4話 意外への1ページ
私は廊下に出て周りの景色を見ながら、おそるおそる歩いていた。
つきあたりに、木の手すりと埃っぽい階段があって小鹿のようにふるえながら下に下にと降りて行く。
誰もいなく、私の足音だけがただ響いていた。
一番下までくると正面に運動場があり、その先には体育館があった。
あそこで初めて聞いた名前と私の知らない人が待っているのかと思うと、心が余計に痩せて行った。
廊下の左右を見る。
右手には下駄箱があって、左手には職員室と保健室の文字が壁からつきでていた。
職員室、保健室ともに明かりがもれて四角く黄色っぽいものが5つほど並んでていた。
下駄箱に行ってももちろん、私の靴がどれか分かる訳がなかった。
どれも同じ靴だし、サイズだってあてにはならなかった。
出席番号と組が書かれた丸シールがぺたりとはってあるだけの、変哲もない下駄箱を見るたび「私はどうしてこんな所に来てしまったのだろう……。」と落ち込むのだった。
私は孤独さに負けて、心をついに暗くぬられてしまったのだった。
「あっきぃじゃん。眞鍋呼んでたぜーぃ?」
その時だった。
バスケットボールをひとつわきに挟んだ女が私の目の前に現れた。
白色の17番と書かれたユニフォームが汗でぬれて肌に密着して、赤と白のミニパイルバイザーには黄色やピンクなどの蛍光色のバッチをつけている。
茶髪を高い位置でまとめ、星のヘアピンまでつけていた。
彼女は私に「あっきぃの出席番号は23だったよね?」と聞いて人差し指で靴をおい探してくれた。
私の前にぽんとおいてくれると、背中を強くおされた。
「多分、中島が転校するからそのサプライズをしこむんじゃないかな?
あ……。言っちゃった。職員室で聞いただけだから、確信はしてないんだっ。
それじゃあ、私職員室行くからさっ。ばいばーいっ。」
「ささようならっ。」
私はぎょっとした。
見知らぬ彼女が私のあだ名を使い、敬語を使わずに話していた。
彼女は汗の臭いとともに軽々しく走って行ってしまった。
前におかれた靴をためらいながらもはき、校舎から出た。
私は体育館の外を周りをしばらくおそるおそる歩いていた。
窓があいていて、そこから聞こえる何かが激しくぶつかる音が耳に入ってくる。
知らない人達がいるんだろうな――。
思ってはいけないことを、私はただ考えていた。
黒色の制服を着た凛々しい背中があり、小さく「眞鍋君?」と聞くとすっと振り返ってくれた。
「おせーじゃん!!」
その振り返った顔には白粉がこれでもかとぬってあったのだった。
眞鍋君の白い顔、目には黒星がかかれていて、赤っ鼻がつけてあった。
「どわっ!!」
私は驚き、その場で尻もちをついた。
ずっこけたのだ。
「何だよっ。」
「なんでっ、なんでそんな姿なのよっ!? 莫迦じゃないのっ!」
「何! 俺なんかおかしいっ?」
「付き合いきれないわ。」
今までおびえていた姿が、私からどこかへ行ってしまったようだった。
私は頬ふくらませて立ち上がり、体育館と眞鍋君から離れた。
それでも、髪の毛は鶏冠、それもごっつくて、力士のような貫禄のある声の持ち主は、とことん泣き言をいい私を追いかけてきて、いい迷惑だったわ。
「あっきぃっ! ちょっと待てよ。
この中島送り出すぜの会、お前がいないと始まらねぇんだぜっ。
あっ。そうだ。一緒にオソロのコスメ買おう!」
「勝手にやってればー?」
「これっ! あっきぃの学生鞄、俺が持ってるんだぜ!?」
「何で貴方が持ってるのよ! 変態っ。」
私は学生鞄をうばいとり、そして、彼の顔を一発殴った。
私は風のように去って行ったけど、彼は顔は鼻をおさえて座り込んでいた。




