【93】 帝国の物価
帝国・レッドムーンまでの距離はまだある。
セイフの街を直ぐ出て、広大な草原を歩き森を抜け……霊峰【ベルク山】を越えねばならない。だから、まだまだ歩かねばならない。
緑が生い茂る草原をひたすら歩き続け、森の前で休憩とした。
「はい、あ~んです。カイト様」
「あ~ん……ほぐっ……んむんむ、うまいっ」
ルナの作ってくれた弁当を食べさせて貰っていた。俺から要求したわけじゃないのに、ルナがどうしても言うので断れなかったのだ。幸せ過ぎる~。
それから食事を終え、俺は席を立った。
手を鳴らし、座っているみんなを注目させた。
「みんな、聞いてくれ」
「はいっ」「えー…」「Zzz……」
正座で背筋を伸ばすルナは、微笑んで頷いた。素直でよろしい。
ソレイユは面倒そうに胡坐をかいていた。スカートが短いから危ないし、はしたない。でも、むちむちのフトトモはグッジョブだ。
ミーティアは寝ていた。横になって瞼を閉じ、気持ちよさそうに寝息を立てていた。って、おいコラ。寝るな! 寝顔は超絶に可愛いけどな。
「いいか、みんな。ワンダからの提供資金『3億セル』があるけど、実はこれでも足りないんだ。帝国の立地は無条件で良いからな。店を借りるだけで一瞬で吹き飛ぶだろう」
「そうね、カイトの言う通り。帝国の物価って無駄に高いのよね。あと税金やら何やら。貴族が民から搾取しまくってるからね~」
そうケラケラ笑うソレイユ。最後がちょっとかなり危険な発言だが! きっと彼女なりのブラックジョークに違いない。そう思っておこう。ていうか、お前も貴族だろうがっ。
まあ、しかし……『帝国主義』だからな。ないとは言い切れない部分もある。実際、ある貴族が民から金品を巻き上げているという黒い噂を聞く。――だがもう昔の話。今は変わっているかもしれない。
「あの、3億セルでも足りないんですか?」
「良い質問だ、ルナ。うん、足りない」
俺がそう断言すると、カッと開眼し、ギョっとするミーティア。
「え……それでは、イルミネイト復活は!?」
やっと起きたか。
「そこでだ。到着したら、まずは『エクサニウム』を売却する。ワンダに予め錬成してもらっておいた。ほら、以前にシャロウが占領するダンジョン『シュタイン』へ行ったろ。あれで『10個』も出来たんだよ。しかも手数料もなし。ワンダは良いヤツだよ」
「はい、ワンダは話せば分かる子です」
実はルナが説得してくれたんだけどな。
いざという時、ルナは俺やみんなの為に動いてくれる。やっぱり、救いの手はルナが差し伸べてくれるんだよな。あの時と同じように――。




