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のじゃロリ魔王姫さまはNPCじゃありません!~ネタキャラ? いえ、レアキャラです!~  作者: 十一屋 翠
第二章 のじゃロリ王国ギルド設立編

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第19話 地獄のコンサート開催

 王都の一角、貴族達が暮らす貴族街の端っこにひと際大きな屋敷が建っていた。

 その屋敷の周囲には無数の人だかりが出来ており、彼等は肩から絵の描かれた手ぬぐいや同じ絵の描かれた衣装を羽織っている。

 更にその両手にはモンスターから得た素材と鉱石を組み合わせて作った短い棒が握られていた。

 一見武器のようだが武器ではない。効果はMPを消費すると流し込むと光るだけ。


「今日の為にMP増加スキルを習得して来たぜ」


「俺もだ!」


 ガチ戦士系のスキル構築をしているであろうプレイヤー達が貴重な経験値をこの日の為に無駄遣いしている。


『あ、あー。これよりマルシェラ=リム=オーヴァロド姫様のお屋敷完成式典コンサートを開催します』


「「「「おおおおおおおっ!!」」」」


 式典なのかコンサートなのか分からない開催の言葉が終わると、屋敷の門が開き、人々が中へとなだれ込んでゆく。


「押さないでください!」


「チケットを提示してください! チケットを提示しない方は入れません!」


「貴様! これは偽造チケットだな! 商人連合の技術を甘く見るなよ!」


 どさくさに紛れてチケットを買わずに入ろうとした者、偽造チケットで入ろうとした者がスタッフにとっ捕まり、そのまま王都の衛兵に引き渡されてゆく。


 そうして屋敷の入り口である大ホールに人が集まった。

 入りきらない人達は庭に設置された魔法映像装置の前に集まり、それでも入りきらない人達は王都、そして国内の町、他国の町の食堂や冒険者ギルドにレンタルされた魔法映像装置を前に固唾を飲んでこれから起こる事を見守る。


 パッパッと大ホール内の灯りが消え、ホールが暗闇に包まれる。

 そして二階の階段前に魔法の灯りが灯された。

 そこに立っていたのはこの日の為の特別なドレスに身を包んだ美少女、つまり俺が居た。


「皆よくぞ集まってくれた! わらわはマルシェラ=リム=オーヴァロド!! オーヴァロド魔王国の王女である!」


「「「「おぉぉぉぉぉぉっ、姫様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」


 暗闇の中無数の光る棒が歓声と共に揺れる。

 わぁ、コンサート中のアイドルの見る光景ってこんな感じなんだぁ。なんだぁ……


「ここにおらぬ者達も、わらわの勇姿を見るが良い!」


 台本の通りに俺は魔法通信カメラに視線を向けて語り掛ける。

 俺はこれから、全世界に向けて歌う事になる。

 屋敷の建築予算不足を補うための金策としてやる羽目になったアイドルコンサートを。

 中身成人のマッチョ男が! のじゃロリ美少女として! アイドルコンサートを!


「なんだこの地獄っっ!!」


 いかん、つい本音が出た!

 そして間髪入れず曲のイントロが始まる

 しまった! 曲名を言いそびれた!

 だがこの曲はイントロからすぐに歌詞が始まる為、もう曲名を入れる余裕がない。

 しかたなく思考を切り替えた俺は曲とダンスに専念する。


 ―わらわに溺れよ―

 ―ここは闇のダンスホールー

 ―人も魔も死者もみな踊り狂う―


 暗闇の中、ロリな見た目で退廃的な歌詞を歌う俺。


 ―現実じゃない 夢じゃない 幻じゃない―

 ―何も ない ない ない!!―


 現実であってたまるか。夢であってくれ。幻だったらどれだけよかったことか。

 歌詞と本音が相反しながら俺は無心で歌い踊る。

 心を切り離さなけりゃこんな恥ずかしいことシラフで出来るか!!


 ちなみにのじゃロリ言葉縛りのペナルティは歌の歌詞には適応されないらしい。

 適応して欲しかった!!


「二曲目、ゆくぞ! ―ロイヤル・ロイヤル―!」


 二曲目は高貴で傲慢なお姫様の出だしから。

 しかし中盤から一人寂しい孤独を吐露し、サビからは寂しさを塗りつぶして王女として君臨する虚飾の傲慢さを歌う。


「お主等! まだ疲れてはおらぬよな!?」


「「「「おおおおーっっっ! 姫様――――っ!!」」」」


 観客が興奮気味にペンライトを振り回す。


「ウサウサ・プリンセスじゃ!!」


 三曲目は俺のウサ装備とマール平原でのマールビットとの戦いとふれあいからインスパイアを受けたらしい曲がかかる。

 この曲だけはコンサート用のドレスではなくウサギ装備だ。

 もうね、曲名からイメージできる通り凄くキュンキュンする(らしい)アクションでポーズを付けながら踊る。


「「「「うぉぉぉぉぉっ!! ウサウサ!!」」」」


 野太い声の観客達から合いの手が上がる。

 キツイ、本当に心がキツい!

 何が悲しくて首の角度を1度単位で指導を受けた上目遣いポーズでハートやうさ耳ポーズをしないといけないのか。

 お前等分かってるのか? こののじゃロリの中身はマッチョ男なんだぞ!?


 そして三曲目が終わると、呼吸を整えるためにトークタイムに入る。


「皆今日はよく来てくれた。お主等のお陰でわらわの屋敷は予定よりもかなり早く建築する事が出来た。感謝するのじゃ」


「「「「ありがたき幸せっっっっ!!」」」」


 ノリノリで返事をしてくる観客達。

 お前等は楽しそうで良いな。


「予定通り屋敷の一部はわらわの家臣である冒険者達に解放され、皆の拠点となる。お主等の活躍を期待しておるぞ」


「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


「さぁ、後半戦いくぞ!!」


「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」」」」


 ◆


「はー、疲れたのじゃぁ」


 ソファーに沈み込んで、俺は肺の中の空気を全部吐きだす勢いで息を吐く。


「お疲れ様」


 レフリスがねぎらいの言葉と共にジュースを差し出してくる。


「うむ、ありがとうなのじゃ」


 あー、水分と糖分が疲れた体に染みる。栄養もへったくれも無いゲームだけど。


「いやー、今日は本当にお疲れ様でした姫様」


「出たな元凶」


 ニッコニコのギラギラした笑みを浮かべ揉み手と共にやってくるガメッツ。

 もうなんかそういう怪異なんよ。


「お陰様でグッズは完売。事後通販の要望が凄い事になりましたよ」


 また知らないしょうばいしてるぅ。


「なんでそんな事にまで手を染めとるんじゃ。


「何を仰います! コンサートと言ったらコンサートグッズ! 事前応援グッズの販売からコンサートの記念品まで、コンサートは始まる前から終わった後まで商売の塊ですぞ!」


「あのペンライトまでお主等の仕込みか……」


 まさかネトゲにまでペンライトを持ち込むとは。恐るべし商人の欲望。


「ともあれ、これでようやく面倒事が終わったのじゃ。暫くのんびり暮らすのじゃ」


 俺、普通の冒険者に戻るんだ。


「そんなことおっしゃらずに。またコンサートを開催しましょうよ。姫様ならトップアイドルを狙えますぞ!」


「作曲家もそう思います」


「振付け師もそう思います」


「衣装係もそう思います」


「二度とやらんわーーーーっ!」


 こうして、地獄のようなコンサートは終わったのだった。


 ◆


 カタカタカタとキーボードを叩く音がオフィスに響く。

 俺は社会人。生活する為には働かなくてはいけないのだ。


「東堂、この件だがクライアントに説明する為にデータ纏めておいてくれ」


「分かったのじゃ」


 上司の指示に返事をしながら視線を上げると、何故か上司がキョトンとした顔でこっちを見ていた。

 ん? どうしたんだ?


「のじゃ?」


「っ!?」


 瞬間、自分がとんでもないヘマをした事に気付いてしまう。

 やっちまった! ついゲームのノリでのじゃロリ言葉が出ちまった!

 うぉぉー、何とかいい感じに誤魔化さないと!


「あっ、それのじゃ姫ですよね」


「のじゃ姫?」


 同僚の女性の言葉に上司が首を傾げる。


「知らないんですか課長? ILLっていうゲームに登場するお姫様の事ですよ。のじゃ姫やのじゃロリ姫って呼ばれてて、この間ゲーム内でコンサートを開催して凄く盛り上がったんですから」


「はぁー、ゲームの中でコンサートねぇ。最近のゲームは凄いんだなぁ」


 上司は最近のゲームに興味が無いらしく、生返事を返す。


「のじゃ姫は今人気急上昇中でSNSや配信サイトでものじゃ姫の話題で持ちきりですよ」


「そうなの!?」


「そうですよ、マールビットと戯れるのじゃ姫の動画ほんっと可愛かったんですから! って、東堂さんもSNSで知ったんじゃないんですか?」


「あ、いや、俺はゲームで」


「ええっ!? 東堂さんILLの第一期プレイヤーに当選してたんですか!? 良いなぁ。生ののじゃ姫様見れたんだ、うらやましーっ!」


「あーうん、まぁね」


 え? 何? リアルだと俺ってそんなに人気になってるの? 初耳が過ぎるんですけど!?


 ◆


「つ、疲れた……」


 まさかの自分が知らない間にもう一人の自分が社会に進出していたと知って驚きを隠せない。

 どうしてこうなった。


「気を取り直してILLにインするか」


 家に帰って来た俺は食事も軽く済ませると、ILLにログインする。

 するとゲーム世界に入らず、運営からのメッセージが表示された。


――――――――――――――――――――――――

『TODO様へ ゲーム内活動についてのお問合せ』

――――――――――――――――――――――――


「おお!?」


 運営からゲームについての問い合わせ!?

 ちなみにTODOは俺がILLの第一期プレイヤー応募サイトで登録したログインネームだ。


「これはもしかしてキャラメイクのやり直しの許可か!?」


 予定ではキャラメイクのやり直しは数か月かかる筈。

 予定が繰り上がって許可が下りたのか!?

 俺はウキウキしながらメールを開く。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 TODO様 この度は当社が運営するILLをお楽しみ頂きありがとうございます。

 この度ご連絡させて頂いたのは、TODO様がプレイして頂いているマルシェラのコンサートについてでございます

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「って、え? コンサート?」


 再キャラメイクじゃないの?

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 TODO様の活動のお陰でマルシェラのコンサートはILL内外を問わず話題となり、今やゲーム外での配信を望むまでになっております。

 つきましてはマルシェラのコンサートを正式に配信サービスに登録させて頂けないかとお願いしたく連絡させていただきました。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「配信んんんんんんーーーーーーーっ!?」


 え!? 何考えてるの運営!?

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 配信に当たり、管理費用を差し引いた純利益から〇%をコンサート動画のロイヤリティとして

TODO様にお支払いいたしたいと思っております。

 またILLのプレイ規約にもあります通り、マルシェラのコンサート動画及びプレイ動画を当社の宣伝画像として別途利用させて頂きます。

 プレイべートな問題もありますので、使用するシーンについては別途ご連絡させて頂きます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ロイヤリティ!? 宣伝画像!?」


 なんだそりゃ!? どうなってるんだ!?

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 最後に、こちらも要望が多かった事なのですが、マルシェラのコンサートで歌った曲を配信サービスで個別販売させて頂けないでしょうか?

 こちらについては作曲家の〇〇様の許可を得ており、TODO様の許可を頂ければすぐに配信準備に映れる状態です。

 ロイヤリティにつきましては……

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「曲の配信……え? え?」


 立て続けに浴びせられる情報の洪水に頭がおかしくなりそうだ。

 だがまだメッセージは残っている。

 クラクラする頭を振って俺は残りの文章を読む。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 配信させていただく曲一覧

『なんだこの地獄』

『ロイヤル・ロイヤル』

 …………

 ……

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 今度こそひっくり返った。


「うっかり漏れた心の声が曲名になってるじゃんっっっ!!」


 なんということだろう。世間ではあの叫びが俺のファーストソングの曲名と認知されていたのだった……

 やっぱり地獄だよちくしょう!!

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