1-1 奪われた故郷
テレビの臨時ニュースが、緊張感を帯びつつも淡々と町の名前を読み上げていた。
「移住促進区域、○○県○○郡○○町。続いて——」
その中に「秋山町」が含まれていると知ったとき、胸の奥に冷たいものが広がった。まだ何も起きていない。家は立ち、道は続き、海も山もいつも通りのはずなのに、目に見えない場所からきしむ音が聞こえたような気がした。
あの日のことは今でもはっきり覚えている。二十年前の六月、町全体がざわついた。
当時中学生だった僕は、テレビで見ていたわけではない。授業の合間の休み時間、友達がスマートフォンを突き出してきたのが最初だった。
「なあ、秋山が……」
その短い一言で、ざわめいていた教室が一瞬で静まり返った。何かを察したクラスのみんなはそれぞれスマートフォンを手に取り、画面を食い入るように見つめ始めた。先生が入ってきても誰も視線を上げない。他のクラスも同じだったらしい。学校全体が落ち着きを失い、授業など形だけになっていった。今にして思えば、町の住人だった先生たちも内心では不安だったことだろう。
「移住促進区域」には約三年の猶予期間が設けられていた。反対運動も起きた。横断幕が掲げられ、集会の写真が地方紙の紙面を賑わせた。だが結果は変わらない。時間は無常に先へ進み、人々は各々の事情を抱えて家を引き払い、荷物をまとめ、ばらばらに町を去っていった。
——「地域再生促進法」は、あっけなく僕たちの町の未来を奪っていった。
あれから二十年。
僕の故郷、旧秋山町は「居住制限区域」として人の住むことのできない土地になっている。
けれど今、風向きが変わりつつある。数年後にはその指定が外れ、再び人が暮らせる町へと戻ろうとしている。




