2食目 ハラペコ聖女、グルメ市場へ行く!
《グルメ市場》
「グルメお嬢様、グルメクエストに行くのでは?なぜグルメ市場に来ているのでしょう?」
「腹が減っては戦は出来ぬ。って事」
「グルメお嬢様は年中ハラペコではありませんか?お嬢様は対象外のことわざです」
悪びれる様子もなく、凛とした表情で告げる毒舌メイド。
「ここから……ここまで頂戴」
気にした様子もないグルメは目当ての品を見つけて、主食や野菜の種をカゴごと購入する。その量は菜園を始める人が買う量とは、文字通りの桁違い。
「ハラペコ聖女、大農園開業!っと、配信しますか?」
聖女選定中の活動の様子を配信する義務があるからである。聖女に相応しくない方法で感謝を集める等の防止や監視の為。
「大丈夫。使い切れ無かったら、私が責任とって食べるから!」
野菜の種がたくさん入ったカゴを両手で大事そうに抱えるグルメ。そのゆるい笑顔はグルメ聖女に映える。
「全てグルメお嬢様が食べない事を祈るしかありませんね。
聖女選定の儀で貰った支度金は一千万ペコ。全てお嬢様の食費代にあてるわけにはいきませんからね?」
グルメが選んだ種の代金を支払い、ランチバッグ(収納バッグ)に収納していく毒舌メイド。すでに三分の一を使い込んでしまった。
「異次元の腹ペコ政策?」
聖女・見習い聖女、全員に支給されるとなると、約一万人に一千万ずつ支払う、まさに異次元の政策。
「グルメお嬢様の脳内ではハラペコ警報発令中でしょうか?
各国の大聖女が集う、八大聖会議。その場所に、この国からは大聖女が参加出来ませんでした。大聖女不在を各国から責められていて……お嬢様?」
グルメは美味しそうな匂いに釣られて、メイドから離れてゆく。ふわふわのゆるい茶髪を持つ、グルメ聖女がふらふらと匂いの元に向かってゆく。
「グルメお嬢様、いい匂いがしても一人で行ってはいけません。また、グルメ迷子になりますよ?」
いい匂いがする屋台で足を止めたハラペコに告げる。
グルメ迷子の常連である。
屋台のおやじ
(はぁ……困ったらな、国で流行って競争が激しいから隣国でグルメバーガーを売ろうと思ったが、この国では見向きもされないなんて……うん?
この嬢ちゃん、バーガーを焼く匂いに釣られた口か?
一個くらい買ってくれるか?なんなら百でもいいぞ。そしたら、俺の懐ろの聖女様と呼んでもいいぞ)
「らっしゃい、嬢ちゃん。隣国の名物、グルメバーガー、ってんだ。一つと言わず、百でもいいぞ?なんてな」
「じゃあ、とりあえず千個」
冗談が通じていないどころか、冗談だと思われてもいない。しかし、少女からは冗談の様な数が告げられる。
「冗談うまいな、嬢ちゃん!」
「グルメお嬢様をハラペコ呼ばわりするならまだしも、嘘つき呼ばわりはいただけませんね。グルメお嬢様は、おかわりはしても嘘はつきません!」
グルメの注文した代金を、屋台の端に積み上げる。
毒舌メイドはグルメを罵倒する。しかし、嘘は付かない。暴言であってもだ。メイドはしないから、他者からされるのは許せないのだろうか?
「悪かった。だが、食べ切れるとも思えない。買ってはもらいたいが、食材を無駄にして欲しいわけじゃない。だから、とりあえず百でどうだ?」
ランチバッグの様に、収納バッグはある。だから千個入るバッグもあるかもしれない。しかし、それは転売を目的としている可能性すらある。
「わかった。他にも食べたいお客はたくさんいる。我慢する」
百食べ切れるか心配されているなか、グルメは美味しい食べ物の独占はよくないと、百で我慢するとハラペコな回答。
一個、また一個とグルメはモクモクとグルメバーガーを平らげる。お客用に用意してあったバーガーはの在庫は二十個程度。バーガーを焼く量を増やしていく。グルメが食べるスピードが早いからだ。
十、二十個のバーガーが焼かれると、屋台周辺には香ばしい香りが漂い始める。
グルメが二十個食べ終わる頃には十のバーガーが出来上がっていた。出来上がったそばから消えていくそれはワンコバーガーのよう。
「恐れいった!まさか本当に百個を平らげるとは!お腹下してないか?心配になるレベルだ!」
「お腹が……」
「やっぱり、食べ過ぎたか?」お腹をさするグルメ聖女の心配をする。
「お腹が……空いた」
「グルメお嬢様を空腹にさせるとは!計りましたね?」
「イヤ、イヤ、イヤ、そうはならんだろ!?」
「グルメお嬢様がハラペコなのをいいことに、謀ったと?」
「その食べっぷりに完敗したたけだ。どうだろう嬢ちゃん、この屋台の名前を決めちゃくれないか?それで許してくれ。な?」
「いかが致しますか?お嬢様?」
「食べれば食べるほど、お腹が空くお店、ハングリーバーガー!」
「ずいぶんとカロリーの高い、ハラペコネームですね?」
「次の屋台に行くよ?毒ちゃん!」
「あと九百個はどうするんだ?」
「グルメお嬢様のハラペコに感謝する事ですね?お嬢様が呼んだ客に振る舞うといいでしょう。次に食べに来るまでに、代金分は用意しておく事です」
百個のバーガーの焼ける匂いが客を呼び、グルメ聖女が食べる姿を毒舌メイドが配信したお陰で、客が客を呼んだ。グルメ聖女の後ろには、グルメバーガーを食べたいお客で列をなしていた。
「また来てくれよ、グルメ聖女様!」
店を後にするグルメ聖女に、嬢ちゃんではなく、聖女様と告げる。
それは配信中の映像を見て、聖女か聖女見習いである事を悟ったか?店の窮地を救ってくれた、グルメ好きに対する敬称か?どちらだったかはわからない。
《本日のおまけ》
『本日のおやつはシュークリーム。セブンイレブンで見つけた《紅茶に恋するシュークリーム》ミルクティーのクリームの中に、紅茶のゼリーが入った贅沢仕様。毒ちゃん、この商品は一日、百万個ぐらい製造される?』
『グルメお嬢様、専用の工場ではありません。クリームが注入された端から、口の中に入れるつもりではありませんよね?』
『おやつは一日、三百万個まで。って、前世で決まりがあった』
『グルメお嬢様の一日がおやつで終わりますが?』
『たまにはそういう日があっても良いと思う』
『毎日そんなんだから、天下一のハラペコ聖女と揶揄されるのです』




