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1話

この話から改定した内容となります。

5/8 ご指摘により一部修正

6/20 指摘により、感嘆符・三点リーダを修正

6/27 リリエ・シフォンカートの記述を変更

―神々の黄昏―2186年1月20日に発売されたVRMMORPGだ、現在は稼動から大よそ1年が経過しているにも関わらずプレイヤー数は未だに増えているらしい。


このゲームの特筆すべき点は幾つか挙げられるが、最も特筆すべき点はAIがゲームそのものを管理していることだと思う。


運営は勿論企業が行っているが、ゲーム内のプログラムは勿論、クエストの作成やMAPの生成からバグの検知までの一切はAIが行っている。


今までのVRMMORPGを見ても、そのようにAIに管理させるゲームなんて一つも存在しないだろう。

AIに管理させる、そんな事をすれば致命的な欠陥が出るのは目に見えていたからだ。

しかし、その常識は神々の黄昏発売の公式発表で覆ることになる。


神々の黄昏を管理しているAI、名をアダムと呼ぶのだが、このアダムには今までのAIにはなかった機能が備わっていた、即ち、思考能力である、それは感情を伴い人と変わらぬ思考を可能とした。


AI自身が己で考え、決定する、後に自己進化ロジックと呼ばれるのだけど、その事については俺も詳しくないので割愛させていただくことにする。

兎に角、そのアダムの登場により、過去不可能とされたAIによるゲーム管理が実現されることとなった。



アダムはAI、つまり電子の結晶だ。

演算はもとより、プラグラムの構築や展開、バグの検知の一切が人より優れているのは自明である。

只、今まではその電子の結晶、つまりスーパーコンピューターと呼ばれるそれを扱うAIが不十分であった為、その実力を十全に引き出すことができなかったのだ。



例えるなら、今まではロボットを素人が操縦していたが、アダムという正式に訓練されたパイロットが操縦することになった、そう考えてくれると分かりやすいだろうか? 

つまり、何が言いたいのかと言うと、アダムによるゲームの管理・作成により―神々の黄昏―は過去実現されたことのない、現実とほぼ遜色ないというレベルで構築されることとなった。




俺の名前は渡瀬神わたせじん、日本名だが、祖父がロシア人で自分はクォーターとなる、お陰で瞳も薄い青だし、髪の色も金色である。身長は181cmで体重が68kgの19歳、血液型はABだ、因みに日本生まれの日本育ちで日本在住。


学校と仕事には就いていない、学校に関しては30年程前に施行された法律により、学力さえ規定の基準を満たしていれば通っている大学でお金を払い、卒業用のテストを受け合格すれば卒業資格が貰えるので、大学までの資格は既に取っている。

そして就職に関してだが、働く必要性がない、と言い換えておこう。

俺は現在一人暮らしなんだけどそれには理由がある、両親が居ないのだ、俺が15歳の時に父と母は揃って交通事故にあい鬼籍入りしてしまった。


事故の原因は、航空会社よりチャーターしていた小型飛行船の故障による自動運転の暴走、それにより飛行船は海に墜落。

直ぐに救出隊が向かったが、残念ながら見つかったのは海に消え行く飛行船と、中から発見された両親の死体のみ。

俺は当初その知らせを受けたとき、人は極度の悲しみを味わうと涙すら出ないのだと知った。

それから親戚の人が葬式を執り行ってくれたが、正直その時のことは詳しく覚えていない。

人とは慣れるものである、それから一週間が経ち、気持ちにも僅かながら余裕が出てきた頃、俺は漸く涙を流すことが出来た。


今までの分を取り戻すかのように、只、只管泣き続けた。

その時俺が考えていた事と言えば、両親の死による悲しみは勿論なのだが、自身が両親の死で涙すら流せない人間でなかったと言う安堵であったのを覚えている。


その後、無気力であった半年近くを支えてくれたのは親戚の叔父や叔母ではなく、又従妹の女の子だった。

彼女は俺より二つ下だったのだが、何故か度々自身の家に遊びに来ては、自分をお兄様と慕ってくれている。

そんな彼女は俺が塞ぎ込んでいた半年の間、一人となってしまった無駄に広い家の炊事洗濯の家事一切を俺に代わりおこなってくれていたんだ。

更には毎日、自分に優しく声を掛けてくれていたのを覚えている。

お陰様で現在じゃこの通り、元気になってゲームなんてものをやってる訳なんですが。

ん? なんだか話が随分それてしまったけど、つまり航空会社による賠償金に保険金、更には両親の遺産によって俺は一生をそれなりに贅沢に暮らせるほどの金があるわけ、よって現在進行形で職には就いてないってこと。



閑話休題それはともかく、俺の身の上話になってしまったが、ゲームの話に戻りたいと思う。

俺はそんな―神々の黄昏―を発売当初から今までのおよそ一年間、ずっとプレイしてきた、プレイした切っ掛けは実は只の暇つぶしだったのだが、今じゃどっぷり廃仕様で御座います。

ゲーム内では、先ず間違いなく1・2を争う実力兼ステータスだと言う自負がある。

ゲーム内じゃ友人が複数名いるし、一緒にPTを組んだりもする。

残念ながら現実には友達と呼べる人物は殆どいないのだが……・。


やめよう、その事を考えると底なしに落ち込みそうだ、仕方ないじゃないか……中学卒業の時には過去のことでうじうじしてたせいで友達は去っていって、高校も暫くは似たようなものだったから友達は出来なかったし、後半は大学の為に猛勉強だったので論外。


大学に至っては直ぐに卒業したから友達なんてできる筈もなく……。

やば、考えないようにと思ったばかりなのに、落ち込んできたぞ。

OK俺、COOLになろう、冷静になるんだ、深呼吸でもすればバッチリさ。


「ひっひっふ~……ひっひっふ~……」


ち、違うぞ俺! それは世の妊婦さん方がする呼吸法だ! 

すーはー。すーはー。

よし、いいぞ落ち着いてきた。

ふと、視界に映った時計を見れば丁度16時になる頃、はて、何か忘れているような? 

なんだっけ……重要な事だったはずなんだが、思いだせない。


んん? そうだ! 思い出したぞ、リアル時間で16時30分に、又従妹とゲーム内で一緒に遊ぶ約束してたんだよ!? 

現在16時5分、ゲーム内じゃ時間が2倍に引き延ばされるから(つまり此方の一分がゲーム内じゃ2分て事だ)、今からゲームにログインすれば余裕で間に合う。


俺はリビングのソファーから立ち上がると、2階の自室に向かって歩き出した。

キッチンの横にある階段を上り、一番近くにあるドアノブを回す、奥の部屋は両親が使っていたもので、その更に奥は客室みたいな扱いになっている。

自室に入ると、昔使っていた学習机の上に置いてある―神々の黄昏―の専用接続機を手に取り、無駄に広いセミダブルのベッドに横になると頭に装着する。

専用機器の形状は、昔に普及していたフルフェイスと呼ばれる頭全体を覆うヘルメット型で、色はつや消しのブラック、眼前には同じく、つや消しを施されたバイザーが取り付けられている。

視界は薄暗いものの周りを見渡せる程度には確保でき、俺はヘルメットから伸びるコードがネットに接続されているのを確認し、スイッチを起動させた。



機械独特の駆動音が鳴り、音が止むのと同時にバイザーに物凄いスピードで文字が流れていく。

ワールド設定画面ではアスガルド、最初に作られたサーバーを選択する。

次のキャラクター選択画面が表示されたので、ジンを選ぶ、と言っても1キャラしかこのゲーム作れないんだけどね。

選択完了の文字が表示されるのと同時にだんだんと意識が遠のいていくのを感じた。

そして、いつ聞いても慣れない例えるなら、一昔のテレビの砂嵐のような―ザザザザ―という音を最後に、俺の意識は水底に沈んでいった。





気づけば俺は、神々の黄昏のスタート地点である王都グランスバールの広場に立っていた、設定ではこの国グランスバール王国は建国から一千年近く経つらしく、その景観は中世ヨーロッパを思わせるややゴシック的な作りで、歴史を感じさせる空気がある。


現国王はアルベルヒ・シンセワール・ド・グランスバール24世陛下、それより前は別の王族が居たらしいが災害により全滅、現在の王の血筋が代わりに王位に就いたって話だ、この辺は前にサブクエスト:グランスバールの歴史で知った。


周りを見渡せば賑やかな喧騒と共に見える多くのプレイヤー達、ログインは必ずここからなので、自然と人は多くなり、プレイヤーの装備も初期の頃から上級者用の装備をつけた者まで様々だ、また露店関係も数多く開かれており、広大な広場の大部分を商売関係で埋め尽くされている。

人種も様々な種類がいる、軽く周囲を睥睨しただけでも獣人やエルフ、ヒューマンに魔族と選り取り見取りである。


各人種には初期能力や成長値(レベルが上がった時の能力の上昇値)に差はなく、職業によって成長値は変化する。

俺はヒューマンでキャラの容姿は現実と全く同じ、ゲームの規約で容姿の変更は僅かにしか変えられないからだ、変更できると言えば多少の見目と髪と瞳の色くらい。

ただし、エルフと魔族は耳が強制的に尖っている、エルフの方が長めで少し垂れ気味なのが特徴、魔族は長さはヒューマンより少し長いくらいだが、先端が尖っている。

獣人は耳は獣耳で、尻尾が生えているのが特徴だ。



このゲーム、容姿が良くない人がエルフを選ぶと悲惨な事になる……顔とその耳がマッチしないから妙にシュールなんだ……

獣人も選ぶ種族と自身の容姿を考えないと、同じくシュールな結果となってしまう。

なので、ファンタジーで御馴染みの亜人種はこのゲームでは比率が少ない、6割がヒューマンで2割が魔族、残り1割ずつがエルフと獣人て感じである。

ナチュラルにエルフや獣人が似合う人は、実力関係なしに貴重な存在であると言える。



さて、又従妹は時間にぴったりくるだろうからまだ余裕がある。

取り敢えず、メールの確認でもしてようか? 

思考選択でメールボックスを開いてみれば、今日付けで新着が数件着ている。

最上段に記されたプレイヤー名はリリエ・シフォンカート、内容を見てみれば今度一緒にPTでも組みませんか? とお誘いのメールであった、名前から察する通り女性でジョブは3次職である古代魔道師、獣人族の彼女とはもう数ヶ月にも及ぶ付き合いをしている仲だ。

返信に今日は先約があるから、明日以降ならおk、と入れて送信する。


次のメールに記されたプレイヤー名を見たとたん、俺のテンションは地の底にまで落ち込んだ。

それはまるで天国からケツを蹴り飛ばされ、地獄にまっさかさまに落ちるかの如く、だ。

正直言おう、俺はこのメールを見たくない、直ぐにでも削除したいくらいだ! 

しかし残念ながら、ゲーム内ではそれなりに社交的なキャラで通っている為、返信しない訳にはいかない。


別に、現実の俺が非社交的なわけじゃないんだからな? 違うんだぞ? 

仕方なく、嫌々ながら中身を見てみれば、何時でも良いから武器や防具の製作に必要な鉱石類の入手を手伝ってくれという内容であった。

まぁ、メールにハートが乱舞してて妙におねぇ口調で書いてあったのは目をつぶるとしてだ、彼、そう彼! 勘違いしてもらっては困るので明記するが、メールの送り主は男だ、彼はメールの内容から察する通りそのジョブが鍛冶師である。

鍛冶師とは、先ず一番最初の旅人の状態から一定の条件を満たし1次職の鍛冶師見習いとなり、更に特定のクエストをこなすことで2次職でなれるジョブだ、しかも生産職のせいか数が少なく、腕の良い鍛冶師となるとその人数は激減すると言う。



そんな中彼、エドワードは俺が知る限り、この神々の黄昏、アスガルドサーバーにおいてトップクラスの実力を持っていると言える。

俺自身も過去、武器や防具の製作、果ては装備の強化の依頼で何度も助けられている。

しかも依頼料も良心的ときたもんだ、正直、俺がエド(彼の愛称、というかそう呼んでくれと懇願された)に出会えたのは幸運であり、同時に不幸でもあると言えた。

取り敢えず、返信内容に必要な鉱石の種類を教えてくれ、在庫で持ってるかもしれない。と書いて送っておく。


最後のメールのプレイヤー名を見ればエリナと書かれている、俺の又従妹だ。

はて、送られた時刻を見ればおよそ2時間前、つまり現実じゃ1時間程前に一度ログインしたってことになる、態々ゲームでメールを送るなんてどうしたのだろうか? 

内容を読んで見れば、用事ができたから現実時間で1時間ほど、ゲームで2時間ほど遅れると書かれている、ふむ、又従妹、名前を新城恵理奈しんじょうえりなと言うんだけど、エリナが俺との約束で遅れるなんて珍しい。

俺の知る限りでは、ここ1年程一度も待ち合わせで遅刻したことがなかったと記憶しているんだが……



まぁ、遅れるとはいえ2時間後には来ると書かれているんだ、問題はないだろう。

問題があるとすれば、エリナがくるまでの2時間、何をしていようか? て事である。

取り敢えず、エリナが来るまでに装備の確認がてらステータスの確認はしておいた方がいいかもしれない。

仮想スクリーンを出現させると、ステータスと書かれた部分をタッチする。



キャラクター名:ジン

種族:ヒューマン

レベル:87

ジョブ:代行者

ジョブの効果:STR VIT DEX AGI WIL INT LUCK において25%の上昇補正が加わる。また、成長値に一定に値が加算される。下級~古代までの聖・火属性魔法が習得可能となる。回復呪文の習得が可能となる。全てのスキル・魔法の消費コストが減少する。

属性:神格位

効果:自分が受ける全てのダメージに対して-10%の下方修正が入る。また状態、リジェネが常に付与される(10秒毎に1%のHPが自動回復される)。

称号:神殺し

効果:魔神・神性・神格位に対して15%のダメージ上昇補正+受けるダメージ10%減少。

成長値:STR(8) VIT(7) DEX(6) AGI(8) WIL(7) INT(7) LUCK(5)

ステータス

HP:9180

SP:3926

MP:5068

STR(648+65) VIT(565+50) DEX(482+45) AGI(668+80) WIL(526+45) INT(526+45) LUCK(462)


装備

武器:神剣・ヘリオトロープ+5(LUCK以外の基本ステータス+35。クリティカル+10% HP+800)

盾:プリトウェン+3(魔法によるダメージを-20%軽減 クリティカル耐性+15%)

鎧:聖鎧アレフストレイン+3(物理・魔法によるダメージ-10%減少。状態異常抵抗率+50% クリティカル耐性+10%)

足:エルヴンブーツ+3(AGI+30 移動速度+10% 回避率+5%)

アクセサリー


1アストライアの指輪(状態異常抵抗率+30%。魔法で与えるダメージが10%上昇。HP・SP・MP+500)

2精霊の腕輪(火・風・土・水属性から受けるダメージ-15%。WIL+10 INT+10)

3闘神のアンクレット(HP+1000。STR+30 VIT+15 命中率+8%)

4韋駄天の指輪(AGI+15 DEX+10 移動速度+5% 回避率+5%)

5魔神招聘石のネックレス(闇属性から受けるダメージ-20%。MP550を消費して魔神フールフールを召還できる)


因みに今装備している装備が、俺の最強装備だと言える。

神格位ってのは、神によって加護を受けた状態だとでも思ってくれれば分かりやすいかもしれない。

一ヶ月に一度発生する神々の黄昏って言うワールドクエスト(サーバー全てのプレイヤーが同時参加できるクエスト)で、上位3名が成る権利を貰える。


一度神格位になると、神々の黄昏自体は受けることができるが、ランク外扱いとなるので注意が必要だ。

神殺しってのは、単独での戦闘で神性を持つボスを倒したときに得られる称号だ、神性や魔神は属性に対する防御が高いから、非常に有用だったりする。


装備に関しては神剣・ヘリオトロープと闘神のアンクレット、それに魔神招聘石のネックレスがワールドで一点のみの装備で、後はレアドロップや製作による物だ。

ヘリオトロープと魔神招聘石は、とあるワールドクエストの景品で、闘神のアンクレットはゲーム内時間で3ヶ月に一度行われる大会での優勝賞品である。

因みに小さな大会とかは毎週行われていて、中規模なら一ヶ月に一度、賞品も毎回違う物が用意されている。

3ヶ月に一度開かれるワールド大会のみは、一度優勝すると二度と出れなくなるんだけどね? 


さて、と。ステータスの確認も終えたし、取り合えず露店めぐりでもしてようかな。

俺は広場に備え付けられたベンチから立ち上がると、周囲を歩いているプレイヤーにぶつからないよう、雑多な様子を見せる露店群へと足を向けた。



後書きぽいもの



如何でしたでしょうか?少しでもお楽しみいただければ幸いです。

ご指摘、アドバイスに関しては随時募集中ですが、何分作者は未熟者です、指摘されても理解できない場合が御座います、ご指摘内容は分かりやすく、どこがダメでどうした方がいいのか、それを明記して頂けると嬉しく思います。


評価は勿論、感想を貰えるとやる気に繋がるので送って下さると嬉しいです!

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