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イヤです  作者: 倉名依都
1/18

異世界へのご招待

お話は完成しています。

読み直しながら投稿し、5日ほどで投稿し終わると思います。全68,000字ほどです


高坂真由こうさかまゆは、疲れ切っていた。コンビニでお弁当を買ってくる力もなく、靴を脱いだだけでベッドの脇のコタツに這うようにたどり着くと足を入れベッドにもたれかかり、体が温まるのを感じていた。

「ああ、寒いな、今日は本当に寒い」


「高坂さん、高坂真由さん」

誰かが呼びかけていたが、真由はもう声を出す力がなかった。なんとか目を薄く開くと、そこにはキラキラに輝く人(?)がいた。

ああ、お迎えにきてくださった?私、死ぬんですね。

「ええ、このままだと」

ああ、ありがたいです、楽になれます。


考えるだけで通じているようだ。


「真由さん、私の星に来ませんか?

あなたは本来あと60年以上生きるはず、その命を私の星で全うしませんか?」

いえ、いいです。もういいです。このまま死なせてください。

「異世界ですよ?剣と魔法、皆さん憧れの中世風街並み、ダンジョン、冒険者、ギルド。貴族や王子さま王女さまがいる、あの異世界です」

はあ。

「どうです?異世界渡りの特典で、全言語理解、鑑定、無限収納、ステータスボードにマップ機能も付けますよ?」

はあ~

「さあ、いきましょう?」


転移したらお城の地下で、聖女さまと呼ばれて魔王を倒しに行く。

「いえいえ、そんな」

勇者は王子で、魔王を倒して帰ってきたら難癖付けられて処刑される。王子さまは侯爵令嬢とハッピーエンド?

「いえいえ、まさか」

流行病で死んだ公爵家の姫君の体に魂が入っちゃう。姫は第二王子の婚約者。王子妃教育の挙句に学園の卒業式記念パーティーで婚約破棄。冤罪を被せられて断罪されているのに、誰も味方してくれない。

「なんですか、まさかそんな?」

神さま、ちょっと目が逃げてませんか?


神殿に聖女認定されて、死ぬまで国境線に結界を張らされる。

「まさか~、そんな~」

どうも聖女の線はないみたいですけど、どうですかねぇ。

「真由さん、真由さん、そんなこと絶対ありませんから。なんだか最近異世界転移、評判悪いですね~、何かあったのかな?

あのね、うちの星、ちょっと魂古めなんですよ、ね、だから、ちょ~っと転移して、新鮮な魂でいい影響をね?うち、定期的にやってるし、ね?

それだけだから。信じて。神の言うことだし」


中世、王様、騎士、と来れば馬ですよね。

道路はパベ舗装で、ガッタンガッタン。馬車はスプリングがないから地獄の揺れで、歩くほうが楽。

市街地には馬の落とし物、馬車に乗る貴族は当然のように馬糞を掃除しない。踏まないように歩いていても、馬車が横を走ると髪の毛の中までナマ馬糞直撃。

「え?まあ、たしかに馬糞は~。この国では自動車とか電車とかですよね~。

で、でも、空気はすっごくきれいですよ?排気ガスとか全然ないですし」


「小さめの町とか、王都から離れた村とかどうです?」

水は井戸まで汲みに行く、台所はかまど、トイレは水洗じゃない、お風呂はかまどで沸かしたお湯を運んでタライ浴、デスヨネ。

このマンション見てくださいよ。狭いですけどね? トイレ、お風呂、台所。

宅配便とお食事配送で、外出できなくても電話一本で必要品が手に入るんです。

中世の王侯貴族なんてメじゃないんですよ。世界史上もっとも清潔で便利な生活なんです。女中さんもメイドさんもいなくても、女一人で仕事して暮らしていけるんです、わかりますよね?


今さら中世なんて。イヤです。

このまま死なせて。

「ま、ま、真由さん~」


「ああ~、時間がない、こんな極上物件を~」

極上物件?私ですか?

「いやいや、今のは聞き流して?単に天寿を60年以上残した魂だってことですから。


え~っと、こういうのどうです。

森の入り口辺りにウッドハウスを用意します。ライト、ウォーター、ファイア、ウインドにアイス、サンダーなど、基礎的な魔法を全部使えるようにセットします。ウッドハウスを好きなようにコーディネイトして住みやすくするっていう楽しみもありますよ。

森の小道を辿って少し行くと、小さな村もありますし」


お食事は?買い物に行くのにお金か交換品を用意しないといけない?しかもスパイスとかコーヒー、お米、海苔、お醤油なんかは手に入らないですよね。マズイ異世界食で60年とか…。

死なせてください。


「わかりました。それでは大放出サービスです。もうこれ以上はありませんよ」

いや、だからもういいです。死にます。

「これを聞いたら行きたくなりますって。

庭に、何でも実る木をつけさせてもらいます。木にイメージを込めながら魔力を注ぐと、何でも実ります。え~っと、この辺にカタログがありましたよね」


異世界の神さま、それ、えぐられるので、お願い、触れないで~

「あ、ごめんなさい、従兄で同級生で元カレの結婚式の引き出物でしたよね」

あ、今、私死にましたから~。メンタルゼロです~、またどこかでお会いしましょう~~


「いやいや、真由さん、あと3分ありますから、ね、気を取り直して。

こういう、カタログとかでイメージを作って、魔力を注げばどんなものでも実る木ですよ?

このカタログ、この中から1個しか選べないんでしょ?そんなケチ臭いことは言いません、どーんとこい、欲しいもの全部手に入ります」

あ、それちょっといいかも。お祝い金3万円で、カタログ1万円だったもん。恋人10年期間の慰謝料にもなんないもん。

結婚相手社長の娘なんだよ~、もう死ぬ、このまま死なせて~、今どきありえない~、あのクソ男~、死んで恨んで呪ってやるかも~、いや、それほど手間かける価値もないか~、もういい、死のう、3分も待てない~~


「こ、こ、この部屋にあるカタログ、全部お持たせしますから。家具でも高級システムキッチンでも、もうゲットし放題」

う~ん、ウッドハウスに、アイランドキッチン、白木のセミダブルベッド、超高級カウチベッド…全部手に入りますか~

「そうです!

ブランド食器、各種オーダーウエア、イニシャル入り宝飾品、超高級化粧品、社長の娘なんかじゃ手も足も出ないバッキンガム宮殿以上の上質ライフです。外洋ヨット、サラブレッド、自家用ジェット、どうです?予算とかないですよ、ゲットし放題!

ね、行きたくなったでしょ、さ、手を出して」

いや、馬乗れないし、ヨットもジェットも運転できません~


ちょ、ちょっと、神さま、そんな近寄らないで。男性苦手になってんですよ。

「いや、私、別に男性じゃないから」

そうなんですね、神さまですもんね。

「はい、さあ行きましょう」


え~っと、最後に確認ですけど、森には魔獣とかそういうのいるんですよね。

「はい、神獣、聖獣、魔獣、野獣、選り取り見取りです」

あの、私戦えません。

「そのことなら、魔法は全種使えますから。結界張ってください、大丈夫です」

ええ~、自分でやるんですか~


「簡単ですよ、1,2の3で、ホイホイです」

本当ですね、行ったらすぐに1,2の3でホイホイって呪文となえますよ。結界できなかったら刃物を実らせてその場で頸動脈切って死にますからね~~

「大丈夫、だいじょうぶ、さ、手を出して」

ええ~~、なんか目が逃げてます~~

「時間ないから、もう秒単位だから~」

MPは2000以上でお願いします~~


こうして真由は体を地球に残し、魂だけ異世界の神が護る星へ転移させられてしまった。

つーか、真由、ちょっと要求しすぎなのでは? ま、いいけど?


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