2話
リアン兄上に抱っこされながら、僕らはいつもご飯を食べる部屋に着いた。
僕の席付近で下ろしてもらい、エマに椅子を引いてもらう。
みんな座ってる!…どうやら僕たちが最後だったみたい。
朝ごはんの時だけが僕たち家族、つまり王族が全員集まれる時間なんだ。
上手のお誕生日席にお父様、つまりこの国の王様が座っている。
お父様から見て、右に第一王妃のお隣に第二王妃、さらにその隣に第三王妃が座ってる。
それぞれの前には、第一王子と第三王子、第二王子と第四王子、そして僕!
各自、自分のお母様の前に座っている状態だ。
「皆揃ったな。では、頂こう。」
お父様の言葉で、朝ごはんが食べられる。
あ、僕の好きな鴨肉のスライスもある!嬉しい!
口の中いっぱいに鴨肉のスライスを詰め込んでいるとライリー兄上が話しかけてきた。
「お前、そんなに詰め込んで大丈夫かよ?詰まらすなよ?おい、チビに水を持ってきてやれ。」
ライリー兄上の執事さんが「かしこまりました。」とお辞儀をして、僕にお水を届けてくれた。
僕の2番目の兄上、ライリー兄上は、僕の八コ歳上の十八歳!
炎のような赤髪に、グリーンオニキスの瞳。
リアン兄上とはまた違ったワイルドイケメンで、気配りも出来るとてもお優しい兄上だ!
そして今回の新刊、『取り立て屋×神父』の取り立て屋のモデルにさせてもらってる。
……神父の受けを手篭めにした理由を以前、神父になる前の受けに施しを受けたので、
それのお礼を兼ねて助け出そうとしたけど、やり方を間違えて裏目に出た。――という感じにしよう!
頭の中と口の中が忙しい!
…口にものが入ってる時に喋ってはいけないから、飲み込んでからお礼を言う。
「ライリー兄上ありがとうございます!お水いただきます!」
ゴクゴクと水を飲んでいると、奥の方から控えめに鈴を転がすような笑い声が聞こえる。アイゼア兄様だ。
三番目の兄上、アイゼア兄様の見た目を一言で言うなら、ズバリ!『絵画の中の天使』!
リアン兄上より薄い金髪と、アクアマリンのタレ目!そして少し下がった眉が物凄い『庇護欲』を掻き立てる…!!
あっ、僕の五コ上の十五歳だよ!
口のものを飲み込んでアイゼア兄様に話しかける。
「?…アイゼア兄様、なにかおかしい事でもあったのですか?」
「フフ、ミオが口いっぱいに頬張ってる姿がリスのようで可愛らしくてね、ンフフ!」
…ひぇー天使より天使らしいアイゼア兄様が笑ってらっしゃるー!!
宮廷絵師ー!!!早く来てーー!こんな朝ごはんの1幕だけで終わらすにはもったいないが過ぎるーーー!!!
……取り立て屋×神父の次の話はアイゼア兄様がモデルの話だな…
チラリとエマを見る。
エマは小さく頷き、拳を握りしめる。
あとでエリとエナに共有しておくという合図だ。
「そんなに似てますか?」
頬をぷくっと膨らませてみる。ツボに入ったようで控えめにクスクスと笑うアイゼア兄様。
うーん、可憐!!
…アイゼア兄様がモデルのキャラのお相手は誰にしようか…
まずは、アイゼア兄様のモデルが受けか攻めかを考えなきゃ…
ぷくっと頬を膨らませたまま考えていると、
「アハハ!確かに庭の木にいるリスそっくりだな!」
この人懐っこい笑顔を浮かべるのは
四番目の兄上、ワイアット兄様だ。アイゼア兄様と同じ十五歳!
ワイアット兄様は朱色の髪に、ペリドットのような瞳を持ち、雰囲気から滲み出る『わんこ系弟』だ。
あと「祝福」と呼ばれる力で、動物達とお話ができるらしい。
庭の森で動物達と戯れるお姿は、あまりにもお姫様だったのを覚えている。
なんならそれで、ワイアット兄様受けを3冊書いた。もちろん、見た目とかは変えてるからね!
ケラケラと笑ってるワイアット兄様に、
「そんなにですか?僕、間近でリス見たことないんでみたいです!!見れますか?」
と聞いてみる。
……やんちゃ系木こり×森でリスと戯れてる天使とかいいかもしんない!!
僕のセリフを聞いたワイアット兄様が、
「お前リス見たことないのか!?いいぜ!俺が案内してやる!いつ行く?今日行くか?!昼行くか?!!」
隣に座ってるせいか、グイグイ来るワイアット兄様。
それに制止をかけるのはライリー兄上だ。
「こら、チビに迫るな、料理がこぼれるだろう。それから、今日だと俺らが行けないだろうが。」
ライリー兄上がそう言うと、リアン兄上とアイゼア兄様も頷いていた。
「…えっ兄貴たちも来るの…?」
――!!おおっと、ワイアット兄様!喜びと期待はずれを同時に食らったようなお顔!
さながら飼い主に今日は一日遊べるぞ、と構い出して貰った矢先、急務が出来てお留守番させられる子犬のごとく!!
まだライリー兄上×リアン兄上書けてないのに!!
次から次へと供給が来る!!忙しい!!!
「…?どうした、チビ?野菜が苦かったか?」
いけない、どうやら顔に出てたらしい。
流石に『尊いを食んでました。』なんて言えないので、適当に「そうです。」と誤魔化す。
そして、申し訳ないが僕にも予定というものがある。主に原稿。
「ごめんなさい、ワイアット兄様。今日は僕も予定があるので、空きが分かり次第、連絡しますね!」
と言うやいなや、シュンとしていたお顔がパァと輝く。
……うん、腹黒系上司天使(アイゼア兄様)×ワンコ系部下天使(ワイアット兄様)で決まりですわ。
僕もニコッと笑っとく。
楽しい朝食終え、僕は急いで原稿に取り掛かる。
…空いてる予定を確認したのは、三日後のことだった。