迷走
絶望・・・・・。
深夜3時の人気のない公園の暗闇がユウを支配する。
この時間だと街中より、逆にシャッターの閉まった駅の近くの方が人がいない。静かな人工的に作られた自然の中でただ1人。
ユウは外灯の届かない暗いベンチに腰掛け、缶ビールを飲みながら始発をまった。
ホームレス対策だろうか、ベンチは真ん中のところに仕切りがついており、横になることはできなかった。
ユウはこの二ヶ月間、遊ぶことを忘れ遮二無二働いてきたが結局何にもならなかった。
気がつけばまたスタートライン。
振り出しに戻る。
何度同じようなことを繰り返しただろうか?
住む家もなければ、明日の予定もない。
あまっているのは時間だけ。
暇を一緒につぶしてくれる友人もいなければ、励ましてくれる恋人も、説教してくれる家族もいない。
暗闇の中の孤独。
ユウはビールを片手に始発までの間しばしそんな孤独な自分に酔いしれる。そして考える。
これからどうするのかと。
だが、今のユウには以前と違う点が一つだけあった。それは僅かだが若干のお金が手元にあるということ。約15万円。アパートは借りられないが、そのお金があれば当分食べることには困らない。しかしいくら節約をしようが生活をしていけばあっという間。
すぐに無一文になってしまう。
とにかくこのお金を増やさなければならない。それが急務。すぐにユウがやらなければならないこと。
しかし、どうやってこのお金を増やすことができるだろうか?
ギャンブル?宝くじ?
いや駄目だ。当たるわけがない……。
ろくな考えがユウの頭には浮かんでこない。
缶ビールを飲みため息をつく。
「こんなことになるとはなぁ。」
ユウは1人呟いた。
暗い公園で一人孤独と絶望の中にいる自分に酔っていた。
一時間ほど公園やコンビにでグダグダしていたら、空も次第に明るくなり駅のシャッターが開いた。
始発の時間だ。
ユウは缶ビールを飲んだためか、はたまた精神的なものからなのか、ホームの端に立って冷たい鉄の線路を見つめる。まだ自分に酔っているのだ。
そんなことをしていると、突然、何かちょっとしたことで本当に吸い込まれてしまいそうで、物凄く怖くなった。
静かなホームに機械的に電車が滑り込み、ユウも機械的にそれに乗る。
乗ってから気がついたことだが、こんなに朝早いというのに、結構な人が乗る。いつも乗りなれているはずの電車なのに、そんなことはあまり気にしたこともなかった。もっともいつもは仕事でくたくたになって、すぐ次の日の出勤になってしまうので回りを見る余裕がなかったからかもしれないが、明日はもう仕事に行かないユウにとって、いつものサウナに帰って無理に寝る必要もない今日は、やたらと他の乗客が目に付く。
乗客は様々だが、一人一人にこの電車に載る理由がある。遊びつかれて家に帰る学生風や、労務者風の人もいれば、これから市場に仕入れにでも行くような格好の人もいる。ユウは他の人たちからどのように見られているのだろうか?
やはり夜の仕事を終えて帰宅する、キャバクラのボーイに見られているのだろうか。
実際は帰る家も目的もないのに。
ユウはこのままどこか遠くまで、行ってしまいたい気分だった。
それで本当にそうした。
考えるばかりで、行動力のないユウにしては珍しい事だった。いつも降りるサウナがある駅を通り過ぎても、席を立たず終点まで乗っていった。
京浜東北線の終点大船に着いても、何故かもっと遠くに行きたかったので、東海道線に乗り換えて熱海方面に向かった。
やはり真面目に働くしかない。とにかく、嫌だけれども明日からまた仕事を探そう。
当面のお金はある。
このお金で、次の仕事が見つかるまで、何とか生き延びて今度はまともな仕事に就こう。
幸いこれだけあれば、節約すれば日払いがなくても、何とかやっていける。
今までのようにファストマネー重視で仕事を選ぶのではなく、安定したスローマネーで堅実な仕事に就こう。
そんなことを考えながらも、電車を途中下車してしばらく町を歩くとやることがないので、パチンコ屋に入ってしまい、あっという間に5万円近くも使ってしまった。
「俺は本当にどうしようもないクズだ。」
ユウは死にたくなった。




