1食目 腹ペコ聖女、グルメギルドへ行く!
0食目 前世 毒舌メイドの希望
飢えでベッドから起き上がれないほどに痩せてしまったメイドに、お嬢様であるグルメが語りかける。
「飢えてまで、私を生かして、何がしたかったの?」
薄々は気が付いていた、メイドが食べていない事に。それは食品が流通しなくなっているからだと。だがグルメには分からない。自分の分を分け与える理由が。
「腹ペコお嬢様が生きてさえいれば、この国は変わります。この国を救えるのは大聖女ではなく、腹ペコ聖女だけだと、確信しておりますから」
「わかった。国を救うのは無理だと思うけど、来世があれば毒ちゃんの空腹は私が救ってあげる」
感情があまり顔に出ないグルメ。たんたんと呟く。その言葉に、どれほどの熱量があるのか?
「約束ですよ?」
その熱意は毒舌メイドにしか分からない。
「うん。満腹にする」
「きっとですよ?」
「来世は、死んでも良いと思えるほどの幸腹にする」
「今世、飢え死にでも、来世満腹なら、悪くはありませんね……やはり、お嬢様は私の希望です」
その言葉を最期に前世のメイドは息を引き取った。
「グルメお嬢様、聖杯を見つめて、いかがしましたか?」
メイドは聖杯を見つめる、見習い聖女に問う。聖杯とは、見習い聖女と聖女に渡される器。
「どんな味がすると思う?毒ちゃん」
紫色より明るい、藤紫色の髪をポニーテールに束ねるメイド。あだ名は毒ちゃん。たった一人しか呼ばない。
「毒ちゃんは……」
毒ちゃん
(毒ちゃんはおやめ下さい。と言って、何年経つのでしょうか?)
「いい加減、胃袋で思考するのはやめた方がよろしいのでは?」
「でも、人々の喜びや感謝の感情が聖杯に溜まっていく。なんて言われたら、感謝って、美味しいの?って、なるよね?」
茶髪で小柄、天然で腹ペコ。見習い聖女のグルメ。
「なりません。人の感謝を食べようなんて発想をするから、《腹ペコ聖女》と揶揄されるのです」
冷静で毒舌。毒ちゃんがあだ名のメイド。
「この聖杯を一杯にすれば、美味しいグルメが食べ放題。で、いいんだよね?」
「グルメお嬢様の耳は、食パンで出来ているのですか?
確かに聖杯を満たせば国が願いを叶えるというシステムではありますが、これは大聖女選定の儀。食べ放題をかけた、腹ペコ選定の儀ではありません」
選定期間は一年。最も聖杯を多く所持した、見習い聖女・聖女を大聖女にするというもの。
大聖女になるために聖杯を使い、権力やお金と引き換え、より多くの聖杯を築く。それが本来のあり方。
「なら、グルメギルドに行ってみよう」
《グルメギルド》
ようこそ、グルメギルドへ。お決まりの挨拶が、定期的に聞こえる。
「グルメお嬢様。なぜ、グルメギルドに来たのでしょう?」
グルメ都市と呼ばれる様になった理由、それがグルメギルドの存在である。グルメギルドはこの国の仕事斡旋所として機能している。
今では他国へ浸透するまでになっている。グルメギルドと他国を繋いでいたのが、グルメ都市の大聖女。大聖女の選定は、グルメ都市の急務となっている。
「人の悩みの九割は食べ物で出来ている。って、聞いた事ない?」
聖杯を満たす為には感謝や喜びの感情が必要になる。悩みを解決すると感謝される。悩みを解決するには悩んでいる人を探す必要がある。
悩み=食べ物。食べ物=グルメギルドという思考に至ったらしい。
「グルメお嬢様だけです。常時、食べ物の事を考えていらっしゃるのは……脳内に食べ物しか詰まっていないのでは?」
「おかしい……こんなにグルメクエストが張り出されてるのに……まぁ、気を取り直して、味見してみる」
「味見ではなく、吟味して依頼を探してください。依頼書は食べ物ではありません!」
グルメクエストとは仕事の依頼書になる。食事や食べ物に関する依頼なら、どんな内容でも依頼ができる。
呆れているメイドの毒ちゃん。どちらが主人なのか、分からなくなりそう。
「この3つにする!」意気込んで毒ちゃんに依頼書を見せる。
「選んだ理由はなんでしょうか?」
「賞味期限が近いから」
グルメはなんで当たり前の事を聞くの?という、不思議そうな表情を浮かべる。
「グルメ依頼を賞味期限で選ぶのは、ハラペコの美学でしょうか?とはいえ、グルメお嬢様が一度決めた献立を変えないことは、誰よりも知っていますから……仕方ありませんね」
「仕方ない。賞味期限が近い食品を使わない手はない」
「間違っても、依頼書を食べないでくださいね?」
こうして、見習いの腹ペコ聖女は依頼を受け付けで処理してもらい、グルメクエストへ向かう。
《本日のおやつ》
「本日のおまけの間違えです、グルメお嬢様」
「本日紹介するグルメは《濃厚レトロプリン》クリームチーズ&練乳使用。ローソンで見つけたカスタードプリン。
ズッシリとした一口、濃厚で固めのカスタードプリン。セブンイレブンで食べた《ブラジルプリン》に似た食感。機会があったら食べてみて」
腹ペコ聖女より




