番外編1 図書館デート
やっと友達から彼氏になった須賀くんと過ごす夏休み。
課外学習があっていた一週間は今までとそう変わらなかった。
変わった事は、下の名前で呼ばれる様になったこと。
帰りは家まで送ってくれること。
毎日寝る前にメールをしていること。
珠美には愛されてるね~ってからかわれる。
須賀くん曰わく、私の片思いに気づかなかった分、今いろいろしてくれてるらしい。
その後に続けられた言葉に顔が真っ赤になった。
「俺が少しでも麻夕と一緒にいたいし、そばに感じてたいんだ」
とは。
須賀くん、こんなに甘い人だったっけ?
一週間の課外が終わり、やっと本格的な夏休みが始まった。
私達は先に夏休みの宿題を済ませてしまおうと、近くの図書館に来た。
ここは本を読む人や私達みたいに勉強する人のためのコーナーが充実してるし、涼しくて静かだからはかどる。
机があるとこの一番奥の目立たないところに場所を取った。
隣は壁で一つの机は2人座れるだけで、前には仕切りがあるから集中できる。
2人で黙々と宿題をこなしていった。
分からないところは須賀くんに聞くとすぐ解決する。
この分じゃ思ったより早く終われそう。
数学の問題集の宿題範囲の半分くらいが終わりそうになった時、隣からの視線に気づいた。
「ん?どうしたの?」
「いや、集中してるな~と思って。俺が見てるの、全然気づかなかっただろ?」
「あ、うん。どのくらい見てた?」
ずっと見られてたなんて恥ずかしい。変な顔してなかったかな・・・。
「んー、10分くらい?」
「そんなに?もう、声掛けてくれたら良かったのに」
「いや、集中してるのに邪魔しちゃ悪いと思って。それに」
一旦言葉を切った須賀くんを見た。
その目は何だか潤んでいて、優しいというより、熱がこもったような感じで。
その目を見た私も、トクンと胸の奥が熱くなって、慌てて目を逸らそうとしたら、肩に手を置かれた。
予想外の事にビクッと肩が震える。
「麻夕の真剣な顔って、色っぽいよね。我慢、してたんだけどな」
ふっと笑って、顔が近づいて来た。
相変わらず、熱がこもった目で見つめられたら、体が固まって動けない。
鼻が触れそうな位置まで近づくと、綺麗な目が閉じていくのが見え、つられて私も目を閉じた。
これが何をするのか分からない訳はない。
私も、待ってたのかもしれない。
大好きな須賀くんと・・・。
唇が触れ合った。
冷房が効いて涼しいけど、触れたとこは温かかった。
触れただけの唇。
こんなに柔らかいものだなんて知らなかった。
こんなに心地よいものだなんて知らなかった。
そしてそれは離れていって、目を開けるとさっきまで触れ合っていたそれを見てしまった。
須賀くんとキス、しちゃった・・・。
お互い、なんか照れ臭くて顔が見れない。
「なんか・・・。照れるね」
「うん・・・」
「急にごめんな」
「ううん・・・」
「・・・ごめん、もう一回、いい?」
え?と思って顔を上げると、すぐにまた唇が重なった。
今度はさっきよりも力が入ってて、腕を引き寄せられて、反対側の手が背中に回った。
私も彼のシャツをぎゅっと掴んだ。
押し当てられた唇は、今度は何度か角度を変えて合わさった。
最後にチュッと少し音が聞こえて離れた。
はぁ、と聞こえた溜息にビクッとなり、掴んでいたシャツを離そうとしたら、私の手の上に彼の手が重なった。
「・・・途中で終わるの、しんどいな」
「え?」
「なんか・・、いろいろ我慢してる」
そういう須賀くんは困ったように笑ってみせた。
その笑顔さえきゅんとくる私は最早かなりの重症だと思う。
「須賀くん・・・」
俯いてしまった彼に声かけると、今の気持ちを伝えたいと思った。
「大好き」
私を見た彼は一瞬目を見開くと、参った、とくにゃりと顔を緩めて微笑んだ。
「麻夕にはかなわないな。俺も、大好きだよ」
須賀くんのその笑顔の方がかなわないのに。
私達はクスクス笑い合って、きりのいいとこまで宿題を終わらせた。
今はまだ私の方が好きで。
2人の思いの違いがあるだろうけど。
いつかは同じくらい好きになってくれたらいいな。




