21話 双子との冒険譚 中編
もう一方の連載に注力しているので、更新は遅いですがご勘弁をw
エルトワーズで一端別れたジン達は、各自速やかにダンジョン攻略の為の準備を済ませると、あの巨大な正門のある転移陣で集合。
その後、件の地下迷宮に行った事がないジンの代わりにリリエがルーラを使用。
僅か一分程で目的地に到着する。
「此処が二人が言っていた“大地下迷宮”?」
「はい、そうです」
「なんか、見た目だけ見るとショボイな……」
「まぁ、それがなかなか見つからなかった理由でもありますからね」
と、苦笑気味にリリエが答える。
しかし、ジンがそう言ったのも然も有りなん。大地下迷宮なんて仰々しい名前がついているから、どんな場所だとジンが期待すればそこは森の中にある小さな洞穴であった。
近くには綺麗な小川が流れ、ピクニックするのにいいかも知れないと、密かにジンは考える。
「んじゃ、早速攻略開始と行きますかねッ!」
「はいッ!!」
「ぉ~」
約一名気の抜けた返事ではあったが、ジンは気持ちを戦闘方面に切り替えると、リリエが30階層に設定した転移陣に足を伸ばす。
瞬間、ヴォォンという独特の起動音を響かせて3人の姿が掻き消えた――――――
――――――ジンが襲い掛かってきたミノタウロスの頭を、レッドランスの一振りで斬り飛ばす。
その周囲で五月蝿く、ぶんぶん言わせて飛んでいるキラービーをリリエの焼却呪文が焼き払った。
一通り周りから魔物の気配が消えると、リリエがなにやら輝きに満ちた瞳をジンに向ける。
「やっぱりジンさんはお強いですね! 私やルルエなんて、スキルに頼らないと満足に戦えないのに、ジンさんさっきから殆どスキル使ってませんよね?」
「ん? ああ、只単にこの階層程度の相手なら、弱点を狙えば十分レッドランスで刈り取れるだけだよ」
ジンは嘘を言っていない。現在3人が居る階層は36層、敵のレベルもジンにすれば赤子も同然で、新調した武器の攻撃力も相まってスキル等必要としないのだ。
それに、スキルは強力ではあるが、強制的に隙が出来たりするため、あまり多用はしない方がいいのである。
それから三人はジンがオールラウンダー、ルルエが前衛兼盾として、リリエがアタッカーとして、二人が挑戦した時とは比べようもないほどの速さで階層を突き進んでいく。
そして、彼女たちが脱落した38層を越え、39層も突破し、40層に入った瞬間、空気が変わった。
38層あたりからも、魔物のタイプが少し変わっていたが、40層の雰囲気はまるで違う。
「これは……やっぱ、このダンジョンには何かあると見てよさそうだな。空気が重圧を持って圧し掛かりやがる。高レベル帯の魔物独特の空気だ、二人とも気を引き締めろ! 多分、此処からが本番だッ」
ジンの気迫に場の空気の異常に酔っていた二人がハッと我を取り戻す。
既にその目は戦闘状態だ、これなら大丈夫だろうと、ジンは今の掛け声に惹かれてやって来た魔物に槍を構えた。
「て、おいおい!? こいつって確か70レベルの中ボスだよな? なんでんなのが居るんだ?」
「……わからない、けど。やるしか、ない」
「ジンさんが居るんです! 大丈夫ですよ」
何故中ボスクラスの敵がノーマルにポップしているのか分からないが、期待してくれている二人の思いには応えてやらないとな、とジンは気構えを新たにし、先手必勝と言わんばかりに相手に突っ込んでいく。
距離にしておよそ50メートル、その距離を一瞬で詰め、目にも留まらぬ速さで片手に持ち替えたレッドランスを突き出す。
が、相手も伊達に中ボスにランクされていない。その六本の腕の内の2本の腕の剣で受け止める。
ジンは無理せずに槍を引き戻すと、相手の間合いの外側に距離を取ると、足を逆八の字に構え、槍を握っている
両手から力を抜く。
同時、追いついたルルエがジンの隣に並び、リリエが数歩後ろに控える。
幸い40層から迷路のようになっており、通路の幅は精々が2~3メートルである、頭上を飛び越える等の芸当でもなければ、リリエに被害は行かないだろうとルルエとジンは判断。
「俺とルルエがここで応戦する。ルルエは基本守備を、リリエは状況に合わせて魔法を、俺は攻守両方で行く」
「「了解!!」」
「オォォオオォオオオ」
骨と皮しかない骸の化け物、スケルトンロードが怨嗟の叫び声をあげて前衛の二人に襲い掛かってきた!
6本の腕から次々と放たれる猛攻をジンの槍が弾き、捌ききれないものをルルエの盾が弾く。
後ろでリリエの詠唱が開始されたのジンは確認し、守備から攻めにも転じてる。
振り下ろされる武器を瞬時に見極め、高速で打ち落とし、次の攻撃までの間に素早く槍を振るう。
力では互角ながら、速さという点で言うならジンが圧倒的に上である。ただし、相手には6本の腕があり、足りない速度をその連携で補ってくる厄介な敵ではあるのだが。
「全ては一瞬にして灰燼と帰す。“ダムボルトッ!!”」
ジンとルルエが距離を取った瞬間、スクエルトンロードの上空からいきなり空間が裂かれ、そこから数条の雷が降り注ぐ。
頭上のライフバーを一気に3割近く減少させ、雷属性の追加効果、感電によってその動きが鈍る。
ジンがその隙にその場で槍を勢いよく回転させた瞬間、槍が何十にもぶれた。
ルルエが一体なにを? と疑問に思った時、スケルトンロードの6本の内の3本の腕が宙に舞っていた。
「ォォォオォォオオッ!!」
エドワードの所で体得した擬似スキルは、高熱の斬撃となってスケルトンロードの腕を斬り飛ばしたのだ。
今の一撃で頭上のライフがあっという間に0になり、その身を一瞬で光子に変換し、宙に溶けていく。
一瞬後には三人の所持道具にドロップ品が振り分けられ、戦闘は終了した。
「え? え? い、今のなんですかッ!?」
先ほどの動きがスキルによるものでないと気づいたのか、リリエだけじゃなくルルエまで興味津々にジンを覗き込んでくる。
ジンはどうしたもんかと、困った顔を見せるが、結局エドワードの場所で試した一連の動作を二人に話してやることにした。
「……わたしには、無理。重装備だし、はやさがたりない」
「でも、凄いですよぉ! 擬似的にとはいえ、スキル級の威力を硬直なしで放てるなんて!!」
二人の眩しいばかりの賞賛の眼差しにジンは気恥ずかしくなり、危ないと分かっていながらも二人をおいて先に進んでいく。
「あっ、待って下さいよぉー!」
「ん、まって!」
そのジンの後ろから走って着いてくる二人。
と、独断先行していたジンの姿が急に立ち止まる。
それに文句を言おうとした二人だが、前方を見て瞬時にフォーメーションを組む。
それを確認したジンが一言、
「たく、一体どうなってるんだ? ここは中ボスの巣窟かっての」
そう、三人の前方。曲がり角から此方に丁度向かってくる、全長数メートルに達するライオンの頭に様々な生き物の一部で出来た肉体、四足で這いずる姿は獰猛な獣そのもの。
口端からは酸性の涎がだらだらと獲物を前にこれでもか、と垂れ流しとなり、その目は狂気に染まっている。
物理属性であり、72レベルのとあるダンジョンの中ボスである“キマイラ”の姿であった。
「たく、お喋りも碌に出来やしないな! 作戦はさっきのでいくぞ」
ジンの台詞に二人は黙って頷き、ルルエとジンが前に駆け出していく。
ジンがいち早く間合いに入った瞬間、キマイラの口からポイズンブレスが放たれるが、ジンは勢いよく跳躍するとこれを回避する。
ポイズンブレスに晒された地面がぐずぐずと溶け出し、即席の毒の沼地となる。
厄介なスキルだと、ジンは舌打ちをし、横合いから槍を振るう。
強靭な毛皮に覆われている筈の四肢を容易く切り裂き、動きを鈍らせるのと同時、振りかぶった前爪をバックステップで回避する。
そこに、詠唱を完了したリリエの特大の火球が打ち込まれ、キマイラの体を炎上させる。
そこに追い討ちにルルエがダンジョンに入る際、ジンから貸し出されたヘリオトロープを袈裟懸けに振るう。
脇の辺りからパッと鮮血が飛び散り、返り血がルルエに当たる。
その顔が苦痛に歪むの見、ジンはキマイラの血が猛毒であるのを思い出す。
「リリエ、ルルエに解毒を!」
「は、はいッ!」
数歩下がったルルエの時間稼ぎにジンが一歩前に出る、既に炎も消え、傷も再生させたキマイラが悠々と待ち構えていた。
キマイラは特に優れた攻撃があるわけじゃない。その代わり、驚異的な回復能力を有しているのだ。
折角与えたダメージも、現在進行形でジリジリと回復している。
ジンは槍を中段に構えると、目にも留まらぬ速さで動き出す。迷宮の壁を地力強く蹴り上げ、一切高く頭上に飛びあったジンは、槍をぶんぶんと回し、その遠心力が最大まで高まった瞬間、ジンが重力に従って落下を開始する。
キマイラがジンに気づくが遅い。ジンは瞬く間にキマイラの元にまるで流星のように落下すると、接触の瞬間溜めた力をキマイラの首筋に全力で放つ!
スキル一刀両断の効果で刃のリーチは伸び、一瞬の抵抗後、その首をあっさり切り落とす。
しかし、まだ倒れない。首を落とした位じゃ死なない。
そこに解毒の完了後に詠唱を開始していたリリエが特大の呪文を放つ。
「終焉に帰せ、メギドフレイム!!」
同時、ルルエの聖騎士の奥義である、“グランドクルス”が放たれた。
黒色の炎がキマイラを包み込み、聖属性の高エネルギー斬撃が二度ルルエの手から放たれる、それは直撃時に十字を描き、中心地点で爆発的なエネルギーを生む。
黒と白の吹き荒れる嵐が過ぎると、キマイラは跡形も無く吹き飛んでいた。
「ふぅ、流石に連続となると確定だな。多分、40層からは理由は分からないが、中ボス級の敵が通常にエンカウントする」
「……(こくこく)」
「あうぅ……お二人と違って前衛じゃないので、疲れましたよぉ」
それにジンは苦笑すると、暫く休憩しようと言い、自身の扱える聖属性の魔法から気配遮断と防音、対魔物障壁の結界をそれぞれに張る。
「ほえぇ~。流石ですね、接近スキルだけじゃなくて、魔法も使えるなんて。まさにオールランダー、一家に一人ジンを!ですね」
なんて煽てて来るリリエに苦笑を返し、ジンは短い休息に体を休ませる。
結界の効力は1時間。その間に体力は兎も角、二人の精神的疲労を回復させときたかったジンである。
(絶対クリアしたいところだな。ここまでされちゃあ、奥に何かありますって言ってるようなものだ)
二人が漸く静かになり、迷宮の壁に背を預けたの確認したジンは、自身も暫しの休息に目を閉じた。
あとがきぽいもの
2作同時連載の大変さを身をもって体験している作者ですw
3作とか、4作同時連載している人の身がしれません……どんなマジックやらw
今回読み返しの気力がなかったので、誤字多いかもしれません。
見かけたら報告して下さると助かります。