天真爛漫ツンデレスク水宇宙人ガオぷぅは恋を知らない
「宇宙船が直るまで、お前の家に住むのだ。」
「いやいやいや!」
しろとは思わず立ち上がる。
「なんでそうなる!」
ガオぷぅはきょとんと首を傾げた。
「だめなのだ?」
「だめっていうか……普通はそうならないだろ。」
ガオぷぅは少しだけ目を伏せる。
「でも……帰る場所、ないのだ。」
その一言で、部屋が静かになった。
しろとは小さく息を吐く。
「……本当に?」
「本当なのだ。」
しょんぼりと垂れたトラ耳を見ていると、嘘をついているようには見えなかった。
「……分かった。」
ガオぷぅが顔を上げる。
「宇宙船が直るまでだからな。」
ぱぁっと笑顔が咲いた。
「ほんとなのだ!?」
「ああ。」
「やったのだーー!」
勢いよく抱きつかれ、しろとは慌てて受け止める。
「うわっ!」
「ありがとうなのだ!」
「だから近いって!」
ガオぷぅは満面の笑みを浮かべた。
その笑顔を見たしろとは、思わず苦笑する。
(……明日また考えよう。今日はまあ、いいや。)
◇
夜。
「ふぁぁ……。」
ガオぷぅが大きなあくびをする。
「眠くなってきたのだ。」
「じゃあ布団用意するから。」
しろとが押し入れを開ける。
予備の布団を抱えて振り返ると――
「あれ?」
ガオぷぅの姿がない。
「……どこ行った?」
部屋を見回した次の瞬間。
「ここで寝る。」
いつの間にか、しろとのベッドへ潜り込んでいた。
「……そこで寝るの?」
「ここで寝る。」
「俺のベッドだけど。」
「知ってる。」
当たり前のように答えると、ガオぷぅは布団をめくり、ぽんぽんと隣を叩いた。
「しろとも寝るのだ。」
「いやいや、布団あるから。」
「いらない。」
「なんで。」
「ここが落ち着く。」
言うが早いか、ガオぷぅはしろとの腕へぎゅっと抱きついた。
やわらかな感触に、しろとの肩がびくっと震える。
「お、おい!」
「……あったかい。」
満足そうに頬をすり寄せるガオぷぅ。
本人に照れた様子はまったくない。
「俺のこと抱き枕だと思ってる?」
「思ってる。」
「やっぱり思ってた……。」
しろとは苦笑しながら肩の力を抜いた。
ガオぷぅは安心しきった表情で目を閉じる。
「おやすみなのだ。」
「……おやすみ。」
返事をした頃には、もう小さな寝息が聞こえていた。
「寝るの早いな。」
しろとは天井を見上げ、小さく笑う。
「……なんでこんなことになったんだ。」
けれど、不思議と嫌な気はしなかった。
こうして、人間と宇宙人の、少し騒がしくて、少し不思議な同棲生活が始まった。




