第3話 仮説と検証
「……今から生存競争を始めてもらいます。あ、拒否権はありません。死にたくないなら、隣の奴を蹴落としてください」
樟田の声が消えた後、部屋には不気味なほどの静寂が訪れた。
「……は?」
樟田は説明を続ける
「といっても皆さんはまだ強いわけではない。ですので神との決戦まであと5ヶ月、その内の3ヶ月を使って皆さんを強くします。もう1ヶ月でデスゲーム、残りの1ヶ月は神との決戦前の準備期間ということで。明日からよろしくお願いします」
そう言ってアナウンスは終わった。
─────翌日─────
zizizizizizizi、zizizizizizizi
アラームが鳴った、本来ならこのタイミングで起きるはずだが、そんなことはなく俺は一睡もできやしなかった。
復讐はしたい、ただ人殺しになりたくて来たわけでもない。この二つの感情が邪魔して、気づいたら朝になっていた。
周りを見てみると橘と雷門は顔面蒼白、気が強いであろう赤羽ですら精神的負担を隠せてはいなかった。
この雰囲気だと、今日のメニューで絶対ガタがくる。このままではこいつらは速攻で死んでしまう。他の奴は兎も角、今のこいつらは味方だ。あいつは敵とか言っていたが、敵ではなく味方を作ることで寝るときの警戒は解きたい。
「おはよーさん、飯作るわ。雷文、皿用意してくれ」
「あ、あぁ」
そうして朝食を作り終え、食卓を囲む。
せめて周りには少しだけでも元気になってほしい、たとえ殺し合うことになっても。
「はいよ!一之瀬大和くん特製カレー!」
「「「…………」」」
威勢よく皿を並べたが、返ってきたのは重苦しい沈黙だった。
誰もスプーンを手に取ろうとしない。そりゃそうだ、殺し合いを宣告された翌日にカレーを笑って食える奴なんていない。
「……ねぇ」
「ん?どしたよ」
重い雰囲気の中、赤羽が声を上げた。
「あんた……料理出来たのね」
「赤羽は俺の事なんだと思ってるだ!?」
そうしてみんなが食べ始めた。ちなみに美味かったのか橘はおかわりしていた、いい事いい事。
そうして食べ終わった頃、樟田のアナウンスは始まった。
「皆さん、おはようございます。今日はまず一人一人の能力の限界値についてやっていきます。広場までお越しください」
そんなことを言われたって動けるわけない。しかし言うことを聞かなければ罰がある。いきなりデスゲームを始める男の罰……。誰もそんなものは受けたくないため、動こうと腰を上げようとしたが、まだアナウンスは終わっていなかった。
「それと、未だ能力不明の一之瀬くんは研究室に来てくれ」
━━━━━研究室━━━━━
ガチャ、研究室に行くと樟田が待っていた。
「やぁ、ご苦労さま。隈ができているが、何かあったかな」
わざとらしくそう言ってくる、何故か樟田は、
どこか楽しそうにしている。
「……どういうことっすか、樟田さん。何がだ、そんなことになんか意味あるんすか」
「それは今知ることじゃない、まぁ全て終わったらわかるさ。安心してほしい」
昨日までは樟田さんの言葉は誰よりも正しいとすら思えたのに、今では喋っていること全てが嘘に思える。
樟田に何を言っても無駄だとわかったため、話題を変える。
「んで、これから何するんす─────」
そう聞こうとした瞬間、大和は崩れ落ちた。
「なん……だっ……これっ!」
本当にいきなり、体全体に重りが乗ったような感覚と急激な眠気に襲われた。それと同時に背中から何か刺されたような痛みを感じる。
「へぇ、それ結構強めらしいけど。さすが実験体」
心底嬉しそうにこちらを見ている。
自分に何をしたか、実験体とは何の話か、そう聞こうとした時にはもう限界を迎えて─────
─────赤羽視点─────
一之瀬が呼び出されてから4時間、昼時になっても未だ帰ってくる気配はない。
隣にいた橘も同じことを思っていたようで、一之瀬の件について話を振られた。
「……赤羽さん。一之瀬くん、大丈夫かな」
確かに心配する気持ちはわかる。あんな宣言してきたやつに呼び出されるんだ。ろくなことはないだろう。
「心配だけど、まず自分のことよ。生き残れるのはおそらく1人……他人の心配なんてしている場合じゃない」
それに赤羽自身は心配というより、一之瀬という心が強く、他者を考えれる人間が樟田に大人しく従うようには思えない。一之瀬が何をしでかすか、あいつの『得体の知れなさ』が、この地獄をどう壊すか見てみたい。
「楽しみにしてるわよ、一之瀬」
誰にも聞こえないように、呟く。
─────研究室─────
ガチリ。金属が擦れる音で目が覚めた。
手首と足首、首までが強固な器具で固定されている。
「……あ? んだ、これ」
薄暗い研究室。目の前の台座に、3つの布に包まれた何かが置いてあった。その隣には樟田がいた。
「おはよう、8時間は寝てたね。そろそろ夕飯の時間かな」
そんなに寝てたのか、てかなんで寝て─────
8時間前のことを思い出し、飛び掛かりたい衝動に駆られ動こうとしたが、器具によって動けない。
(こいつも俺を縛るのか―――っ!)
そういった経験は親に嫌というほどされてきた。
「慌てるな、ちょっと僕の話に付き合ってよ」
諭すように言ってくる、誰のせいだと思ってる。
そんな俺の思いを無視して、樟田は語る。
「最近、生気について仮説を立てたんだ。バトルアニメとかでさ、死ぬほど辛い経験を経て力が覚醒・暴走するみたいなのあるだろ?それがもしできるなら、理論上はオーラを無限増やせるということだ。だから、検証してみようと思う」
樟田がその布を、ゆっくりと剥ぎ取る。
─────嫌な予感がした、というより確信していた。この男がすることだから、というのもある。しかしそんな予測の範囲の話じゃない、匂いだ。さっきから訳の分からん匂いのせいであいつの言葉が右から左だ。鉄の匂いというか、血?訳が分からない。
しかし思っていたほどのものではなかった。
「君には生肉を食べてもらうよ。軽いストレスから始めよう」
手足を拘束されているため、あーんしてもらう形になっている。
食べた感想としては、少し身体が楽になった気がする。
ここから何をされるか、身構えていると
「今日はこれで終わり、帰っていいよ」
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登場人物の髪型とか改めて色々
・一之瀬大和
→身長168cm、15歳、髪と目は灰色。
・樟田
→身長176cm、29歳、髪と目は緑色。ボサボサヘアー
・赤羽優
→身長157cm、15歳、髪は黒、目は暗めの赤。髪型はロングで腰くらいまである。
・橘琴佳
→身長154cm、14歳、髪は水色、目は藍色。
大和いわく、「他とは違う目」だそう髪型はボブ。
・雷門武
→身長181cm、17歳、髪と目はオレンジ色、髪型はショート。




