【31】 用心棒
「以降、胸の話をしたら憎しみを込めて蹴るわ」
「どこを!?」
「あんたの股間とか」
「ひぃ~~~~~~……恐ろしすぎる。分かった。やめておく」
「じゃあ、お金貸してよ」
「それが人から金を借りる態度かよ。んん?」
一応、腕を組んで悩んでいると、ルナがやって来た。
「あら、ソレイユ。いらしていたのですね」
「おいっす、ルナ♪ 元気そうね。このヘッポコカイトと仲良くやっているのね」
「ええ、毎日が楽しいですよ。ソレイユもウチで働いてみてはどうですか」
「……! それよ! 超名案!」
なんだか、ソレイユは極悪人のような顔をした。よからぬ事を思いついたみたいだな。……頼むから、店を売り飛ばすような真似だけは止めて欲しいが。てか、誰がヘッポコだ。
「ねぇ、カイト……お願いがあるんだけど~」
傍に来るなりスカートを摘まむ、ソレイユ。まさか、俺を誘惑!? おいおい、せめて、胸を――おっといかん。これは禁句だったな。殺される。
「なんだ、言ってみろ。言うだけならタダだ。だが、タダより怖いモノもないぞ」
「あたしを用心棒として雇ってよ。ほら、この前の大男とかのトラブルあったじゃん。あんた達も店も守ってあげる。だからお願いっ」
ソレイユは、手を合わせて懇願してくる。
へぇ、こいつの爪綺麗だなぁ……って、そりゃいいや。
「すまん、ソレイユ。用心棒なら、ウチはもう『ミーティア』がいるしな」
「ミーティア? あ、もしかして、そこにいるエルフの魔法使いちゃん?」
「そ、あれ。ウチの魔法使い」
「くっ、遅かったか……でもさ、もう一人くらい良いじゃない。ほ~ら」
ほらとフトモモを見せつけてくる。
……正直、たまりません。よし、そのムッチリしたフトモモに免じて、採用。……しようとしたのだが、ルナの悲しむような視線に気づいた。
やべ、なんか俺の良心が痛む……!
「…………スマン、ヤッパ、ナシ」
「えええ!? どーして! うう、普通の男は、あたしの自慢のフトモモでイチコロなのに……悔しいわね。もう本当悔しい!! あたし、勝手に用心棒やるから!」
ぷんすか怒ったソレイユは、店の奥へと消えた。
「えぇ……」




