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あなたへ  作者: 臣 桜


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亡くなった妻からの手紙

 妻の洋子(ようこ)が亡くなった。


 交通事故との事だが、ドライバーが言うには『突然飛び出てきた』らしい。


 妻のお腹には、妊活に励んでやっと授かった赤ん坊がいた……はずだったが、どうやら彼女は妊娠していなかったと死後に知った。


 子供ができたなんて、嘘で言う事じゃない。


 けれど彼女は悪い冗談を言うタイプではないので、何かしらの思惑があったのだろうと思う事にした。


 洋子とは同じ会社に勤めていて、俺の一目惚れから始まり、告白して交際し、結婚に至った。


 妻は穏やかで優しい女性で、物静かな印象だが意外とガッツがあり、休日になると登山やボルダリングに精を出す、アクティブ派だった。


 俺はそこまで本格的なアウトドア派ではないが、キャンプやBBQは好きなので、彼女と一緒に出かけては自然を楽しんだ。


 もうそれもなくなるのだと思うと、心の奥にポッカリと穴が空いた気持ちになる。


 葬儀を開くため、両親の助言を借りてあちこち奔走した。


 洋子の両親はとうに他界していて、彼女にプロポーズした時は『こんな私を好きになってくれてありがとう』と涙を流していた。


 少し前に彼女はたった一人の弟も亡くし、『あなただけはいなくならないで』と、寂しげに言っていた。


 同僚で親友の紗栄子(さえこ)がいるじゃないかと言うと、彼女は『そうね』と寂しげに微笑んでいた。


 職場結婚をしたあと、妻は会社を辞めた。


 彼女が言うには、これまで自分のためにあまりお金を使わず、両親の遺産もあるし、しっかり貯金をしてきたので、子供が生まれたあとはしばらく育児に向き合いたいとの事だ。


 両親を喪った彼女だからこそ、余計に〝幸せな家庭〟というものへの憧れが強かったのかもしれない。





 葬儀が終わってしばらくしたあと、一人暮らしになってしまった自宅に一通の手紙が届いた。


 差出人は――、洋子。


「は……?」


 目を疑ったが、封筒の筆跡は間違いなく彼女のものだ。

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