83:とりあえず様子見
「結局お前はキリク殿から何が聞きたかったんだ?」
キリクさんの家を後にしたニコとリュードは、中央広場の辺りまで戻ってきていた。全身黒づくめのリュードは逆に目立つので、通行人の行き交うメインストリートを外れて、わざわざ脇道を選んで歩く。
「うーん、まあだいたい確認したかったことは聞けたよ、一応」
「あれでか?」
まあ傍から見れば適当にあしらわれたようにしか見えなかっただろうが。
「キリクさんが誤魔化すってことは、僕が惜しいところを突いていたからだと思うんだよね。だから、遠回しには確認できたかな、ってところ」
「……そういうものか」
とにかく、ゲームの主人公が動き始めていること、キリクさんと主人公は恐らく繋がっていることは恐らく間違いない。本格的にゲーム本編がスタートしたと考えていいだろう。
(まあだからと言って、僕にすぐ何が出来るというわけでもないのだけどね)
何もしないよりは、何も知らないようにはいいだろう、というだけだ。上手く立ち回るためにも、情報収集は必要だ。
「お前がそこまで気にする、その旅芸人とは一体何者なんだ?」
「……うーん、まぁ、そんなに気にしないで。リュードの思うように接したらいいと思う」
イマイチ質問の答えになっていない返答をしながら、ニコは力なく笑った。リュードに主人公に気をつけろ、と言ったところで、現状では理解してもらうのも難しいだろう。しばらくは静観して、主人公の動きを見て動くよりほかない。




