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59:エンカウント、成功
(あっ……)
ヒョイっとゼルの背後から前方を覗き見ると、そこにはニコが今一番会いたかった人物が立っていた。
耳の位置できっちりと切りそろえられたアッシュの髪と、冴え冴えとした厳しい眼光の瞳。白色のローブにマントを纏った男。
ショーンクラウド王国の実質ナンバー2、エミール・ロッサムである。
「エミール!珍しいな、君がお付の者も連れずに。何事だい?」
ニコ以上に、ゼルが此度の邂逅を驚いているようだった。
二人は旧知の仲なのでゼルの口調は親しげだが、声をかけられたエミールは、一瞥したのみで、むしろその後ろのニコの方を見据えている。
鋭い視線に射抜かれて、ニコはビクリと肩を震わせた。先程の彼の制止の声は、どうやらニコに向けられたものだったらしい。ようやくエンカウント出来たと思ったら、対象に認知されていた、だと?一体なぜ?ニコが内心、首を捻っていると、
「この者には刺客の疑いがかかっている」
「刺客?」




