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20話 双子との冒険譚 前編

新作の連載で少しペースが遅いですが、見捨てないでいただけると作者が幸せになりますw

エドワードと別れた後、ジンは街の外に出るとすぐにルーラの魔法でジンと、その知り合い達が待ち合わせなどに使うグランスバールにある喫茶店、エルトワーズに向かっていた。

 およそ10分後、なんとか二人を待たせなくてよさそうだと考え、ジンは雑多な人ごみを押しのけてエルトワーズに入った。



 ―――――――チリンチリン


 「いらっしゃいませー! お一人様でしょうか?」

 「いや、待ち合わせなんだが。リリエ・シフォンカート、もしくはルルエ・シフォンカートの名前で席が空いてないだろうか?」



 軽やかなベルの音と共におそらく、プレイヤーであろう少女が(ここの喫茶店で暫くバイトすると貰える称号がある)元気な声で尋ねて来たので、ジンは双子が来ていないか確認してもらうことした。

 店員は暫くお待ち下さい、と一言発すると、カウンターの奥に引っ込んでしまった。

 暫くの後、先ほどの店員がカウンターの奥から戻ってくる。



 「お待たせしました。ジン様でいらっしゃいますか?」

 「ああ、そのとおりだ」

 「畏まりました。それではお客様どうぞ此方へ」



 どうやら二人は既に到着しているらしく、俺が後で来ることを店員にあらかじめ伝えといてくれたようだ。

 ジンは先行する店員の後について行く。やがて奥のテーブルから見知った顔ぶれが見えてくる。

 席まで来ると、店員は「それではごゆっくり」と言って戻っていった。



 「待たせたか? 出来るだけ早く来たつもりなんだが……」

 「あっ! ジンさん。いいえ、さっき私達も来たばかりですから」



 そう言ってリリエが両手をぶんぶん前でふり、それからにっこりと、向日葵のような笑みを浮かべた。

 一方姉のルルエの方はというと、テーブルの上にぐったりと上半身を預け、顔だけをこちらに向けている。閉ざした口は何か言いたげなのだが、一向に言葉を発しそうにはない。

 まぁ“何時もの事か”と、ジンはそれに構わず二人とは反対の席に座った。



 因みに、二人は容姿のみなら瓜二つである。

 では何故ジンがあっさり二人を見分けられたのか? それは彼女達の服装と、髪型、それに態度から判別したからだ。

 妹であるリリエは古代魔道師(エンシェントウィザード)で、その服装もフード尽きの黒のローブ、武器も今は横に立て掛けてあるが、身の丈ほどもあるヤドリギの長杖だ。性格も明るく、礼儀正しい気立ての良い娘である。

 一方ルルエはというと、三次前衛職である聖騎士(パラディン)で、装備しているのも白を基調に、青や金色の装飾が施されたプレートアーマー。

 武器も聖銀(ミスリル)を用いた片手剣に、大きめのカイトシールドである。性格に関しては妹と反対で、面倒くさがりなうえずぼらだ。

 何時も出会う度にぐてぇとしているし、口を開けば「めんどくさい」が口癖である。


 「あれ? ジンさんの武器って確か、片手剣でしたよね? 確か、大会の優勝商品だった」


 リリエが目聡く横に立て掛けたレッドランスに気づき、ジンに尋ねてくる。


 「ん? ああ、これか? 実はエドワードに頼んでた代物でな。ファンタズムウェポンの制作図が偶然前に手に入ったんだ、んでその制作を依頼していたんだが、今日ついに完成したわけだ」


 その台詞を聞いて、最初何を言ってるのか理解できなかったのか、リリエが首を傾げていたのだが、ファンタズムウェポンという言葉に思い至ったのか、驚愕した顔で槍を見つめてきた。


 「すごい……私も、ファンタズムウェポンは……初めて見た」


 テーブルに突っ伏したままで、ルルエが羨望の眼差しと共に呟く。


 「でも、ファンタズムウェポンて現在見つかっている限りじゃ、装備レベル50が最高ですよね? 幾らなんでもヘリオトロープより優れているとは思えないのですけど……」

 

 最もな意見である。いくらファンタズムウェポンといえど、75レベルまでに装備できる片手剣なら、ヘリオトロープがまず最強であろう。

 台詞と共にサイドテールの結ばれたリリエの金髪が揺れる。疑問符と一緒に首を傾げるのはリリエの癖だ。

 

 「いや、俺が見つけた制作図は既存のやつじゃなくてな、一応レベル85のなんだ」


 この言葉を聞いた二人は口をあんぐりと開けて、ポカーンとしてしまう。

 レベル85のファンタズムウェポン。その意味を理解したからだ。唯でさえ50でも十分最高レベルの装備と言えるのに、それが85である。

 少しこのゲームに詳しいものなら、その異常に頭を抱え込んでしまうことであろう。


 (まぁ、普通はそういう反応するよな。偶然ドロップしたとはいえ、倒した敵のレベルだって90のレイドボスだし……)


「まぁ、この話はもういいだろ? 取り敢えずこの後何をするか、それを決めよう」


 ジンの話題転換に漸く可愛らしい顔を著しく損なう、少々間抜け面を晒していたリリエとルルエは再起動したらしく、可愛らしく空咳を一つすると話に乗ってくる。


 「うーん……実は今日、先週新たに見つかった、地下迷宮型のダンジョンに二人で挑戦していたんですけど、これが予想以上の難所で。敵のレベルも入り口付近は30程度だったのに、階層を潜る度に上がっていって、私達が結局退却することにした38階層で、60~65付近の見たことのない魔物まで出始めたんですよ……」

 「あんな…変わったダンジョン……初めて…見る。トラップも嫌らしいのがいっぱい」


 リリエが悔しげに歯噛みしながら話してくれて内容に、ルルエがぶっきらぼうながら珍しく、同じく悔しそうな顔で追加情報を伝えてくる。


 (確かに、多重層型の迷宮はそんなに多くないしな。精々が10階層程度、知っているの中で最も深いのでも30層。それが38階層まであるってことは、50階、最悪100階層まであると見た方がいいか?)


 リリエとルルエのレベルは同じで、二人とも今日1レベル上がったらしく、72である。

 各職業のランキング上位にも名を連ねる二人が、いくら回復特化要員が居なかったとはいえ、65付近程度に苦戦するのは珍しい。

 しかも、聖騎士(パラディン)は祈りというディレイは10分と長いが、効果時間3分という自動回復3(オートリジェネ)を自身に付与できるスキルがある筈、それでもなのだから相当だとジンは考える。



 更にジンは考える、現実時間のことを考えるとあまり夜更かしはできないのだが、と。

 特に二人の年齢は17と、まだ学校に通っている年齢である。学業に差し支えてはジンの良心が耐えられまい。

 だが、と。二人がここでそんな話を持ち出してくると言うことは、何かあるんじゃないだろうか?と勘繰る。

 

 「二人の話を聞く限り、その迷宮、えー「地下大迷宮です、名前」その地下大迷宮に再挑戦したいってことでいいのか?」

 「はい。私達二人じゃ40階層以降は多分無理ですし、フレンドやギルドの方に頼もうにも、皆さん私達よりも低レベルですから……しかも、この迷宮ちょっと変わったシステムが採用されていて、あまり挑戦者がいないんですよ。それが一週間も発見から経ってるのに、有名にならない理由でもあるんですが……」

 「―――――迷宮内で死亡(デッド)したら……経験値の50パーセントをうしなう……あと、10階層ごとじゃないとかえれない……」

  

 ルルエの追加情報に思わずジンが唸る。

 (おいおい……そりゃまた随分凶悪だなぁ……。通常の10倍のデスペナかよ)


 ジンは考える。確かに二人に協力してやりたいが、ジンのレベルで経験値の50%を失うこと、それはこの二人のレベルを1ずつ上昇させても余り有る量である。

 幸いファーフナーのお陰か、レベルダウンの心配はないがそれでも尻込みしてしまうには十分だろう。


 「あっ、勿論厳しいと判断したら10層毎のテレポートで帰還しても構いません。それに、その10層毎には一度いけば次からはそこから開始できるんです。私達なら30層から開始できるってことですね」


 ジンの表情から何か察したのか、リリエが慌てて重要な事項を告げる。

 ジンは考える、30層からのスタートなら時間の問題は大丈夫そうだ、と。


 (それに、なんだか匂うんだよな……異常なまでに深いダンジョンなうえ、デスペナもキツイと来ている。公式で発表されていないということは、AIの方が作成したものなのだろうが、何かあると思ってよさそうだ)

 

 それがクエスト関連なのか、はたまたそれが、異次元の帝王(デスターク)のような強力なボスなのか、あるいはレア度の高いアイテムが眠っているのか分からないが、どちらにせよ面白そうだ、とジンは密かに笑う。

 因みにデスタークというのは、某竜の依頼に出てくる魔物の名前で、Sランクギルドクエストに登場するボスモンスターである。


 「OK、そこまで必死になられちゃ断れないいって。デスペナはちょっと怖いが、見たことの無いモンスターてのも、奥に何があるのかってのも気になるしな」

 「「――――ッ!? ……ありがとう/有難う御座います!」」


 流石双子である。ジンが承諾の意を伝えるや否や、それぞれ台詞こそ違うものの、全く同じタイミングで同じ速さでお礼の言葉を伝えて来る。


 「礼にはまだ早いさ。その台詞はクリアまで取っておけって、な?」


 ジンはちょっとしたポリシーとして、未開のダンジョン等に初見で行く時には、“クリア”するというのを信条としている。絶対の掟とうわけではないし、過去何度かはクリア出来ないで帰還もしている。

 しかし、それでも決意というのはそれだけで、あるのとないのとじゃ違うものである。


 「よし。んじゃ、各自出発の準備が完了したら転移門の前に集合な。時間もそう多くない、30分で合流しよう」

 「はい! 分かりました」

 「りょーかい」

 

 エルトワーズの店員に料金を払い(ジンが紳士に出した。これは重要である)

 各自準備の為に一時的に解散する。


 ジンも自身が用意できる最高のアイテムを取り出すために、グランスバールのアイテム保管所に向かって行った。

 

後書きぽいもの


双子の詳しい容姿に関しては、もう少ししたらキャラ紹介に載せようと思います。


それでは感想、評価、お気に入り、誤字脱字報告、お待ちしております。

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