄のコンサートを潜り抜けた俺には通じない。

 今の俺は表情筋と感情を完全に分離することが出来るのだ!


「マルシエル=リム=オーヴァロドじゃ。此度の調印式で各種族が手を取り合えることを望む」


 事前に用意されたセリフを読み上げると、用意された席に座る。

 次いで鱗族の親善大使ゴムレバが現れ、同じような宣誓をすると着席する。

 鱗族はしっぽが生えているのでちょっと座りにくそうだ。


「それではこれより国交回復会議を開催します」


 何度も言うがこの会議は既に何をするのか決まっている。

 現地で使節団による最終調整は会ったが基本的には台本通りに進む訳だ。

 何かトラブルが無い限り。

 そして国交回復の調印書を守り人が読み上げたのだが……。


「……以上の理由から人族、獣族、妖精の三種族は魔族が過去の大戦で犯した罪を償う事を要求し、以下の条件を飲むことで国交回復の締結とする」


その内容は酷いものだった。

 過去の大戦の原因は魔族にあり、戦時中も多くの卑劣な行いをした。だから責任取って不平等条約を受け入れろというものだ。

勿論そんな事実はない。少なくとも魔族の歴史の中では。


「なっ!? これは一体どういうことですか!? 事前の打ち合わせと内容がまるで違うではないですか!」


 この内容に魔王国の使節団が困惑の声を上げる。

 どうやら彼等も条約文がこんな事になっているとは知らなかったみたいだ。

バットンが言っていた通り何かしてくるとは思ったが、これは予想以上にえげつないぞ。


 そうなると鱗族への対応が気になるな。

 遅れてきた種族に対して不平等条約を結ばせようというのなら鱗族にもなにかしらのアクションを行うはず……と思ったんだが、三種族は鱗族に対しては一切言及しなかった。


恐らくお前等には手を出さないから一緒に魔族包囲網に参加しろと言いたいんだろう。

実際魔族と鱗族は過去にマジな因縁があったらしいので、それでいけると考えたんだろうな。

船の件で期待したいけど、種族全体の国益を考えると期待は難しいか。


 なら、予定通り動くとするか。

 俺は各種族をじっと観察する。


「さぁ魔族の返答を聞きましょうか」


ロウゼル王子が俺に回答を迫ってくる。

どうもこの流れ人族が会議を主導している感じがするが。

ただ人族と獣族は仲が悪い筈なのでどうやって人族の主導を受け入れたのだろうか?

妖精の口利きがあったとしても妖精は妖精で獣族に対して思うところがあった筈だしな。


「さぁ、答えて頂こうか! 無言は同意したものと受け取らせてもらいますよ!」


 なんとしても言質を引き出すぞとばかりにロウゼル王子が声を張り上げる。


「また応じない場合はこの会議から魔族を除外する事になります。その場合魔族だけが世界から取り残される事になりますよ」


 それは世界対魔族の戦争になるぞという脅しだ。

 それに対して俺は……


「勝手にすればよいではないか」


 切って捨てた。


「「「……は?」」」


 一瞬、何を言われたのか理解できずキョトンとするロウゼル王子。

 いや、彼だけではなくマガエラとカナンマもだ。


「ほ、本当に良いのですか!? このままだと世界対魔族の戦争になるのですよ!?」


「おお、そうなったら怖いのう。ところで獣族の代表に聞きたいのじゃが」


「っ! ふん、お前達の口車になど乗らんぞ! 話題をすり替えるようなら宣言を承認したと判断する!」


 マガエラはすぐに我に返ると一切の言葉を聞き入れないと拒絶する。

事前に聞いていた獣族の性格的にこんな一方的な対応はしない筈。

恐らくこの反応も事前に打ち合わせていたんだろうな。


 けど、こっちは獣族が絶対に聞き流せない話題で攻める。


「いやなに、獣族も本心で平和的な条約締結を望んでいるか確認したいんじゃよ。聞いた話では過去獣族は人族に毛皮を狙われ襲われていたというではないか。その事も無かったことにして人族と仲良くするのじゃな?」


「……なに?」


 俺が質問した途端、マガエラのこめかみにビキリと血管が浮く。

 そう、今回の会議本番で何かしらのトラブルが起きると予想していた俺は、あらかじめバットンから各種族の確執について聞いていた。

で、そのうちの一つが人族と獣族の毛皮騒動だ。


 何でも獣族は血の濃さによってケモ度が異なる種族で、より獣の血が濃い者ほどケモさが増して高貴な血筋と認識されるらしい。う-ん、モさが変わるとかとってもマニアック。


 ただその所為で獣族は異種族とは思われず動物と勘違いされていた時期があったみたいで、異種族と判明したあとも動物扱いする人族が多かったのだという。 

 それが原因で人族と獣族は争うようになったそうだ。

 聞いた話だとケモ度の高い王族を襲った事が最大の原因と言われている。


「話題をすり替えるのは宣言を承認すると判断すると言ったはずですよ」


 怒りに震え言葉が出なかったマガエラに対しロウゼル王子がフォローに入る。


「何を言う、全てのわだかまりを捨てるのじゃろ? 聞けばかつての大戦では王族の毛皮が狙われ人族と獣族の大戦に発展したのだと聞いている」


「そんな事実はありません!」


「ほう! 無いと!」


 よっしゃ、乗って来た! しかも一番言葉を引き出したかった人族の王子から!


「では使節団の護衛をしていた獣族の護衛が嘘を言ったという事かの?」


「獣族からですって!?」


 獣族から直接聞いたと言われ、一瞬だが鉄面皮が崩れるロウゼル王子。


「うむ、わらわの護衛が直接獣族に聞いて人族との確執について教えて貰ったのじゃよ。ほれ、過去の大戦では各種族が争ってと言うではないか。じゃからお互いの認識に齟齬があってはいかんと思って各種族の歴史を聞いて回って貰ったのじゃ」


「「「っっっ!?」」」


 歴史を聞いて回ったと言われ、あからさまに動揺する三種族の代表達。

 そう、これが俺の用意しておいた準備だ。

 国が違えば一つの事件に関する認識も変わってくる。

 加害者と被害者の主張が違ってくるように。

 特に今回はかつて争っていた因縁の相手同士だからなおさらだ。


 そこで役立ったのが他種族でスタートしたプレイヤー達だった。

 俺はモヒカン達に頼んで彼等から情報を集めて欲しいと頼んでいたのだ。

 で、反対派の妨害から調印式を守る為と言われると彼等も二つ返事でOKをしてくれた。


 そしたらもう出るわ出るわ。

 各種族の他種族との軋轢やらなんやらが。

 そりゃ過去に大戦も起きるよねっていうレベルで。

 コレ絶対運営の中に陰惨な歴史ものが好きなマニアが居るぞ。

 

「じゃから魔族の責任云々を攻めるなら、今この場ではっきりと人族と獣族の確執をきれいさっぱり忘れると全世界に表明して欲しいんじゃ。お主等の民もそれを望んでおるのじゃろ?」


「っ……っ!」


「……」


 俺の発言にマガエラは真っ赤な顔でこちらを睨んでくる。

もう殺気をビンビン感じるレベルだ。

 もしかしたらこのゲームには殺気というスキルが実装されているのではというレベルで。


 対してロウゼル王子は冷静な表情を保っているが、残念なことに顔面からは完全に血の気が引いていた。

そりゃね、真横に確執のある種族が殺気全開でいたらいつ喉笛噛みちぎられるか分からなくてヒヤヒヤもんだもんね。


 だが彼等にとって最大の問題はそこではなく、この会話が魔法通信カメラを通してで全世界に聞かれているという事だ。

 ここで宣言どおり確執を無かったことにすれば、マガエラは種族の怒りを捨てて人族に尻尾を振った裏切者とみなされ、ロウゼル王子は獣族との戦端を開いた元凶として責任を取らされるだろう。

 今や俺と二種族の立場は逆転し、今度は二人の方が迂闊に発言できなくなってしまった。


 正直ここまで策が綺麗に嵌ったのは、俺がプレイヤーだったからだろうな。

 もし俺がNPCだったらプレイヤーに絞って情報収集するという選択肢はなかっただろうし、NPCに聞いても利敵行為になるから警戒されて情報を得る事は出来なかっただろう。

 

だがプレイヤーは違う。

 彼等はゲームをより効率良く攻略する為になら他種族問わず情報交換も辞さないし敵対種族であろうとも手を組む。

 だってプレイヤーにはゲーム内の種族間の確執なんて関係ないからね。

 そしてもう一つ……


 俺は各種族のNPCに交じったプレイヤー達に視線を向ける。

 彼等の服に、ベルトに、身に付けたアクセサリに……

 俺の絵姿が刻まれていた。


「「「「……」」」」


 うん、そうなんだ。彼等は俺のコンサートグッズと引き換えに同族の情報を教えてくれたんだ。

 ほら、元々俺のコンサートが開かれた時って、他種族とは魔法通信で通話こそ出来たものの直接的な交易はしてなかったじゃん。

 それはつまりグッズも同様だった訳で。

 そして深くコンテンツにハマった人ほど限定グッズを欲しがるわけですよ。


 で、それに目を付けたガメッツから、俺の限定グッズを餌に情報収集を手伝ってもらおうという提案をしてきたんだ。

 そんなん引っかかる奴いるんかいと思いつつ、一人でもいたら居たら儲けもんかなって軽い気持ちで許可したんだが……結果は大成功だった。

俺の想像をはるかに超える数のプレイヤーから状況提供の申し出が起こったの出る。


お蔭で知らない情報がわんさか入ってきた。きたんだが……。

ガメッツ! お前、国家間交渉に向かう船になんてもん乗せてんだよ!!

 アイドルグッズ満載した使節船とか嫌すぎるだろ!!


「あーもうやめだやめだ!」


 するとこの状況に我慢出来なくなったのか、協議中であるにも関わらずマガエラがドカッと椅子に身を沈め、更に足をテーブルの上に乗せる暴挙に出る。


「だから気に入らないって言ったんだこんな茶番! 何が皆で仲良く利益を分け合おうだ! 種族全体の利益の為にもこの話に乗るべきだとか言って人族の話に乗った結果がこれだぞお前等! 本当に親父様が認めたんだろうな!」


「そ、それは……その」


 と、魔法通信カメラをチラチラ見る獣族の使節団のメンバー達。

 どうやら答えたらマズい理由があるらしい。

 功を焦って暴走したのか、いやこいつ等が獣族の反対勢力なのか?


「人族の、アタシら獣族はこの茶番から抜けさせてもらうぜ。国交回復はともかくこれ以上不平等な条約を結ばせるつもりなら獣族は魔族側につく。その方がお前等と心置きなく戦えそうだしな!」


「なっ!」


 あっさりと獣族が梯子を外した事で慌てるロウゼル王子。


「ははっ、先祖の怒りを鎮めるのも領土を奪うのも、戦士らしく正面から戦わないとつまらないしな!」


 うんうんと頷く鱗族達。この世界、脳筋種族多すぎない?

 ともあれこれで勢力は3対2になった。さて、人族と妖精はどう出る?


「我々妖精も人族の企みから手を引かせてもらう」


 おやあっさり見限った。


「な、何を言う! 元々この計画を勧めてきたのは妖精側ではないですか!!」


「何の事かな。旗色が悪いからと我々に責任を押し付けようとするのは止めて欲しいものだ。それに獣族を誘ったのは人族ではないですか。我々は何もしておりませんぞ」


 丁寧に梯子を外すカナンマ。

 あー、これどっちが主犯でも妖精に不利な証拠が出ないように動いてるな。

 だとすれば妖精も厄介な種族だなぁ。


 さぁ、これによって完全に孤立無援となったロウゼル王子はどう動くか。

 と思ったのだが以外にもロウゼル王子は落ち着いていた。

それどころか額に指をあて、大きくため息を吐いている。


「あーもうやめです。責任追及などもうどうでもよいです」


「おや、随分あっさりと諦めるのじゃな」


「それはもう。獣族も妖精もあっさり裏切りましたから。これ以上私がどうこう言っても恥の上塗りです」


 現在進行形で全世界に陰謀失敗の恥が晒され続けてるけどな。


「そもそもこんな茶番、元々どうでも良かったのです」


「茶番じゃと? 自らの種族の国益を茶番と言うか?」


「ええ、茶番ですとも。こんな些末な事がきっかけで崩壊するような杜撰な計画など茶番でしょう。単に陛下の命令だから従っていただけの事」


 陛下、つまり人族の王の命令って事か。

 こんなえげつない計画を実行するあたり、人族の王はかなり欲深なキャラみたいだな。


「ですが私にはそんなものよりも遥かに重要な目的があるのです!」


 それ以上に重要な目的? ……はっ! それってもしかして!!


「まさかお主っ!?」


「そう!」


 立ち上がると同時に身にまとっていた上着を脱ぎ捨てる人族の王子。

同時に両後ろに控えていた騎士達から何本もの光輝くナイフを受け取り構える。


「よもや王子自身が反対勢力じゃったか!」


 ヒメキと護衛の騎士達が即座に前に出ると俺を守るべく前に立ちふさがる。


「まさかこの状況で戦うつもりか!? 乱心したか人族の王子!」


 全くだよ! 今の状況だと最悪全ての種族を敵に回すんだぞ!

 それともそうなっても勝てる見込みがあるってのか!? ってあれ?


「武器ではない?」


 ロウゼル王子が構えた何本もの光輝くものはナイフではなく棒だった。

 凄く見覚えのある棒。


 次いで後ろに控えていたメイド達がロウゼル王子の背にジャケットのような物を羽織らせ、その頭に細長い布を巻く。

 その姿はまさに……


「この後にマルシェラ姫のコンサートがあるのですからね!」


 由緒正しいオタ活者の正装だった。


「乱心じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

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